Adrian Newey, the Chief Technical Officer of Red Bull Racing looks on from the pitwall during qualifying ahead of the F1 Grand Prix of Saudi Arabia at the Jeddah Corniche Circuit on March 26, 2022.
© Mark Thompson/Getty Images/Red Bull Content Pool
アート&デザイン

【Red Bull Doodle Art】エイドリアン・ニューウェイが明かす “ラクガキとF1マシンの関係”

歴史に残るF1マシン群を生み出してきたオラクル・レッドブル・レーシング最高技術責任者が、紙とペンから始まる名車誕生までのプロセスを解説してくれた。
Written by Trish Medalen
読み終わるまで:7分Published on
大学で航空学と宇宙航空学を修めたあと、英国出身のエイドリアン・ニューウェイはすぐにF1にその才能を買われた。そしてそれからの40年で彼はF1コンストラクターズタイトルを11回手にすると同時に、F1屈指の才能たちがドライバーズタイトルを手にする助けになってきた。
モータースポーツシーンへの長年の貢献が評価されてOBE(大英帝国勲章)を受勲しているニューウェイは自分のアイディアを紙以外に落とし込むつもりがなく、F1のパドックでも赤いノートブックを手にしている姿がしばしば目撃されている。
紙とペンでのラクガキアートで世界への切符を手にした才能たちに光を当てるイベント【Red Bull Doodle Art World Final】のために行われた今回のインタビューの中で語られている、世界的に評価されている彼のクリエイティブなアプローチはフレッシュなインスピレーションを与えてくれる。また、彼はラクガキや絵を描くことについての具体的なアドバイスも送ってくれた。
トレードマークのノートブックを持つニューウェイ

トレードマークのノートブックを持つニューウェイ

© Getty Images / Red Bull Content Pool

− そもそもラクガキはしますか?

ラクガキをするために机に向かうことはないですが、ラクガキ、あるいはスケッチと色々な言い方がありますが、基本的に私は紙に描くことで頭の中のアイディアを形にしています。

− あなたは6歳のときにレーシングマシンのエンジニアになりたいと思ったそうですが、ノートにラクガキをするような生徒でしたか?

残念ながらそういう生徒でした。興味がない授業では特にそうでしたね。勉強における私の功績は、レーシングマシンのスケッチやラクガキばかりしていてフランス語の単位を落としたことです(笑)。

− 今でもデザインは紙にペンで書いて進めているのでしょうか?

私はF1業界の最後の恐竜のような存在で、今でもドローイングボードを使用していますが、これで私は育ったのです。母国語のようなものですね。私がCADシステムを使用したら第二言語のように感じるでしょう。自由に、そして楽に仕事を進められないと思います。

フランスGP優勝を祝うニューウェイ、マックス・フェルスタッペン、クリスチャン・ホーナー

フランスGP優勝を祝うニューウェイ、マックス・フェルスタッペン、クリスチャン・ホーナー

© Getty Images / Red Bull Content Pool

− 自分の仕事をどのように説明しますか? デザイナーなのでしょうか? それともエンジニアなのでしょうか?

私の仕事は両方のブレンドですね。デザインというのはとても広義な単語です。自動車業界、市販車の世界では、デザインは自動車のスタイリングを意味します。エンジニアリングではありません。彼らにとってのエンジニアリングは私たちレーシングカー業界におけるスタイリング、デザインエンジニアリングを指します。

ですので、私の肩書きを訊ねられたときはデザインエンジニアと答えます。エンジニアの領域にクリエイティビティを組み合わせる仕事です。

− 2023シーズンで使用されているRB19はとても美しいF1マシンですが、ルックスだけではないということですね。

アイディアを問わず、最終目標は “速く走らせること” です。私たちを司る究極の存在はストップウォッチなのです。おそらくこれが世の中に存在する他のデザイン作業と私たちを隔てているものでしょう。

オラクル・レッドブル・レーシングのRB19

オラクル・レッドブル・レーシングのRB19

© Getty Images/Red Bull Content Pool

− 作業プロセスを詳しく解説していただけますか? 色々と考えて、出てくるアイディアを確認していくのでしょうか?

私が好んでいる仕事の進め方は、まず解決したい具体的な問題を用意します。そして、頭の中で色々とその解決策を考えたあと、スケッチやラクガキを始めます。ここから先は鉛筆と消しゴムで描き足したり、直したりしていきます。実際に紙に描いてみると、フィットしない部分があったり、他のやり方が見つかったりするからです。

ですので、何回も繰り返し描きますね。消しゴムを手に持ちながらかなりの回数を描き直しながら先へ進んでいきます。

− そのあとは?

スケッチを数時間、数日、数週間放置しておきます。なぜなら、マインドというのは実に面白いものだからです。無意識下でも問題に取り組み続けていて、シャワーを浴びているときなどに突然アイディアが出てくるのです。そしてまた描き足します。手描きでの基本的なコンセプトやアイディアに満足できたら、ドローイングボードを持ち出して、正式なエンジニアリングドローイングを始めます。

− エンジニアリングドローイングを元にしてチームスタッフと話を進めていくのでしょうか?

はい。私は非常に優秀なエンジニアたちが集まった大きなチームのメンバーです。全員で仕事に取り組んでいます。私はチームの中で我が道を行くタイプなので、自分がフレッシュなアイディアや角度を持ち込めると思ったことに加わっていきます。加わったあとは先ほど話したプロセスで進めていきます。

さらなるリサーチが必要になるまで私が進めたあとは、チームメンバー2〜3人が私のエンジニアリングドローイングをCADシステムに取り込みます。

紙とペンでエンジニアリングドローイングを進めるニューウェイ

紙とペンでエンジニアリングドローイングを進めるニューウェイ

© Thomas Butler/Red Bull Content Pool

− 自分の描いたアイディアが現実になっていく様子を見守るのはどのような感覚ですか?

大きな満足感が得られますね。責任を持って取り組んでいるマシンのデザインやアイディアが最終的に形になっていくのはチーム全員にとって嬉しいことです。

− あなたは長年モータースポーツに関わってきましたが、今も革新的です。フレッシュなインスピレーションを得る秘訣は何でしょう?

好奇心を持って周囲を観察することです。常に目を開いて周りを見ることが重要ですね。空港で飛行機を眺めて「あれは面白い機能だな」と思い、それがアイディアに繋がるときがあれば、吊り橋を眺めていてアイディアが生まれるときもあります。ありとあらゆるものから着想するのです。好奇心を持つことですね。好奇心が観察に繋がります。

子供の頃からラクガキを楽しんできたニューウェイ

子供の頃からラクガキを楽しんできたニューウェイ

© Getty Images / Red Bull Content Pool

Quotation
常に目を開いて周りを見ることが重要です

− F1は移動が多いですが、空き時間にラクガキをしているのでしょうか? あるいはクリエイティブな趣味を楽しんでいるのでしょうか?

時間は常に問題ですが、私はごく稀に絵筆を握っています。絵を描くのはとても楽しいですね。私の母は素人ながら熱心なアーティストでしたし、祖母2人もそうでした。また、私のきょうだいはセミプロです。私の家系には明らかにアーティストの血が流れていますね。

− レーシングマシンのラクガキやデザインを上達させたいと思っている人に向けてアドバイスをお願いできますか?

先ほども話しましたが、最初のアドバイスは好奇心です。好奇心と観察ですね。F1マシンでも何でも良いのですが、既存の自動車を見て、「なぜこのようなデザインなのだろう? これはどのような機能があるのだろう?」と疑問を持ってみましょう。そして自分のアイディアやデザインを描いてみましょう。

当然ですが、ラクガキを描く紙は平面です。一方、自動車をはじめとする他のあらゆる対象は3次元です。ですので、2Dに落とし込む作業をしながら、3Dをイメージするようにしてください。通常、私はサイドビューやリアビューなど複数の視点を用意します。こうすることで、自分のアイディアが3Dで機能するかどうかが分かってくるのです。

− 他にもアドバイスはありますか?

スケッチのスキルを高める努力をしましょう。なぜなら、非常に重要だからです。何かのエキスパートになりたいなら1,000時間は注ぐ必要があると言われています。また、なるべく早くに始めるのが理想です。若い方は練習すればするほど上達できます。とはいえ、ラクガキやスケッチは、何歳からでも始められるのが魅力ですね。

日本代表も参加する【Red Bull Doodle Art World Final 2023】は5月25日から28日までオランダ・アムステルダムで開催予定。詳細はこちら>>

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