陸上競技
アルマンド・デュプランティスとは?:棒高跳世界記録保持者の圧倒的強さの秘密
世界記録の更新を続けるスウェーデン代表棒高跳び選手の圧倒的な強さの秘密に迫る。
棒高跳選手のアルマンド・デュプランティスはよく笑う。新たな歴史を作り出すジャンプの前にメンタルチェックリストを確認するかどうか質問されたときもそうだった。
「しないですね。競技中は脳が自動運転に切り替わります。その遙か前に努力は済んでいますし、ポールをボックスに入れた衝撃を感じたときに、ジャンプが成功するかどうか大体分かります」
デュプランティスのような成功の連続を体験しているワールドクラスアスリートはほとんどいない。2020年初頭以降、彼は世界記録を12回更新しており、その最新が2025年6月中旬にストックホルムで開催されたダイヤモンドリーグで記録した6.28mだ。
2015年からスウェーデン代表として活動しているこの天性のエンターテイナーは、これまでに世界選手権優勝3回、ダイヤモンドリーグシーズン優勝4回、6m以上のジャンプ70回を記録している。
言い方を変えると、2000年から2023年夏まで6m以上を飛んだ棒高跳選手は9名しかいない。また、さらに言えば、デュプランティスは2021年には東京で金メダルを獲得し、2024年にはパリで世界記録更新と連覇に成功している。このような彼がもうひとりの陸上競技の “神” 、ウサイン・ボルトと比較されるのは当然だ。
デュプランティスが優勝したMondo Classic 2025のハイライトをチェック!
26分
Pole vaulting highlights from Mondo Classic
The world’s best pole vaulters compete at Armand Duplantis’s signature event on his home turf in Sweden.
普通の子どもが自転車に乗り始める年齢で初めての世界記録を樹立
デュプランティスの今のキャリアは、米国ルイジアナ州ラファイエットで過ごした幼少時代から始まった。1996年オリンピック米国代表の補欠だった元棒高跳び選手の米国人の父と七種競技とバレーボールで活躍したスウェーデン人の母を持つデュプランティスは3歳から棒高跳びを始めると、7歳になるまでに複数の年齢別世界記録を樹立した。当時から彼は頭ひとつ抜き出ていたのだ。
棒高跳に必要な資質
棒高跳は陸上競技の中で特殊な部類に入る。デュプランティスは次のように説明する。「サーカスのような感じです。複数の競技をひとつにまとめたような競技ですね。短距離走のスピードと体操の運動神経、空間把握能力、そしてテクニカルな要求に応えられる能力が必要になります」
デュプランティスはそのすべてを高いレベルで揃えている上に、努力を惜しまず、競技だけに集中している。近年は選手生命を延ばすためにジャンプ練習は週1回に留めており、スピードとストレングスのトレーニングや運動神経や技術を高めるトレーニングにより多くの時間を割いている。
自分が保持する世界記録の更新に挑むときは大きなプレッシャーを感じるのかという質問に対してもデュプランティスは笑って回答する。「世界記録を更新する意識ではなく、自己ベストを更新する意識ですね。私は自己ベストを少しずつ繰り返し更新してきただけです。必要以上に物事を大きく捉えないようにしています」
このような考えを持っているデュプランティスの成功の多くは、生活におけるバランスの重視から来ている。
デュプランティスはハードにトレーニングを積み、正しい食事を摂り、競技に全力を注いでいるが、ひとつのことだけを考えているわけではない。「メンタルの話をすると、枠に入らずに自由な生活を送ることが必要です」と説明する彼は、ヒップホップとゴルフ、そしてガールフレンド、家族、友人との時間を楽しんでいる。
また、デュプランティスはレップ数をほとんど意識しておらず、食事もそこまで厳しく制限していない。しかし、このような彼の生活に騙されてはいけない。「競技中は競技中は自分の中でスイッチが入ります」とまた笑いながら彼は続ける。「別人になるんです」
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