A screenshot of downhill biking from Descenders
© RageSquid/No More Robots
ゲーム
MTBダウンヒル x ローグライク = 『Descenders』
高速のダウンヒルライド。ランダム生成のレーストラック。美しいトリック。無数のクラッシュ。最高のMTBビデオゲームがやってきた!
Written by Damien McFerran
読み終わるまで:10分Published on
何であれ、異なるジャンルを組み合わせる挑戦は非常にトリッキーだ。裏を返せば、だからこそ、世の中にジャンルが存在するのだ。しかし、世の中には相性が悪そうな複数のジャンルを組み合わせてこのトリッキーな挑戦を見事にクリアしているものもある。
そのひとつが、RageSquidが開発中の『Descenders』だ。このゲームは「MTBダウンヒル」と「ローグライク」を組み合わせている。
「僕たちは『Tony Hawk Pro Skater』、『SSX』、『SKATE』シリーズのようなエクストリームスポーツゲームが大好きなんだけど、最近はこの手のゲームがほとんど開発されていないことに気が付いたんだ」
RageSquidの共同設立者でリードコーダーを務めるRoel Ezendamはこう話を切り出す。
2013年にオランダで設立された小規模なデベロッパーRageSquidは、全員がまだ学生だった頃に、下請け会社としてビジネスをスタートさせたが、その後すぐに超高速ランニングプラットフォーマー『Action Henk』を開発し、このゲームが彼らの2作目となる『Descenders』の基礎となった。
「でも、僕たちは『FTL』や『Spelunky』のようなローグライクのゲームも好きだった。だから、これをエクストリームスポーツと組み合わせたらどうなるんだろうと考え始めたんだ。MTBダウンヒルにローグライクの自由度の高さとリスク、スリルを取り入れたゲームはどうだろうってね。それでプロトタイプを開発してみたんだけど、結果が上々だったからそのまま続けることにしたんだ」
我々は彼らが続けてくれたことに感謝しなければならない。
『Descenders』は現在売られているどのタイトルとも大きく異なっており、MTBダウンヒルライドのハイスピードスリルとランダム生成されるステージの予測不可能性を美しく組み合わせている。
「基本的なゲームプレイはローグライクタイトルに似ている。僕たちは『Descenders』のプレイを『FTL』や『Spelunky』のプレイにたとえることも多いんだ。なぜなら、様々な地形や環境をクリアしてゴールまで到達するか、クラッシュが多すぎて途中で体力がゼロになって死ぬかのどちらかだからさ」
「今作には4種類の大きなステージが用意されていて、それぞれの最後に "ボスジャンプ" が置かれている。これをクリアすれば次のステージに進めるんだ」
優秀なローグライクと同じく、『Descenders』もリスク&リワードのバランスが絶妙だ。しかし、このゲームに緊張感と興奮をもたらしているもうひとつの特徴として挙げられるのが優秀な物理演算だ。自分が操作するライダーが木やスロープをクリアするたびに、プレイヤーは体をこわばらせることになる。
「物理演算の調整は開発初期にかなり苦しんだ部分だね。『Descenders』のようなゲームは、ライディングのフィーリングが上手く捉えられているかが成否を分けることになる。だから、物理演算の調整だけに数ヶ月を費やしたよ。そのあとで他の部分の開発へ移行したんだ。操作性を損なわず、簡単に楽しめるように注意しながら、リアルに感じられるまで調整を重ねたよ」
素晴らしい物理演算の上に重ねられているのが、『Descenders』のスリルをネクストレベルに高めてくれるトリックシステムだ。森の中を縫うように走る細いダートトラックを上手くなぞりながらパーフェクトなトリックメイクをすれば、最高の満足感が得られる。
A screenshot from a jump in Descenders showing a bike doing a trick
Race you to the bottom!© RageSquid/No More Robots
しかし、同タイプの他のゲームがトリックメイクに複雑なボタン入力を用意しているのに対し、『Descenders』はエレガントな操作性を追求している。
「トリックメイクの部分で僕たちが意識したのは、ボタンの組み合わせではなくてアクションの組み合わせなんだ。アクションを自由に組み合わせることができれば、自分のスタイルが打ち出せる。スタイルを重視することで現実世界のエクストリームスポーツに近づけているんだ」
強烈なスピードと革新的なトリックシステムを組み合わせている『Descenders』はスリリングなゲーミングエクスペリエンスを実現しているが、近年話題の "自動生成" を取り入れたレーストラックがお粗末なら全てが台無しになってしまう。しかし、幸運なことにレーストラックこそが、このゲーム最大の魅力だ。
『Descenders』のレーストラックはプレイ毎に生成されるが、それぞれがユニークでディテールも細かく、毎回フレッシュなゲーミングエクスペリエンスが得られる。
「レーストラックの魅力を維持するために、レーストラックをどうデザインすべきなのかをアルゴリズムにしてプログラムしたんだ。だから、人間のデザイナーがレーストラックをデザインする際のあらゆる手順をコードに置き換えてプログラミングして、レーストラックが自動生成されるようにしてある。入力パラメータをほんの少し変えるだけで、大きく異なるレーストラックが作れるのが、このアプローチの素晴らしいところだね」
『Descenders』は最近の優秀なPCタイトルと同じで、Steamの早期アクセスでリリースされたあと、正規版がリリースされる。Ezendamはゲーム開発にはプレイヤーの意見が欠かせないと考えている。
「Steamの早期アクセスは絶対に必要なステップだ。自分たちで十分だと感じられるバージョン、中身が詰まっているバージョンをリリースしてからコミュニティの反応を確かめて、そのあとで彼らが望んでいる機能を加えていく」
「たとえば、マルチプレイヤーモードや観戦モード、ストリーミング対応、トーナメントモードなどはどれもあったら嬉しい機能だけど、十分な数のコミュニティメンバーが必要だと感じていなければ用意する意味はないと思っている。だから、僕たちはそれらを抜いたバージョンをリリースして、コミュニティと密に連絡を取り合いながら、彼らが何を求めているのかを確認しようとしているんだ」
RageSquidの『Descenders』が提供するスリルを楽しめるのはPCプレイヤーだけではない。このゲームは家庭用ゲーム機版もリリースされる。
「Xbox One版の開発を始めたところだよ。XboxにもSteamの早期アクセスと同じ役割を果たしているXbox Game Previewがあるからね。社内でXbox One版のベースを作った。いくつかの奇妙な問題があったけど、作業はスムーズに進んでいるね」
「ゲームエンジンにUnityを使っているのが大きい。このゲームエンジンは移植作業を簡略化してくれるからさ。移植作業そのものは、ロッテルダムのスタジオCodeglueに頼んでいる。Codeglueは僕たちの友人で、『Action Henk』のキャラクターデザインとアートワークも手伝ってくれたんだ。彼らとの仕事はとても楽しかった。彼らは自社タイトルを開発しながら移植の外注も受けているから、『Descenders』を移植することを決めたあと、すぐに連絡を入れたんだ」
移植版について話をする際に避けられないのが、Nintendo Switch版の可能性だ。
任天堂側はこのゲームの存在が明らかになった2017年の段階で、ニンテンドーeショップに加えることを快諾している。しかし、Nintendo SwitchがPS4とXbox Oneよりもパワーで劣っているという事実が、いくつかの問題をもたらしている。
「現時点で決まっているのは、Nintendo Switch版をリリースするってことだけだ。実作業についてはほとんど何も進んでいない。開発キットを使って試してみたんだけど大変だった。Nintendo Switchへの移植はかなりの大仕事になる」
「この『Descenders』の移植で一番のネックになるのが、Nintendo Switchのパワーだ。あとは、Nintendo Switch本体の活用方法についても考える必要があるね。何か面白い使い方をしたいなと思っているんだ」
「Nintendo Switchは『Descenders』をさらに面白くできるユニークな可能性を秘めているゲーム機だと思う。でも、まだ何も決まっていない。現時点ではXbox One版に集中している。そのあとはPS4版だね。Nintendo Switch版に取りかかるのはそのあとになるよ」
『Descenders』は、元tinyBuildのスタッフでゲームジャーナリストとしても活躍していたMike Roseが2017年に立ち上げたPR兼パブリッシャーNo More Robotsが担当する初作品という点も見逃せない。デベロッパーだけではできない部分をしっかりとカバーするパブリッシャーNo More Robotsは、彼らにとってパーフェクトなパートナーだ。
「Mikeは自分が担当するゲームに情熱を注いでくれる素晴らしい人物だよ。熱すぎて鬱陶しく思う時もあるくらいだ(笑)。前作『Action Henk』ではKitty Calisがマーケティングを担当してくれて、素晴らしい関係が築けたから、今作でも同じような関係を築きたいと思っていたんだ」
「僕たちは以前からMikeに注目していた。tinyBuildでの仕事ぶりをよく耳にしていたし、彼が今のゲーム業界のマーケティングについていかに良く理解しているのかは分かっていた。今のところは僕たちの期待に応えてくれているし、素晴らしい仕事をしてくれているよ」
Ezendamは、多くのプレイヤーがこのゲームに触れた瞬間にそのユニークなフィーリングに驚くだろうと考えている。
「今作『Descenders』のアクションと物理演算の奥深さに驚くと思うよ。最初の頃はただトリックメイクをしながらスロープをライディングしているだけに感じると思うけれど、システムを理解していけば、スクラブやウィップ、ウィリーなど細かいアクションができるようになるから、自分だけのスタイルが見つけられるようになる」
『Descenders』の今後の予定について話を聞くのはまだ時期尚早かもしれない。しかし、我々はこの点についても訊ねてみることにした。Ezendamは次のように回答している。
「早期アクセスを無事に終えることが優先だから、DLCや続編については何も考えていないよ。もちろん、スキンのDLCをリリースする可能性は十分に考えられるね。でも、適当なことは言いたくない」
「第一、早期アクセスの段階でDLCの開発に乗り出すのは "絶対にやってはいけないこと" だ。次のコンテンツについて考え始める前に、まずは本編を仕上げる必要がある。早期アクセスを通じてコミュニティが何を求めているのかを理解して、それから前に進んでいきたい」
しかし、RageSquidの未来予想図に含まれる可能性が高いことがひとつある。それは、世界で最も有名なスケーターとのコラボレーションだ。
RageSquidは『Tony Hawk's Pro Skater』の大ファンであることを公言しており、No More RobotsのMike Roseも、RageSquideがスケートボードゲームの開発を将来的に考えていることを明かしており、Tony HawkがすでにActivisionとの関係を終えているので、自分たちはTony Hawkとプロジェクトについて話し合うことに興味があるとしている。Roseは次のようにコメントしている。
「次の『Tony Hawk's』シリーズを是非とも開発したいと思っているんだ。本人と話してその気があるのかどうか確かめたい。『Descenders』の成功が実現の角度を高めていると思う」
Tony Hawkが参加した素晴らしい物理演算と自動生成コースのスケートボードタイトル? 買うに決まっている。
『Descenders』はSteamの早期アクセスで発売中。
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