Laurent Mekies is seen on his first day with Oracle Red Bull Racing at Silverstone Circuit during the 2025 season
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F1

ローラン・メキースとは?:オラクル・レッドブル・レーシング新代表を知る

2025年7月、F1チームのオラクル・レッドブル・レーシングの新チームプリンシパルにローラン・メキースが就任することが発表された。レーシング・ブルズやフェラーリでキャリアを積み上げてきたフランス人のこれまでを振り返る。
Written by Jakub Winiewski
読み終わるまで:5分Published on
オラクル・レッドブル・レーシング新チームプリンシパル兼CEOローラン・メキースが就任した。この就任により、メキースはF1史上最強チームのひとつを指揮し、新章へ導いていくことになる。シルバーストンで就任初日を迎えたメキースは次のようにコメントを発表した。
「私は世間大半と同じ視点からこのチームを評価しています。このチームには世界最高の人材が集まっています。このチームの競争相手だった頃から、最高の人材をまとめ上げているレッドブル・レーシングを最強のチームと見なしてきました」
メキースはレッドブル・レーシングを20年率いてきたクリスチャン・ホーナーを引き継ぐ形で就任したが、レッドブルはホーナーの多大な貢献を評価しており、その20年を “たゆまぬ努力と経験、知見、革新的な思考とともに素晴らしい仕事をしてきた” と表現している。また、レッドブルは、ホーナーがチームの歴史において重要な一部であり続けることにも言及している。
オラクル・レッドブル・レーシングのスタッフに挨拶する新代表ローラン・メキース

オラクル・レッドブル・レーシングのスタッフに挨拶する新代表ローラン・メキース

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ローラン・メキースとは?

1977年4月28日にフランス・トゥールで生まれたローラン・メキースは、無言実行の精神と優れた技術力に支えられたキャリアを築いてきた。ESTACA(エスタカ:航空自動車技術高等学校)で学んだあと、F1に多くの人材を送り込んでいることで知られる英国・ラフバラー大学で自動車工学の修士課程を修了した。
多くのレーシングドライバーのように、メキースも下位カテゴリーからモータースポーツの世界へ飛び込んだ。2000年にF3のアジアテックからキャリアをスタートさせたメキースは、すぐにプジョーのエンジン開発エンジニアに採用されてF1へのステップアップを果たす。そしてまたすぐに当時プジョーがエンジンを提供していたアロウズへ移ると、2001年から2002年にかけてエンジンパフォーマンスの責任者として働いた。
オラクル・レッドブル・レーシング新代表に就任したローラン・メキース

オラクル・レッドブル・レーシング新代表に就任したローラン・メキース

© Getty Images

F3でキャリアをスタートさせた私はすぐプジョーへ履歴書を送りました。それから2週間後、エンジンサプライヤーとしてアロウズで働くようになり、その3週間後にはメルボルンでF1シーズン開幕戦を迎えていました。このような展開になった理由は、ジャン・アレジがザウバーへ移籍するタイミングでエンジニアをひとり引き抜いてプジョーに空きがあったからです
ローラン・メキース
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トロ・ロッソ時代

2003年、メキースはレースエンジニアとしてミナルディへ加入すると、チーフエンジニアまで昇格。レッドブルがミナルディを買収し、スクーデリア・トロ・ロッソへ改名したあとも残留し、チーム史上最大のハイライトと言える2008シーズン・イタリアGPセバスチャン・ベッテルがもたらしたチーム初優勝に貢献した。
2014シーズンにはチーフエンジニアとして、若きマックス・フェルスタッペンもテストドライバーとして駆ったSTR9の開発に関わった。
トロ・ロッソの躍進を陰で支えたローラン・メキース

トロ・ロッソの躍進を陰で支えたローラン・メキース

© GEPA Pictures/ Mathias Kniepeiss

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FIA時代

2014年から2017年まで、メキースはFIAで働いた。この時代のメキースは様々な役職を担い、セーフティ・ディレクターとして働いたあと、FIAのビークル・パフォーマンス・ディレクターとして6部門をまとめてマシンパフォーマンスの最適化に取り組み、各F1チームの研究開発プロジェクトの監査役も担うと、最終的に副レースディレクターに任命されて故・チャーリー・ホワイティングと働いた。FIAでのメキースはF1の運営・安全基準の確立における中心人物として活躍した。
2025シーズンのオーストラリアGP前にファンと交流するローラン・メキース

2025シーズンのオーストラリアGP前にファンと交流するローラン・メキース

© Getty Images/Red Bull Content Pool

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フェラーリ時代

2018シーズンにメキースはピットウォールへ戻ってきたが、フェラーリからの現場復帰となった。スポーティング・ディレクターとして働き始めたメキースは2021シーズンにレーシング・ディレクターへ昇格し、チームが落ち着かない中、レースオペレーション、ドライバーストラテジー、マシンパフォーマンスを統括した。
そして2023シーズンが始まったあと、ビザ・キャッシュアップ・レーシング・ブルズと改名された古巣のチームプリンシパルを務めることを発表。同シーズン夏にフェラーリを離れた。
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ビザ・キャッシュアップ・レーシング・ブルズ時代

2023シーズン後半、スクーデリア・アルファタウリに新規スポンサーの獲得を含む大規模な変更が加えられ、2024シーズンからビザ・キャッシュアップ・レーシング・ブルズに改名されることが決定した。
長年チームを率いてきたフランツ・トストが引退し、メキースがその穴を埋めることになったが、いきなりひとりですべてをやりくりする必要はなかった。トストがアドバイザーとして残ったため、レッドブルおよびビザ・キャッシュアップ・レーシング・ブルズの必要に応じてメキースはトストから助言を得ることができた。
スペインGPでフリープラクティスを見守るメキース

スペインGPでフリープラクティスを見守るメキース

© Getty Images/Red Bull Content Pool

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レッドブル・レーシングへ

2025年7月、メキースがオラクル・レッドブル・レーシングのチームプリンシパルに就任することが発表された。クリスチャン・ホーナーの後任となるメキースは、レーシング・ディレクターとして活躍したフェラーリ時代とチームプリンシパルとしてチームを率いたビザ・キャッシュアップ・レーシング・ブルズ時代を通じて培った豊富な経験を持ち込むことになる。
エナジーチャージをして新たなミッションに挑む

エナジーチャージをして新たなミッションに挑む

© Getty Images/Red Bull Content Pool

テクノロジーに関する豊富な知識戦略的な頭脳、そしてプレッシャー下でも冷静さを保てるリーダーシップを備えているメキースは、レッドブル・レーシングに落ち着きをもたらすと同時にチームを新時代へ導くことが期待されている。また、2026シーズンに大幅なレギュレーション変更が控えているため、彼のエンジニアとしてのキャリアとF1に関する豊富な知識はこれまで以上に大きな価値を持ってくるはずだ。
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