日本を代表するラウドロック10選
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ミュージック

日本を代表するラウドロックバンド10選

過去10年のシーンを振り返り「これぞ日本を代表するラウドロックバンド」と感じる10組を紹介。
Written by Tomokazu Nishibiro
読み終わるまで:12分最終更新日:
「ラウドロック」というジャンルを文字による説明で認識したものの、実際に音で聴いてみたら自分の想像と違った、という経験の持ち主は意外と多いと思う。事実、10人いれば10通りの解釈があるのがラウドロック。特に時代を追うごとにそのサウンドスタイルは進化、拡散していることもあり、2010年代初頭にイメージしたラウドロックと現在イメージするラウドロックとでは明らかな違いも生じる。
今回のコラムでは私自身が「これぞ日本を代表するラウドロックバンド」と感じている10組を紹介してみたい。とはいえ、この10組のセレクトも始めてみたら意外と難しく、どこに軸を置くかで紹介するアーティストの顔ぶれも変わってくる。個人的には「今、もっとも勢いのある、これからのバンド10選」というのもアリだが、このコラムを読んでいる人の中にはこれからラウドロックを知ろうとしている人も多いと思うので、過去10年のシーンを振り返りつつ「日本のラウドロック史の変遷」を紹介できるような10組をピックアップしたつもりだ。
2016年の記事初出から4年経過したことを受け、2020年の視点で「筆者個人が考えるラウドロック感」に基づき、一部内容を改訂した。このコラムをきっかけに、「いや、俺の思うラウドロックはこの10組だ!」「いやいや、私ならこの10組を絶対に選ぶ!」という声が挙がることは非常に喜ばしいことだと思う。そうすることが、今後のシーンの活性化、そしてビギナーがラウドロックの歴史をたどる上での重要な教科書になるはずだ。
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Pay money To my Pain

PTPの愛称で親しまれる、現在のラウドロック史を語る上でなくてはならない存在。2006年のデビュー時は5人編成だったが、2008年からはK(Vo)、PABLO(G)、T$UYO$HI(B)、ZAX(Dr)の4人で活動。英語詞で歌われる楽曲の数々はスクリーモやメタルコアからの影響を強く感じさせつつも、Kが歌うエモーショナルな歌と、楽器隊による緩急を活かした抜群のアレンジ力で唯一無二の存在へと成長する。彼らから影響を受けたという20代後半以上のラウド系バンドは非常に多いのではないだろうか。
残念ながら2012年12月30日、Kが急逝したことでバンドは活動停止。彼らが残した4枚のオリジナルアルバムと3枚のEP、1枚のベストアルバムは日本のラウドロックを語る上では重要な作品群だ。
また、2020年2月2日にはcoldrain主催フェス『BLARE FEST.2020』で約6年ぶりにライブを実施したことも記憶に新しい。
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マキシマム ザ ホルモン

もはや説明はいらないのではと思われるほどに、セールス/知名度的にも大成功を収めたバンド。2006年発売のシングル『恋のメガラバ』が大ヒットして以降、彼らのファンを公言するリスナーは急増。
時にコミカル、時にシリアスな歌詞と変幻自在なバンドアンサンブルはすでにラウドロックという枠を飛び出したものだが、彼らのブレイクが後のシーンに与えた影響を考えれば史実上、外すことはできない。オリコン週間ランキング3週連続1位を記録した2013年発売のアルバム『予襲復讐』は、ヘヴィな音楽を愛好する者なら避けては通れない1枚。
さらに、2018年には書籍(マンガ)にCDを付けた独特のスタイルによる新作『これからの麺カタコッテリの話をしよう』が大反響を呼ぶなど、常にリスナーを驚かせ続けている。
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AA=

PTP、ホルモンと続いたら、本来はここでTHE MAD CAPSULE MARKETSを紹介すべきだろうが、彼らが活動休止したのは今から10年前の2006年4月。それ以前の最新音源となると2004年発売のアルバム『CiSTm K0nFLiqT...』まで遡らねばならないため、ここではAA=を紹介することにする。
AA=はマッドの中心人物・上田剛士が2008年にスタートさせたソロプロジェクト。サウンド的にはマッドの延長線上にあるヘヴィロック/ミクスチャーロック/デジタルロックをブレンドした独自のもので、これまでに発表された作品からは先駆者としての説得力だけでなく、まだまだ戦い続けようとする覚悟が感じられる。
近年はBABYMETALへの『ギミチョコ!!』『あわだまフィーバー』楽曲提供、Koie(Crossfaith)やMasato(coldrain)、Kj(Dragon Ash)といった後輩たちとのコラボレーションでも注目を集めている。
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Crossfaith

そのAA=とコラボも果たしたKoieが参加するCrossfaithは、現在のラウドロックシーンを牽引する若手バンドの1組。
イギリスのENTER SHIKARIのように、ニューレイヴなどのデジタル要素を前面に打ち出したバンドが海外で注目され始めた時期に成されたCrossfaithは、2009年に1stアルバム『The Artificial theory for the Dramatic Beauty』をインディーズから発表。筆者もこのタイミングで彼らを知り、YouTubeに公開された初PV「Blue」に打ちのめされたものだ。
デジタルテイストを適度に取り入れつつも激しいスクリームと低音を効かせたヘヴィサウンドが魅力で、特にそのライブの激しさにやられたというファンも多いのではないだろうか。また彼らはいち早く海外へと出向き、精力的な活動を展開。オーストラリアの『SOUNDWAVE FESTIVAL』、イギリスの『DOWNLOAD FESTIVAL』『READING AND LEEDS FESTIVAL』など海外大型フェスでもメインステージに立つほどの成功を収めている。
2020年1月には新レーベル「Species Inc.」を設立。今後さらなる精力的な展開が期待される。
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coldrain

現在Crossfaithに続く存在は、間違いなくcoldrainだろう。彼らはメタル寄りというよりはエモやポストハードコアからの影響が強く、日本人好みの親しみやすいメロディが早くからロックファンに受け入れられる。
徐々に海外を意識した作品作りに移行し、欧米のメタルコアバンドを手がけたプロデューサー、デヴィッド・ベンデスを迎えた3rdフルアルバム『The Revelation』(2013年)はオリコン週間ランキング7位を記録。同年末にはBULLET FOR MY VALENTINE、BRING ME THE HORIZONらが所属する海外マネジメントと契約し、欧米でのツアー経験も精力的に重ねてきた。
また、2018年2月には初の日本武道館ワンマン公演、2020年2月には地元・ポートメッセなごやにて2日間にわたる主催フェス『BLARE FEST. 2020』も開催実現。2020年10月には横浜アリーナでの単独公演も控えており、ますますその勢いを加速させている。バンドの爆発力と観客との一体感が素晴らしいライブは一見の価値あり。
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SiM

オフィシャルサイトではレゲエパンクバンドと称されているが、Crossfaith、coldrainとともに現在のラウドロックシーンを語る上では欠かせないバンド。メタリックなCrossfaith、エモーショナルなcoldrainとも個性が異なる、レゲエやスカなどの要素を取り入れたミクスチャーテイストが魅力で、低音を効かせた現代的ヘヴィサウンドとの相性も抜群。
国内でのライブ活動を主軸にし、主催イベント『DEAD POP FESTiVAL』も定期的に実施。2015年からは川崎市東扇島東公園で野外フェス形式として開催され続けている。さらに同年秋には“最初で最後”の触れ込みで初の日本武道館単独ライブを、2016年10月には横浜アリーナでのワンマンライブをそれぞれ敢行。
2020年4月には実に4年ぶりとなるニューアルバム『THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES』の発売も予定されている。
とにかく体を動かさずにはいられない彼らのサウンドは、一度生で味わうべき。
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HER NAME IN BLOOD

ツインギターを有効に活かしたメタルコアサウンドは欧米のそれにも引けを取らず、フロントマンIkepyのマッチョな風貌とあわせてどこか日本人離れした存在と言える。(追記:2021年7月に惜しくも解散)
2010年のシングル『Confusion』、アルバム『DECADENCE』以降しばらく音源発表がなかったが、2013年に現在のTRIPLE VISION entertainmentに移籍してからは『THE BEAST EP』(2013年)、『HER NAME IN BLOOD』(2014年)と定期的に作品をリリース。そして2015年にはワーナー・ミュージックジャパンにメジャー移籍を果たし、同年9月には2nd EP『BEAST MODE』、2016年4月には3rd EP『Evolution From Apes』を発表。2017年にMAKI(Dr)が加入。
海外でのライブ経験も豊富で、2015年10月にはアメリカ・カリフォルニアで行われたSLIPKNOT主催フェス『KNOTFEST 2015』への出演も果たした。
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Fear, and Loathing in Las Vegas

すでにセールス/ライブ動員的には大成功を収めたバンドのひとつと言える彼らは、ラウドロックにトランスなどエレクトロミュージックの要素を大々的に取り入れたピコリーモサウンドが特徴。ボーカルもスクリームのみならずオートチューンによるクリーンボーカルをフィーチャーするなど、Crossfaithあたりと比較してもよりエレクトロ色がより濃厚。
また彼らはツインボーカル体制なのも特徴で、ライブではクリーン&スクリームボーカルのSoとキーボードも兼任するスクリームボーカルのMinamiがステージ上を所狭しと動き回るのも見どころのひとつだ。
アニメ主題歌のタイアップも多く、アニメ作品と彼らのサウンドの相性も抜群。これによりロックファン以外にも彼らの楽曲が認知されるという結果を生み出し、2015年9月発売の4thアルバム『Feeling of Unity』はオリコン週間ランキング2位を獲得。2016年1月には初の日本武道館ワンマンライブを実現させた。
2018〜19年にかけてメンバーの脱退や急逝などが続いたいものの、2019年9月には新編成による6thアルバム『HYPERTOUGHNESS』で健在ぶりを提示。ラウドロックの未来を示すという意味でも、彼らの成功は非常に大きな意味を持っているのではないだろうか。
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Crystal Lake

恐らく今、もっとも国内外で精力的な活動を続けるバンドがCrytal Lakeではないだろうか。2002年結成と実は活動歴が非常に長い彼らは、現在Ryo(Vo)、YD(G)、Shinya(G)にミツル(B/ex. キバオブアキバ)、田浦楽(Dr/ex. NOCTURNAL BLOODLUST)という布陣でヘヴィかつアグレッシヴな最狂サウンドで世界中のエクストリーム・ミュージック・リスナーを悩殺し続けている。
中でも圧倒的な存在感を放つRyoのカリスマ性と唯一無二のボーカルは特筆に値するものがあり、ライブやイベントを通じて心を奪われたというファンも多いのではないだろうか。
ここ数作は海外でもリリースされており、特に現時点での最新アルバム『HELIX』(2018年)は凄まじい熱量を放つライブパフォーマンスとともに高く評価されている。長きにわたり地道な活動を続けてきたからこその説得力の強さを、まずはライブ会場にて生で体感してもらいたい。
10

ROTTENGRAFFTY

彼らも1999年結成と、活動歴は20年以上にもおよぶベテランバンド。だが、その活動スタンスやライブパフォーマンスは若手に負けないほどエネルギッシュなものがある。
2000年代にはすでにメジャーでの活動も経験していたが、今のスタイルが完全に確立されたのは2010年代前半……今でもライブでの人気が絶大な名曲「金色グラフティー」(2011年のベストアルバム『GOLD』、および2013年の5thアルバム『Walk』収録)が誕生して以降の印象が強い。
また、2014年12月には自主企画イベント『ポルノ超特急』を地元・京都パルスプラザという大会場で開催し、ソールドアウトを記録。以後、年末の風物詩として毎年人気を博している。
NOBUYA&N∀OKIのツインボーカルと日本人の琴線に触れるメロディ、パンクやメタル、オルタナティヴロックを包括するミクスチャーロックサウンドは現在まで多くのフォロワーを生み続け、2019年12月には初のトリビュートアルバム『ROTTENGRAFFTY Tribute Album 〜MOUSE TRAP〜』もリリースされた。
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