日本を代表するラウドロック10選
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日本を代表するラウドロック10選

© 天田輔

今回のコラムでは「これぞ日本を代表するラウドロックバンド」と感じている10組を紹介する。

「ラウドロック」というジャンルを文字による説明で認識したものの、実際に音で聴いてみたら自分の想像と違った、という経験の持ち主は意外と多いと思う。事実、10人いれば10通りの解釈があるのがラウドロック。特に時代を追うごとにそのサウンドスタイルは進化、拡散していることもあり、2010年代初頭にイメージしたラウドロックと現在2016年にイメージするラウドロックとでは明らかな違いも生じる。

今回のコラムでは私自身が「これぞ日本を代表するラウドロックバンド」と感じている10組を紹介してみたい。とはいえ、この10組のセレクトも始めてみたら意外と難しく、どこに軸を置くかで紹介するアーティストの顔ぶれも変わってくる。個人的には「今、もっとも勢いのある、これからのバンド10選」というのもアリだが、このコラムを読んでいる人の中にはこれからラウドロックを知ろうとしている人も多いと思うので、過去10年のシーンを振り返りつつ「日本のラウドロック史の変遷」を紹介できるような10組をピックアップしたつもりだ。

あくまでこれは「2016年4月時点での、私個人が考えるラウドロック感」に基づいたもの。逆にこのコラムをきっかけに、「いや、俺の思うラウドロックはこの10組だ!」「いやいや、私ならこの10組を絶対に選ぶ!」という声が挙がることは非常に喜ばしいことだと思う。そうすることが、今後のシーンの活性化、そしてビギナーがラウドロックの歴史をたどる上での重要な教科書になるはずだから。

①Pay money To my Pain

PTPの愛称で親しまれる、現在のラウドロック史を語る上でなくてはならない存在。2006年のデビュー時は5人編成だったが、2008年からはK(Vo)、PABLO(G)、T$UYO$HI(B)、ZAX(Dr)の4人で活動。英語詞で歌われる楽曲の数々はスクリーモやメタルコアからの影響を強く感じさせつつも、Kが歌うエモーショナルな歌と、楽器隊による緩急を活かした抜群のアレンジ力で唯一無二の存在へと成長する。彼らから影響を受けたという20代後半以上のラウド系バンドは非常に多いのではないだろうか。残念ながら2012年12月30日、Kが急逝したことでバンドは活動停止。彼らが残した4枚のオリジナルアルバムと3枚のEP、1枚のベストアルバムは日本のラウドロックを語る上では重要な作品群だ。

②マキシマム ザ ホルモン

もはや説明はいらないのではと思われるほどに、セールス/知名度的にも大成功を収めたバンド。2006年発売のシングル『恋のメガラバ』が大ヒットして以降、彼らのファンを公言するリスナーは急増。時にコミカル、時にシリアスな歌詞と変幻自在なバンドアンサンブルはすでにラウドロックという枠を飛び出したものだが、彼らのブレイクが後のシーンに与えた影響を考えれば史実上、外すことはできない。オリコン週間ランキング3周連続1位を記録した2013年発売の最新アルバム『予襲復讐』は、ヘヴィな音楽を愛好する者なら避けては通れない1枚。

③ AA=

PTP、ホルモンと続いたら、本来はここでTHE MAD CAPSULE MARKETSを紹介すべきだろうが、彼らが活動休止したのは今から10年前の2006年4月。それ以前の最新音源となると2004年発売のアルバム『CiSTm K0nFLiqT...』まで遡らねばならないため、ここではAA=を紹介することにする。AA=はマッドの中心人物・上田剛士が2008年にスタートさせたソロプロジェクト。サウンド的にはマッドの延長線上にあるヘヴィロック/ミクスチャーロック/デジタルロックをブレンドした独自のもので、これまでに発表された作品からは先駆者としての説得力だけでなく、まだまだ戦い続けようとする覚悟が感じられる。今回ピックアップした「FREE THE MONSTER」ではマッドの血を受け継ぐCrossfaithのフロントマンKoie、coldrainのシンガーMasatoをフィーチャリングボーカルに迎え、ラウドロックファン生唾モノのコラボを繰り広げている。

④ Crossfaith

そのAA=とコラボも果たしたKoieが参加するCrossfaithは、現在のラウドロックシーンを牽引する若手バンドの1組。イギリスのENTER SHIKARIのように、ニューレイヴなどのデジタル要素を前面に打ち出したバンドが海外で注目され始めた時期に成されたCrossfaithは、2009年に1stアルバム『The Artificial theory for the Dramatic Beauty』をインディーズから発表。筆者もこのタイミングで彼らを知り、YouTubeに公開された初PV「Blue」に打ちのめされたものだ。デジタルテイストを適度に取り入れつつも激しいスクリームと低音を効かせたヘヴィサウンドが魅力で、特にそのライブの激しさにやられたというファンも多いのではないだろうか。また彼らはいち早く海外へと出向き、精力的な活動を展開。オーストラリアの『SOUNDWAVE FESTIVAL』、イギリスの『DOWNLOAD FESTIVAL』『READING AND LEEDS FESTIVAL』など海外大型フェスでもメインステージに立つほどの成功を収めている。

⑤ coldrain

現在Crossfaithに続く存在は、間違いなくcoldrainだろう。彼らはメタル寄りというよりはエモやポストハードコアからの影響が強く、日本人好みの親しみやすいメロディが早くからロックファンに受け入れられる。徐々に海外を意識した作品作りに移行し、欧米のメタルコアバンドを手がけたプロデューサー、デヴィッド・ベンデスを迎えた3rdフルアルバム『The Revelation』(2013年)はオリコン週間ランキング7位を記録。同年末にはBULLET FOR MY VALENTINE、BRING ME THE HORIZONらが所属する海外マネジメントと契約し、現在は欧米でのツアー経験を精力的に重ねているところだ。バンドの爆発力と観客との一体感が素晴らしいライブは一見の価値あり。

⑥ SiM

オフィシャルサイトではレゲエパンクバンドと称されているが、Crossfaith、coldrainとともに現在のラウドロックシーンを語る上では欠かせないバンド。メタリックなCrossfaith、エモーショナルなcoldrainとも個性が異なる、レゲエやスカなどの要素を取り入れたミクスチャーテイストが魅力で、低音を効かせた現代的ヘヴィサウンドとの相性も抜群。国内でのライブ活動を主軸にし、主催イベント『DEAD POP FESTiVAL』も定期的に実施。2015年には川崎市東扇島東公園で野外フェス形式として開催された。さらに同年秋には“最初で最後”の触れ込みで初の日本武道館単独ライブを敢行。今年4月には待望の4thフルアルバム『THE BEAUTiFUL PEOPLE』もリリースされ、この先には横浜アリーナ公演も控えている。とにかく体を動かさずにはいられない彼らのサウンドは、一度生で味わうべき。

⑦ HER NAME IN BLOOD

ネクストブレイクが期待される5人組バンド。ツインギターを有効に活かしたメタルコアサウンドは欧米のそれにも引けを取らず、フロントマンIkepyの風貌とあわせてどこか日本人離れした存在と言える。2010年のシングル『Confusion』、アルバム『DECADENCE』以降しばらく音源発表がなかったが、2013年に現在のTRIPLE VISION entertainmentに移籍してからは『THE BEAST EP』(2013年)、『HER NAME IN BLOOD』(2014年)と定期的に作品をリリースしている。そして2015年にはワーナー・ミュージックジャパンにメジャー移籍を果たし、同年9月には2nd EP『BEAST MODE』、今年4月には3rd EP『Evolution From Apes』を発表。海外でのライブ経験も増えており、昨年10月にはアメリカ・カリフォルニアで行われたSLIPKNOT主催フェス『KNOTFEST 2015』への出演も果たした。

⑧ Fear, and Loathing in Las Vegas

すでにセールス/ライブ動員的には大成功を収めたバンドのひとつと言える彼らは、ラウドロックにトランスなどエレクトロミュージックの要素を大々的に取り入れたピコリーモサウンドが特徴。ボーカルもスクリームのみならずオートチューンによるクリーンボーカルをフィーチャーするなど、Crossfaithあたりと比較してもよりエレクトロ色がより濃厚。また彼らはツインボーカル体制なのも特徴で、ライブではクリーン&スクリームボーカルのSoとキーボードも兼任するスクリームボーカルのMinamiがステージ上を所狭しと動き回るのも見どころのひとつだ。アニメ主題歌のタイアップも多く、アニメ作品と彼らのサウンドの相性も抜群。これによりロックファン以外にも彼らの楽曲が認知されるという結果を生み出し、昨年9月発売のアルバム『Feeling of Unity』はオリコン週間ランキング2位を獲得。今年1月には初の日本武道館ワンマンライブを実現させた。ラウドロックの未来を示すという意味でも、彼らの成功は非常に大きな意味を持っているのではないだろうか。

⑨ NOCTURNAL BLOODLUST

ビジュアル/サウンド的にもV系寄りの立ち位置かもしれないが、過去にHEAVEN SHALL BURN、DESTRAGE、RISE TO FALLといった海外のラウドロック勢と共演していることからも同じV系の中でも異端的存在と言える。ラウドロック的要素を含みつつもゴシックかつクラシカルな色合いが強く、メロディックデスメタルやシンフォニックデスメタルの進化系と受け取ることもできる。最近ではHER NAME IN BLOODなどとも共演しており、今年6月にはラウドロック系人気イベント『SCREAM OUT FEST 2016』への出演も控えている。ライブ映像を観る限りでは女性ファンが多いものの、そのノリは普段ラウド系バンドのライブで見かける光景にも近い。だからこそ彼らのようなラウドロックの新たな可能性を示すバンドが同イベントでどのようなリアクションを得るのか、非常に楽しみでならない。

⑩ a crowd of rebellion

新潟出身の彼らも、ラウドロックの新たな在り方を示す存在だ。ラウドロックマナーに添いつつも、ヒットチャートを席巻するJ-POPやギターロック的要素、さらにはボカロP的な視点が取り入れられたアレンジなどが施されたジェットコースター的展開を持つ楽曲の数々は、テン年代ならでは。1曲の中に何曲分ものアイデアが詰め込まれたこのスタイルこそが、今のJ-POP/J-ROCKのスタンダードなのかもしれない。現在の10代、20代のリスナーにとっては「ごく当たり前」と捉えるのなら、ラウドロックは今、とんでもない転機を迎えようとしているのではないだろうか。昨年3月にシングル『The Crow』でメジャーデビューを果たし、同年9月にはコンセプト色の強い7曲入りEP『Daphne』を発表。そして今年6月にはフルアルバム『Xanthium』のリリースが予定されている。ここで取り上げた「M1917」はそのアルバムのオープニングを飾る1曲だ。