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モーグルスキーとは?:歴史・ルール・見どころ
フリースタイルスキーの中で最もテクニカルでエキサイティングな種目、モーグルの歴史やルール、見どころなどを簡単に解説!
誰もが知っている通り、モーグルスキーはアップダウンの激しいスキー競技だ。そして、だからこそ刺激的で見ていて飽きることがない。世急角度のスロープを滑降するこのスポーツでは、スピードだけではなく、我慢強さと冷静さも問われ、類い稀なスキーと身体のコントロール能力も必要になる。
歴史から初心者用アドバイス、さらには注目選手まで、本記事ではモーグルスキーとは何なのか、どのようなルールがあるのか、そしてどこが魅力なのかなどにについて簡単に解説していく。
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モーグルスキーとは?
モーグルスキーでは、おそらく他のどの競技よりも、高い集中と派手な演出が求められる。ビッグエアでは派手なスタントが、フリーライドでは優れたテクニックが必要になるかもしれないが、モーグルスキーはこの2競技を組み合わせて生み出された新しくて高難度でエキサイティングな競技と言える。
モーグルスキーの大会を見たことがない人に説明するなら、モーグルスキーとは、スキーヤーが雪のコブ(モーグル)がいくつも設置されている専用スロープをできる限り高いスピードで滑降しながら、モーグルでジャンプトリックをメイクしてポイントを稼ぐスポーツだ。
大会ではスピード・ターン・ジャンプが主要の採点基準となり、バランスとアジリティ、リズムが重要な要素になってくる。
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競技名の由来
モーグルスキーは、小さな丘や盛り土を意味するドイツ語で “ムーゲル(Mugel)” が語源だ。モーグルには大御所・重鎮を意味する英語のモーグル(Mogul)とは発音もスペルも同じだが一切関係ない。
ちなみに、英語のモーグルは、約300年東アジアを支配した "ムガール帝国(Mughal Empire)"が語源だ。
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モーグルの作られ方
モーグルスキーのモーグル、つまりコブは、元々はスキースロープに自然発生するものだ。スキーヤーやスノーボーダーたちがスロープでターンをすると雪が削られ、その削られた雪が積もってコブができていく。つまり、モーグルはスキーの副産物なのだ。
急斜面ほどしっかりエッジを立ててカーブしていくため、コブができやすく、その数が増えていけば、スロープ全体がモーグルで埋め尽くされていく。高難度のスロープほど削られる雪の量が多く、尚且つ重力の影響もあるため大きなコブができやすい。しかし、モーグルスキーの大会のモーグルは意図的に作られており、滞空時間を延ばしてビッグトリックをメイクしやすい位置に配置される。
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モーグルの採点基準と採点方法
FISフリースタイルモーグルワールドカップのようなモーグルスキーの大会は、100点満点のポイント制で採点され、内訳はターンが60%、ジャンプ2回が20%ずつとなっている。
ターンはジャッジ5人が0〜20点で採点し、ジャンプはジャッジ2人がフォームと難度を採点する。スピードはコースごとにあらかじめ設定されているペースタイムと比較して測定される。
やや複雑な採点システムに思えるかもしれないが、覚えておくべきは、この競技では、スロープを高速で滑降したり、クールなエアをメイクしたりするよりも、フィジカルのアジリティと素早い判断能力の方がわずかに高く評価されるということだ。
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基本テクニックとアドバイス
モーグルスキーでは他のスキー競技と同じスキルが求められる。たとえば、スロープの下を見続けられる能力や、スキーの中心に重心を置ける能力、膝で衝撃を吸収する能力などだ。
初心者ならモーグルの間を縫うように滑降したいと思うかもしれない。モーグルにスキーを当てたら、膝を曲げてスキーをコントロールしよう。バイクで縁石から路面へ下りたり、スピードバンプを越えたりするときをイメージすれば分かりやすいだろう。
身体を安定させると同時に、ストックワークもマスターしたい。モーグルの頂点を越えた直後にモーグルの山側にストックを立てることで、次のターンへのリズムをキープできる。滑降中は最低でも2〜3個先のモーグルを見るようにして、サプライズを避けながら、スムーズなラインを描いていこう。
モーグルを越えるときにスピードが出すぎたら、スキッディング(エッジを立てないターン)やホッケーブレーキ(両スキーを揃えてエッジを思い切り立ててブレーキング)で減速しつつフロウを取り戻そう。
最後に、初心者ならモーグルの頂点の使い方を学んでおくと良いだろう。スキーのチップ(先端)とテール(後端)が雪面から離れたタイミングでターンをしよう。次のモーグルへ進む前に両足を軸に回転するイメージだ。
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モーグルスキーの注意点
モーグルスキーはかなり高難度だ。優れた姿勢復帰力、精確なタイミング、想定外の事態への対応力、冷静な判断力が必要になる。好成績を収めるために最も重要になってくる要素は、平坦なセクションがほぼ存在しないスロープでバランスを取れる能力だ。この能力を手に入れるためには、自分のバランスを崩そうとする物理法則に抗えるだけの強力な体幹が不可欠になる。
次はスピードのコントロール能力だ。さきほども説明したが、タイムはポイントの20%しか占めない。また、モーグルスキーでの高速滑降は危険だ。安全に賢くモーグルを攻めるためには、減速する方法と勢いを殺してスムーズなターンに繋げる方法を学ぶ必要がある。
ここでターンのやり方に触れておこう。ひっきりなしに膝を曲げて衝撃を吸収したあと、膝を伸ばして次のターンへ向かわなければならないモーグルスキーのターンは非常に難しい。ジムでスクワットとランジに取り組むことが役立つだろう。
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モーグルスキーの進化
モーグルスキーは1960年代のフリースタイルスキーの人気上昇とともに誕生し、1979年にFISの公式競技種目になると、1988年から世界で競われるようになった。
当初は即興性が問われていたが、やがて最も高い精度が問われるスキー競技となった。近年はクリエイティブなアドリブや崩れた体勢からの復帰力よりも、精確なライン取り、高いテクニック、そしてテクニカルなスタイルが重視されるようになっている。
2026年2月のミラノ・コルティナでもモーグルは正式種目に採用されているが、デュアルモーグルがデビューを飾る。この種目では、スキーヤー2人が同人スタートしてコースを滑降する。他のモーグルスキー種目と同じでフィニッシュまでのタイムがすべてではなく、ジャッジ5人の採点によって勝者が決まる。
デュアルモーグルは以前から存在している種目だが、世界の頂点を競う大舞台で採用されるのは初めてで、今回の追加によって次世代モーグルスキーヤーたちの興味を引くことになるだろう。つまりこれは、これまで以上に高精度なテクニックが問われる新時代が登場する可能性が高いことを意味している。
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モーグルスキートップ選手
モーグルスキーシーンには、度胸と革新で知られるレジェンドスキーヤーが数多く存在する。以下にその一部を紹介しよう。
ミカエル・キングズベリー
カナダ出身のキングズベリーは史上最高のモーグルスキーヤーと言っても良いだろう。世界の頂点に一度立っている彼は、世界2位・世界3位も経験しており、さらにはワールドカップ史上最多勝利数記録も保持している。
ドナ・ワインブレヒト
米国出身のワインブレヒトは1992年に史上初の女子世界王者になり、米国内のモーグル人気を高めることに貢献。後進に大きな影響を与えた。
ペリーヌ・ラフォン
フランス出身のペリーヌ・ラフォンは2018年に世界の頂点に立った女子モーグルスキーヤーだ。世界選手権優勝やワールドカップ総合優勝も手にしている彼女は、近年で最も大きな成功を収めているモーグルスキーヤーのひとりに数えられている。
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モーグルスキーの名コース
記憶に残るモーグルスキーコースと言えば、米国ユタ州のディア・バレーに位置するChampionだろう。このワールドカップコースは世界最高難度と言われており、その急斜面は世界最高レベルのスキーヤーたちでもテクニックが試される。
バーモント州キリングトンのOuter Limitsも伝説のコースで、巨大なモーグルと恐ろしい急勾配が待っている。ここはBear Mountain Mogul Challengeを毎年開催していることとドナ・ワインブレヒトの地元であることでも有名だ。つまり、ラッキーなら世界最高のモーグルスキーヤーからアドバイスを得られる可能性があるのだ。
さらに紹介していくと、スイスとフランスの国境付近に位置するスキーリゾートPortes du SoleilのSwiss Wall(Chavanette)もモーグルスキーシーンでは聖なるスロープとして知られている。その未整備のコースには超巨大なモーグルが待ち構えている他、特大の垂直ドロップや急勾配のスロープも備わっているため、モーグルスキーファンならマストだ。
最後に、スイス・ツェルマットのTriftjiもモーグルファンならマストのコースで、世界で最も有名なモーグルコースのひとつに数えられている。高地に位置しているこのコースは世界最長・世界最高難度コースのひとつだが、何事にも裏があるのと同じで、ここにも無数の岩が存在しており、大雪が降らない限り、これらを隠すことはできない。とはいえ、コンディションが整えば、最高のモーグルコースのひとつが味わえる。
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