© Ayako Yamamoto
ブレイキン

教えてSEITO! ブレイキンにまつわる5つの疑問

1970年代にニューヨークのストリートで発祥し、その特異な音楽と身体表現で、観る者を熱狂させ続けるブレイキン。いまや世界的なカルチャーとなったこのシーンについて、B-BoyでもあるMAZZELのSEITOが、初心者にもわかりやすく基礎からその魅力をひもといていく。
Written by Red Bull Japan
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SEITO プロフィール

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ブレイキンのダンスの特徴ってなんですか?

ブレイキンは主に【トップロック(立ち踊り)】【フットワーク(床での足さばき)】【パワームーブ(アクロバティックな回転技)】【フリーズ(静止ポーズ)】という4つの基本構成から成る。しかし、SEITOさん曰く、今はその枠を超え、自由で独創的なムーブが評価される時代となっているそう。
「一連の流れの中にすごい情報量が詰まっているんですよ。しかも今のブレイキンって“型”があってないようなもので、“シグネチャー”(自分にしかできない動き)があることが重要。基本構成はあるけど、それに縛られずにオリジナリティを出せるかが勝負なんです」
 

 

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ブレイキンは進化し続けるダンス。高いレベルになる程、基本の技に加え、他のジャンルの動きを取り込んだり、まったく新しい表現を生み出せる“個性を持ったB-Boy & B-Girl”でなければ注目を集めることができない。
「まさに、一心(ISSIN)くんなんかがそうですよね。高い技術に加えて、言葉で説明するのが難しいような完全にオリジナルな技を持っていて、それがアイコンになってる。そういう“替えが効かない”ダンサーが、今めちゃくちゃ求められているんだと思います」
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よく耳にするパワームーブってやっぱり凄い技?

観客の度肝を抜く“大技”たち、それがパワームーブ。ヘッドスピン、ウインドミル、トーマス、エアフレア、1990……。ブレイキンと聞いて、多くの人が最初に思い浮かべる全身を使ったアクロバティックなこれらの回転技は、いずれも高難易度だ。
  
「全部めちゃくちゃ難しいです。自分自身もトーマス(※1)を練習していた時、1回転できるようになるまでに1年以上かかりました。人によっては1日でできる人もいれば、何年もかかる人もいる。それぐらい体の使い方やセンスに左右される技ですね」
※1 体操の“鞍馬”で行う開脚旋回を床上でアレンジした技で、両脚を大きく開き、円を描くように回転する。
  
驚きなのが、それだけ苦労して身につけた大技も、今や“できる”だけじゃ足りない。流れの中でどう見せるか、どれだけスタイルとして成立させられるかが重要なのだとか。
 
「ウインドミルからヘッドスピンにつなぐとか、技同士の“流れ”の中にも個性が求められます。誰しも完璧にできる前は自分なりの形やクセがあると思うので、そこを尖らせて、どう“自分のもの”にするかが問われていますね」
 

 

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例えば、相手に圧倒的な身体能力を活かしたダイナミックなパワームーブをかまされたとしても、ユニークな魅せ方やアイディアの工夫次第で、対等に勝負できるという点が非常に面白いポイントでもある。
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他に覚えておくべき代表カテゴリーって?

さらに面白いのが、ブレイキンはパワームーブだけじゃない! 素人目には派手なパワームーブこそ音楽で言う、曲のサビだと思ってしまう。ところが、パワームーブ意外の要素も実は重要視されているらしい。
  
「パワームーブを一切やらずに優勝する選手もいます。自分のスタイルで魅せられるのがブレイキンの面白さですね。例えばトップロックやフットワークは、派手さより“味”や“ノリ”が問われる奥深いパートなんです」
 

 

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トップロックは、立った姿勢でのステップ。バトルの入り口で“俺が来たぞ”と空気を作る。フットワークは、しゃがんだ姿勢で床を使って展開するステップ。そして、フリーズは、動きをピタッと止めてポーズをキメる、バトルの“句読点”だ。じゃあ、どこで差が出るかと言うと、それは、音。
  
「全てに共通するのが、“いかに音を聞けているか”が大切。ミュージカリティって言うんですけど、これが本当に大事になっていて、即興で曲とセッションしていく感じですね。ミュージカリティで言えば、シゲちゃん(SHIGEKIX)が群を抜いてると思います。バトルの最中に音楽をよく聞いていて、何より、音を楽しんでいるのが分かるムーブをしている気がする。見ていて楽しいですね」
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注目している大会はありますか?

「色々とあるけど、やっぱりRed Bull BC Oneですね!」。そう答えるSEITOさんは、2016年の名古屋大会と2024年のブラジル大会を現地観戦した経験があり、その舞台の緊張感を肌で感じた一人。そして今年のRed Bull BC One World Final Tokyo 2025は、なんと、東京・両国国技館で開催される。
  
「Red Bull BC Oneは、ブレイカーにとって、世界最高レベルの1on1バトル。誰もが出場を夢見る舞台です。他のバトルで優勝している人でも、この大会では全く勝てないこともあるぐらい。だからRed Bull BC Oneは予想がつかない闘いになるんです。予選からめちゃくちゃ面白いので、動画配信もぜひ見てほしいですね。1、2時間があっという間ですよ」
  
いわゆる”魔物が住んでる”大会なのだろう。そんなヒリヒリしたB-Boy & B-Girlたちのタイマン勝負の決勝戦が、日本で、そして相撲の聖地で見られるのは、初めての人には最高の機会だ。
  
「もちろん映像でも魅力は伝わりますけど、現場にいると、空気がピリついてるのが分かるんです。選手同士の挑発や、観客のリアクションもバトルに含まれているので。でも、残念ながらチケットはすでにソールドアウトしているみたい。なので、今回はぜひライブ配信でチェックしてみてください。そして次回は生で見る興奮もぜひ知ってほしいですね」
 

 

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さらに、注目すると面白いポイントがファッション。一貫して個性的なスタイルや味が求められる昨今、衣装選びや着こなしのプレゼンテーションから勝負はもう始まっているのだ。
  
「ファッションも様々で、見ていて面白いですよ。Tシャツにシャカパンでストリートスタイルもいれば、あえてジャケットを着て雰囲気を出す人もいて。もはや踊りやすい踊りにくいとか、そんな次元じゃなくて、洋服での見せ方もパフォーマンスにかなり影響するんですよ。ファッションを入り口に推しを見つけるのも楽しいかもしれません」
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ブレイキンは心と体にいいってホント?

これだけブレイキンの魅力を教えてもらうと、自分も始めてみようかな? と考えている読者もきっと居るはずだ。そんなビギナーの背中を押すSEITOさんからのメッセージ。
  
「僕はブレイキンに出会えてホントに、いいことしかないです。まず全身運動だから体力は当然つくし、筋力・バランス感覚・柔軟性が自然と鍛えられる。しかもブレイキンって即興だから、集中力・判断力・反射神経もめちゃくちゃ使うんです」
  
ブレイキンは、単なるダンスというよりも、ライフスタイルそのものであり、もはやワークアウトでもある。あらゆる感覚が問われるブレイキンは、まさに全身運動だ。
  
「メンタル面の成長も大きいですね。自分もストリートでずっとやってきたんで、コンクリートの上で真夏も真冬も練習してました。そういう環境が、“誰にも負けへん”っていう気持ちを育ててくれたと思ってます」
 

 

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普段は優しくソフトな印象のSEITOさんだが、パーフォーマンスで見せるスイッチが入ったように、熱い言葉を語ってくれた。ブレイキンで得られるのは“やればできる”という自己肯定感。年齢や身体能力の差なんて関係ない。やるか、やらないか。
   
「始めるのに年齢も才能も関係ないです。自分の手足の長さ、体格に合ったスタイルを見つければ、それが“自分だけのダンス”になる。やり続けてれば、“これだ!”って日が来ます。ブレイキンをやってると、自分にしかできない何かがあるって思える。それが自信に繋がるし、人生のいろんな局面で支えになると思いますよ」
  
最強は、ストリートからしか生まれない。これがRed Bull BC Oneのテーマだ。SEITOさんの言葉から滲み出るのも、ストリートで培われた生きたカルチャーの強さ。型にハマらず、自分だけのスタイルで戦う。それが、ブレイキン。Red Bull BC Oneで熱狂し、ブレイキンというカルチャーに触れてほしい。そして、いつかあなたのムーブが、誰かの心を動かす日が来るかもしれない。
  
  
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