近年、インドアサイクリングは大きな進歩を遂げており、高機能なターボトレーナーやZwift(ズイフト)のようなアプリの登場がそのあり方を変容させている。
アマチュアとプロフェッショナルの両方からアウトドアサイクリングの優秀で現実的な代替手段として重宝されているインドアサイクリングは、楽しみながら取り組めるものへ進化している。
天候が悪い時や時間が限られている時、そして一般道での屋外ライディングにつきものの不安定要素に振り回されずにトレーニングに取り組みたい時にインドアサイクリングは最適なのだ。
Zwiftとは?
現在は様々なバーチャルトレーニングアプリが存在しているが、その中でもZwiftは突出した知名度を誇っている。
2014年に登場したこのアプリは、シンプルなオンライントレーニング用プラットフォームから世界中のサイクリストたちとソーシャルイベントに参加できる多様なバーチャルワールド(架空の島Watopiaやロンドンをはじめとする現実世界の大都市が存在する)へ成長している。
自宅のリビングルームで要求度の高いレースで自分の限界を試したり、過酷なワークアウトセッションを選択したり、アルプ・デュエズなどのアイコニックなヒルクライムに挑んだり、バーチャルワールドの中でのんびりとライディングを楽しんだりできるようになっているのだ。
Zwiftの仕組みは?
Zwiftはインドアサイクリングで使用されるあらゆるセンサー(ベーシックなスピード&ケイデンスセンサーやスマートトレーナー)からリアルタイムでデータを取り出し、そのデータをバーチャルワールド内の自分のアバターのペダル出力に反映する。
自分がハードにペダリングすればアバターもハードにペダリングし、ペダリングを停止すればアバターも停止するのだ。
Zwiftがその真価を発揮するのは、スマートターボトレーナーと組み合わせた時だ。ヒルクライム区間に入るとターボトレーナーの抵抗が強くなるなど、バーチャルワールドの勾配に応じて難易度が変化するため、没入感にリアリズムも付加される。
Zwiftの始め方は?
Zwiftは簡単に始められるが、幾多のバーチャルワールドを巡る前に揃えておくアイテムがいくつかある。何よりも先に対応デバイス(最新のスマートフォン / タブレット / コンピューター / スマートTV)にZwiftアプリをダウンロードする必要がある。
月額メンバーシップは1,500円だが、先に7日間の無償トライアルを利用することも可能だ。尚、契約期間はないのでいつでも自由に解約できる。
アプリのダウンロードが済んだら、バイクとターボトレーナーを揃えよう。バイクの互換性はターボトレーナー次第なので、ターボトレーナーを探す時は愛車との互換性をチェックしよう。インドアトレーニングのためにわざわざ新車を購入するのは避けたいはずだ…。
Zwiftに最適なターボトレーナーは?
ターボトレーナーには、1万円でお釣りがくるエントリーモデルから40万円を超えるハイエンドモデルまで存在するが、想定している使用頻度によって選ぶべきモデルが変わってくる。
シリアスなサイクリストなら出費を正当化できるかもしれないが、たまにバーチャルライドを楽しみたいウィークエンドサイクリストならより安価なセットアップで十分だ。
また、ターボトレーナーにはバイクのリアホイールを取り外したあとフレームを挟んで固定するダイレクトドライブ式と、タイヤドライブ式の2種類が存在する。
ダイレクトドライブ式はバーチャルワールドのコースに応じて抵抗力がダイナミックに変化するので、Zwiftのメリットを引き出しやすい。一方、タイヤドライブ式は安価なので、たまにインドアサイクリングを楽しみたい人に適している。
最安価のセットアップは?
高額をつぎ込む前に、エントリーレベルのタイヤドライブ式ターボトレーナーでZwiftが自分に合っているかどうかを判断するのはグッドアイディアだ。
安価なターボトレーナーにBluetooth / ANT+対応スピードケイデンスセンサーを取り付ければ準備完了だ。あとはZwiftがスピードとケイデンスを元に出力ワット数を算出し、バーチャルワールドでのペダルストロークに反映させていく。
やや高額だが、パワーメーター付きタイヤドライブ式ターボトレーナーならZwiftがコースの傾斜に合わせて自動的に抵抗力を調整するのでライディングのリアルさが増す。
ベストセットアップは?
リアルで没入感の高いZwiftエクスペリエンスを求めるのなら、ダイレクトドライブ式スマートターボトレーナーが必要だ。
パワーメーターを内蔵し、Bluetooth / ANT対応デバイスへ接続できるこのタイプなら、Zwiftで抵抗をコントロールできるようになる。Zwiftでヒルクライム区間に差し掛かれば、ターボトレーナーの抵抗が強くなっていく。そのリアルさに驚くはずだ。
ダイレクトドライブ式ターボトレーナーはバイクとトレーナーが強固に接続されるのでリアルなペダリング感覚が得られる。
また、ドライブトレインが直接ターボトレーナーに接続されるのでタイヤドライブ式のようなリアタイヤの磨耗を気にする必要もないが、バーチャルライドのたびにリアタイヤを外す必要がある。
予算が潤沢なら、新車1台に匹敵する価格のハイエンドなダイレクトドライブ式スマートトレーナーを手に入れても良いだろう。インドアトレーニングセッションで最大限の効果を得たいサイクリストには適切な投資と言える。
しかし、究極のセットアップに欠かせないのは、Wahoo / Stages / SRM / Tacx / WattBikeなどから販売されているインドアトレーニング専用バイクだ。
また、どのようなセットアップを選ぶにせよ、扇風機に予算を割く価値はあると言っておこう。屋内でペダリングすればあっという間に身体が熱くなってしまうが、一般的なオフィス用卓上扇風機があれば “オーバーヒート” を予防する助けになる。
Zwiftの活用方法
ターボトレーナーとバイクのセットアップが完了したら、あとはZwiftアプリを立ち上げて、世界中のユーザーと一緒にバーチャルライドに繰り出すだけだ。
Zwiftにはソーシャルイベントや定期開催レース、タイムトライアルなど様々なライディングオプションが用意されており、ルーシー・チャールズ=バークレーやトム・ピドコックなどのプロライダーたちに出会える確率も高い。
また、このようなオプションは数百人、数千人のサイクリストたちと交流する絶好の機会になる。知り合ったサイクリストたちがWatopiaをはじめとするZwift内に存在する無数のバーチャルワールドを案内してくれるはずだ。
iOS / Android用コンパニオンアプリは、イベントリストが確認できるので良い出発点になる。イベントのレベルや種類での絞り込み検索できるようになっており、参加したいイベントを見つけて選択すればイベント開始に合わせて通知を受け取れる。
リラックスしたライディングを楽しみたいなら、距離や標高で絞り込んでルートを選択したあと、好きなペースでライディングすれば良い。ルートはいつでも変更可能で、複数のバーチャルコースを探索できる。
コース上にはスプリント区間も存在し、山岳コースで最速タイムを記録したライダーにはKOM(King of the Mountains:山岳王)またはQOM(Queen of the Mountains:山岳女王)の称号と特別ジャージが与えられる。
バーチャルコースはWatopiaがデフォルトだ。Watopiaは平坦な区間から急峻なヒルクライム区間までが用意されている架空の島だ。
Watopiaでは物足りないなら、ロンドンやインスブルック、ニューヨーク、リッチモンド、ハロゲート、ボローニャを再現したコースや、架空の市街地コースCrit Cityでのバーチャルライディングも楽しもう。Watopia以外のコースは月替わりで、ボローニャとCrit Cityはイベント専用になっている。