© Kazuki Miyamae
ランニング

青学駅伝式「新しい環境」の乗り越え方! 新生活を迎えるあなたへ

新シーズンの幕開け。新入生、新社会人の中には急な環境の変化にとまどう人も多いはず。どうすれば早く馴染めるのか? 青学駅伝を通じて学生を20年以上育成してきたプロ、原監督に教えてもらおう。
Written by Keisuke Honda/ Edited by Hisanori Kato
読み終わるまで:6分Published on
原 晋(はら・すすむ)
- profile - 青山学院大学陸上競技部 長距離ブロック監督。中京大学卒業後、中国電力で競技を続けたのち現役を引退。2004年に青学の監督に就任し、チームを箱根駅伝優勝へと導く。競技力向上とランニング文化の発信の両面で活動している。
 

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01

最初の一歩でつく差は大きい

新しい環境がスタートして、最初にぶつかりやすい壁。それは今までと異なる組織や文化の中で、自分らしさが発揮できずモヤモヤしてしまうこと。なぜそうなるのか? 原監督、教えてください!
「環境が変わった直後は視界が狭くなりやすく、物事の優先順序をうまくつけられないケースが増えるんです」
慣れない環境下だと、人はどうしても目の前の作業を追いがち。そうすると本来はすぐやらないといけないことが抜け落ちたり、後回しにしてしまうような状況が起きやすくなる。
周りはうまくやっているのに、なんで自分だけ? こんなはずじゃ......。気分上々で迎えた新生活は、プレッシャーを抱える日々にずるずると転落。なかなか出ない結果に焦りは募る一方で、早く挽回しなきゃと気持ちが先走って空回りしてしまう。
そんな負のループは誰だって避けたい! 好調なスタートを切るために、なにをすればいいのか。
「最初の1ヶ月で、自分のスケジュール全体をしっかりと把握する習慣をつけましょう。その次に、スケジュールに沿って物事の優先順序をつける。今集中すべきことがはっきりすると時間の管理がしやすくなり、生活に良いリズムが生まれていきます」

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青学駅伝の歴史には、入部1年足らずで箱根の大舞台に立ち、大事な区を任されて高いパフォーマンスを発揮する学生が何人もいる。そんな彼らの活躍も、原監督の教えがあるからこそ。まずはスケジュール全体を把握すること。ここが曖昧だと、頑張り方そのものがズレていく。
02

適性と選択の見極めが成功の鍵

新生活で直面する壁はさまざま。環境が変われば、今まで通りにいかないのは当たり前。むしろいきなり全部うまくいったら逆に不安になる。
原監督は、自分の適性と合う選択をすることで事前に避けられる壁があると言う。
「そもそもの話で、適性があるフィールドでの努力と、適性がないフィールドでの努力。どちらが実りやすいかは言うまでもありません」
箱根駅伝には“山の神”と呼ばれる、山上りの5区で圧倒的な強さを見せつけた歴代の猛者たちがいる。彼らに憧れて5区を同じように走ろうとしても、山上りの適性がなければ元も子もない。
適性の話題と重ねるように、原監督は自身のこれまでを振り返る。
「大学卒業後に入社した電力会社はインフラを支える重要な役割を担うため、守りや安全を当然重視します。一方で私はというと、昔も今も前例のないことに挑戦する“型破りのマインド”。まさに水と油の関係性ですよね(笑)。それもあって思うようにいかないことは多かった気がします」

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電力会社に約10年間勤務したあとに選んだのは、青学駅伝監督への道。実は歴史や教養を重んじる青山学院大学にも、かつての勤務先に似た守りの文化が残っていたのだそう。
「土壌ができていない中で、革新的なアイディアを実行するのは大変だしエネルギーが必要。それを身をもって経験してきた私が言えることは、こんな苦労をしたくないなら自分の適性と合う選択をしましょう、ですかね(笑)」
青学駅伝を強豪校へと導いた功績を冗談まじりに語ってくれた原監督。その裏側には的確なアドバイスが隠れている。挑戦心を持つのはすばらしいけれど、成功させたいと強く願うなら適性と選択の見極めが重要。これを覚えておけば、新しいことにチャレンジするタイミングで役立つはず!
03

能力が伸びる人はなにが違うのか?

新入生、新社会人を迎え入れる春の時期。青学駅伝でも新入部員の姿を見るようになる。全国各地の逸材で、ポテンシャルがとても高い期待のルーキーたち。けれど、そんな彼らでも“能力が伸びやすい人”と“能力が伸びにくい人”に分けられるという。一体なにが違うのか?
「能力の伸びやすさは、定めた目標から逆算してスケジュールを考えられるかどうかにあります」
能力の伸びやすさと目標から逆算してスケジュールを考えることがなぜ関係するのかについて、原監督は次のように例える。
「プラモデルには組み立て方をまとめた説明書がついています。と言っても、完成形は想像がつくので、説明書を読んでも読まなくても組み立てることはできますよね。ではなぜわざわざ読むのか? 答えは、プロセスがわかると早く正確に組み上がるし精度も高くなるからです」

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目標から逆算でスケジュールを考える。言い換えれば、目標を達成するために必要なことを記した独自のプランを作ること。そこに記すプロセスが明白なほど思い描く未来に近づける。
「ひとつ注意したいのは、能力を伸ばしたいからといってストイックになりすぎてはダメ。メリハリが大切です。うちの部員たちも普段はハードなトレーニングをしていますけど、プライベートでは恋愛や趣味など自分のモチベーションにつながる時間をちゃんと設けていますから」
立てた目標からスケジュールを逆算し、目標達成のために必要なプロセスを埋めていく。そうして組み上げたプランを、息抜きも入れながら最後までやり切る。地味に見えるかもしれないけれど、結局こういう積み重ねがいちばん強い。
04

うまくいかないときこそポジティブに

新生活がスタートしてからしばらく経ち、目標に向かって順調に突き進んでいたその途中。またしてもぶ厚い壁が行く手を阻んでくる。そんなとき、「〇〇のせいでうまくいかなかった」や、「〇〇がいたからできなかった」と、口にしたくなる気持ちはよくわかる。でも、実はそれって悪い癖。
「壁にぶちあたったとき、できない理由が先行してしまう人は学生に限らずとても多い。でもそれって結局言い訳なんですよ。壁をちゃんと乗り越えられる人は、できない理由ではなく、できるようになるまでの理論を考えていますから」

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厳しいように聞こえるかもしれないが、調子が出なくて思った通りにいかない、なんてことは誰にでも起きること。青学駅伝のメンバーにしたって、常にベストコンディションで大会に挑めているわけじゃない。体調が優れないときもあれば、怪我や故障を負ってしまい、実力を発揮できない期間だってある。それでも、自ら掲げた高い目標に向かって日々努力し続けたから今の評価がある。
原監督は学生に対して、わざと具体的なアドバイスを送らない。なぜなら指導者の役割は、やり方を1から10まで教えることではなく、自ら考える力を育てることにあるという強い信念を持っているから。次はあれを試して、こうできるようになれば、もっとうまくできるはず! いつだって思考はポジティブに。今日の失敗を1つずつ潰していった先に、輝かしい結果が待っている。