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フィットネス

【背屈運動とは?】ランニングを向上させる足首の動作を学ぶ

足首をしっかりと動かして着地の衝撃を減らし、次の一歩を大きく踏み出せるようになれば、自己ベストの大幅な更新が期待できる!
Written by Risqat Fabunmi-Alade
読み終わるまで:6分最終更新日:
足首の背屈(はいくつ)運動とは、正式には距腿関節(きょたいかんせつ / 別名:足関節)背屈運動と呼ばれる。著名な生物学者が新種の動物を紹介する時に使うような厳かな声をイメージして、この言葉を発してみよう。それくらいこの運動は重要なのだ。
簡単に説明すれば、背屈運動とは「足首を動かし、つま先を上方に持ち上げてすねに近づけ、足の甲と脚の角度を小さくする動き」を意味する。専門家はアスリートの背屈運動可動域について、最低でも15°は必要だとしているが、この角度の実現は簡単ではない。
しかし、背屈運動は、ランニングのパフォーマンスを向上させつつ、疲労を最低限に抑えるという意味で、最も重要なランニングテクニックと言える。これを踏まえ、今回はスプリントコーチ / パーソナルトレーナーのリスカット・ファブンニ=アラデに背屈運動について細かく話を聞くことにした。
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背屈運動とは?

背屈運動は、前腓骨筋(足の甲を持ち上げる時に動くすねの筋肉)を動かす運動です。
この比較的シンプルな運動は、ランニングテクニックの向上に多大な効果をもたらしますが、同時にアスリートに複雑な問題をもたらす可能性もあります。なぜなら、ランニング中、地面に触れるのは足ですが、足と足首への衝撃は運動連鎖となって膝、臀部、腰などにも影響を与えるからです。
背屈運動は低速でのジョギングではそこまで重要には思えないかもしれませんが、パワーをさらに加え、スピードがスプリントに近づいていくほど重要性が増加します。
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なぜ重要なのか?

正しい背屈運動をしていれば、正しい位置に足が置けるようになるので、怪我を防げるようになります。正しい背屈運動で理想的な位置に着地すれば、着地の衝撃を吸収しつつ、次の一歩を大きく踏み出すための筋肉を収縮させることもできます。
また、正しい背屈運動は接地時間を減らすので、より速く、より効果的なランニングができるようになります。正しい背屈運動ができていない人は、不安定な足首でつま先から着地するので、パワーを正しく伝達できません。これは、シンスプリント(腓骨過労性骨膜炎)のような怪我に繋がります。
さらに、正しい背屈運動ができていないと、ポステリオールチェーン筋群(体の背部の筋肉群)が生み出すパワーも上手く活用できなくなります。
ふくらはぎ(下腿三頭筋)のような大きくて強い筋肉の運動とは異なり、背屈運動は日常的な筋肉運動ではありませんし、エントリーレベルのランナーは意識できていません。ですので、中級・上級のランナーやスプリンターを目指すためには、背屈運動をしっかりと意識する必要があります。
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背屈運動ができない原因

背屈運動が正しくできていない場合は、いくつかの原因が考えられます。簡単に修正できる一般的な原因は、下腿(膝から下)のポステリオールチェン筋群の柔軟性の低さです。この部分の筋肉群が硬いと、背屈運動の可動域が狭くなります。
もうひとつの原因は、足首の関節の柔軟性の低さです。これは、間接包(関節を包む筋)や瘢痕(はんこん:傷跡)組織の硬化、足首の関節の癒着などによって起きます。また、捻挫など、足首周りの過去の怪我によって引き起こされる場合もあります。
組織や柔軟性に問題がない場合は、単純に前脛骨筋が弱いことも原因として考えられます。この部位は、意識していない、あるいは正しいテクニックを使っていないと十分に動かされないので、結果的にすぐに疲労してしまうのです。
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背屈運動の確認

背屈運動ができているかどうかを確認する方法はいくつか存在します。下のチェック項目を参考にして確認してみましょう。
  • ランニング以外のエクササイズ:スクワットやランジも、その影響が確認できる基本運動です。背屈運動が正しく行われていない場合は、これらの運動も上手く行えないはずです。
  • 臀部の連動:臀部の筋肉運動と背屈運動には相関関係があります。これは非常に重要なポイントです。というのも、臀部の筋肉がしっかりと動いていないと、ハムストリングの断裂(いわゆる肉離れ)のような他の怪我に結びつくからです。
  • すねの痛み:シンスプリントはランナーの間で良く知られている怪我で、あらゆるランナーにとって最悪の悪夢と言えます。
  • 膝の怪我:膝だけで衝撃を吸収していると、足のオーバープロネーションや膝の外反(X脚)が長期的な膝の故障に繋がる可能性があります。
  • 足底筋膜のトラブル:足首がしっかりと動いていないと、足底筋膜(足の指の付け根からかかとまで足の裏に貼っている膜)に対してダイレクトに悪影響を与える可能性があります。
  • 視覚的な確認:経験豊かなコーチに自分のテクニックを見てもらうか、自分のランニングを映像や写真に収めて振り返り、自分の足がどのように接地しているかを確認してみましょう。また、大手ランニングシューズストアやトレーニング施設で歩行分析をしてもらうのも良いでしょう。
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背屈運動をマスターする方法

まずは、ランニング中に背屈運動を意識して、できる限り動かすようにしましょう。最初は慣れないかもしれませんが、自然に動かせるようになるまでトライしてみましょう。
背屈運動の可動域は自力で治すことができます。可動域の狭さの原因が筋肉組織にあるなら、ストレッチをして、ふくらはぎの柔軟性を高めればOKです。
また、フォームローラーやトリガーポイントのマッサージボール、あるいは手技のセルフマッサージで膝から下の筋肉をほぐせば可動性を高めることができるので、背屈運動の可動域の狭さや不足によって引き起こされる問題を解消する助けになるでしょう。
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背屈運動をマスターするためのエクササイズ

片脚立ちアイソメトリックエクササイズ

片膝を腹部方向に上げて片脚で立ちます。膝を尻(腰)の高さまで上げたら、そのすねを地面に対して垂直にします。
上げてある脚のつま先をすね側に引き寄せて、30秒間キープしましょう(前腓骨筋に刺激が入ります)。両腕はランニングフォームを取り、軸足側の尻にも力を入れます。脚を入れ替えて1セットです。3セット繰り返しましょう。

レジスタンスバンドを使ったエクササイズ

まず、テーブルの脚やポールなどにレジスタンスバンドを結んでループ状にします。
次に片脚を伸ばして床に座り、レジスタンスバンドをつま先に通します。座っている位置をレジスタンスバンドから遠ざけていき、適度な負荷がかかるようにします。ここまでできたら、つま先を前後に動かす運動を20秒間で12往復繰り返します。これを1セットとして、2~3セット繰り返します。
Resistance bands

レジスタンスバンドは様々な使い方できるので揃えておきたい

© Kelly Sikkema; Unsplash

ヒールウォーク

かかとで立ち、つま先をすねに向けて持ち上げます。膝が固まらないように注意してください。この状態をキープしながら、両腕をランニング中と同じように振りながら20m歩行します。これを3セット繰り返します。
すねに多少の痛みを感じるはずですが、シンスプリントではありません。前腓骨筋が正しく刺激されている証拠ですので安心してください。
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