Cyclists ride in a line
© Jarno Schurgers/Red Bull Content Pool
サイクリング

ロードレースの重要戦略 “リードアウト” とは?

ゴール直前のスプリント勝負を制するために用いられているユニークなチーム戦略を解説する。
Written by Joseph Caron Dawe
読み終わるまで:5分Published on
ロードレースのゴール直前でひとりのライダーが集団から飛び出して勝利するシーンを観たことがある人は、ロングライドのあとでなぜあんなに激しいスプリントができるのか不思議に思ったはずだ。
そこで今回は、ゴール前スプリント専用の戦略《リードアウト》を取り上げる。
この戦略がスプリンターのエナジー温存やここぞのタイミングでのアタックにどう活かされているのかを解説しながら、我々アマチュアライダーのライディング(ゴール直前のスプリント以外にも!)に応用する方法を探っていこう。
ドラフティングで体力を温存する

ドラフティングで体力を温存する

© Graeme Murray/ Red Bull Content Pool

リードアウトとは?

リードアウトとは、チームのスプリンターをベストコンディションの状態でゴール前まで運び、そこで一気にその才能《勝利へ向かう爆発的スプリント》を発揮してもらうためのチーム戦略だ。
グランツールやそれよりも短距離のロードレースの特定のステージ、またスプリンターに有利なパルクール(ルート)が設定されているワンデイレースでも確認できるこの戦略は極めてテクニカルだ。
簡単に説明しよう。
リードアウトは車列状態(リードアウトトレイン)から始まる。チームはフォーメーションを組み、先頭を入れ替えながらライディングを続ける。ライダーにはそれぞれロールが与えられている。
そしてトレインでスプリンターを守り続けたあと、トレインを解体し、最後に残ったリードアウトライダー(リードアウトマン)がタイミングを見てスプリンターをラストバトルへ送り込む。これがリードアウトだ。
スプリンターを風から守り、できる限り長くドラフティングで引くことが、リードアウトトレインの2つの目的のひとつ、 “スプリンターの体力温存” に繋がる。
最もハードなレースでも、チームメイトに守られているスプリンターは最大30%ものエナジーを温存できる。この違いは実に大きく、レースの行方を決める時もある。
リードアウトトレインのもうひとつの目的は “スプリンターを正しいポジションにつかせる” だ。
そのためにチームは肉体を酷使する必要があり、さらにはスプリンターに最適なギャップとポジションを見つけながら、コンマ数秒単位で起きる集団内のアクションを細かく追っていく必要もある。
リードアウトトレインは非常にユニークで複雑なプロセスなのだ。
リードアウトは高度なチームプレイ

リードアウトは高度なチームプレイ

© Ewald Sadie

トレイン解体のタイミング

プロレースのゴールが近づくと集団のペースが急上昇し、緊張感の高まりと共に時速60kmまで達する。このタイミングで各チームのリードアウトは激しくポジションを競い合うようになる。
ゴールまで残り500〜700mほどになると、各チームのライダー2〜3人が集団の先頭に出て、ハイテンポのペダリングでライバルチームのアタックを抑えながら、後方に控える味方のリードアウトマンとスプリンターのポジションを守る。
彼らはひとりずつ後方へ下がっていくが、多くの場合、下がるタイミング(距離)は事前に決められている。
リードアウトでは各ライダーがそれぞれ異なるロールを担う

リードアウトでは各ライダーがそれぞれ異なるロールを担う

© Ydwer van der Heide / Red Bull Content Pool

残り500mを切ると、最後のリードアウトマンが先頭を引き継ぎ、次の2つのうちのどちらかを行う。
ひとつは「全力スプリントが始まるまでペースを上げ続ける」で、もうひとつは「超高速で疾走するカオス状態の集団の中でスプリンターをパーフェクトなポジションへ運ぶ」だ。
あとはスプリンターの仕事だ。スプリンターは温存していたパワーを解放してスプリントを開始するタイミングを自分で判断する。通常、スプリントは残り200〜300mでスタートする。
スプリンターはリードアウトマンの背後から飛び出すか、ライバルスプリンターの背後にぴったりとつき最後の最後での飛び出しを狙う。
下の動画では、残り150mでエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア / ドゥクーニンク・クイックステップ)が、リードアウトマンとして素晴らしい仕事をしたミケル・モルコフの背後から飛び出し、RideLondon 2019を制する様子が確認できる。

リードアウトには膨大なパワーが必要

フィニッシュ直前の集団のスピードは時速60km/hに達するため、トレインを崩したあと、前方の2〜3人のライダーは500w超のパワーを2〜3分間出力する。この時点ですでに膨大なパワーだ。
最後を担うリードアウトマンは事実上スプリントをしているのと同じで、出力が1000wに達する時もある。
しかも、信じられないことに、彼らは実際のスプリンターよりも長時間出力を持続している。リードアウトマンの多くはこの高出力を30秒も持続できるのだ。これはスプリンターにはできない芸当だ。
ワールドクラスのスプリンターは2つの能力に秀でている。ひとつは、時速65km超からさらに加速できる能力で、もうひとつは最大約1500wに達するピークパワーの大きさだ。
Tour Down Under 2018第6ステージを超絶スプリントで制したアンドレ・グライペル1903wを記録した。

アマチュアライダーがリードアウトから学べること

率直に言えば、プロ並みのパワーを出力できるアマチュアライダーはいない。しかし、それでも我々がリードアウトから得られるメリットはある。
他のライダーの背後で風をよけながらライディングすれば、任意のタイミングでエナジーを温存できる。プロのように30%も温存できる可能性は低いが、違いを生めるだけは温存できるだろう。レースなら戦況を確認する余裕が得られるはずだ。
ドラフティングには守るべきルールも存在する

ドラフティングには守るべきルールも存在する

© Patrik Lundin

最後になるが、他のライダーたちに接近してライディングする時に守るべきルールがいくつか存在する。
最も重要なのは、目の前のホイールの責任を負うのは自分だということだ(自分のフロントホイールを前走者のリアホイールにオーバーラップさせるのはNG)。また、ライディング中は常に前方を見て、何が起きているのかを確認するようにしよう。不規則なブレーキも禁物だ。