【Red Bull Rampage 2019】に出場したエミール・ヨハンソン
© Adrian Berggren/Red Bull Content Pool
MTB
【Red Bull Rampage 2023】最恐MTBフリーライドイベントの基本を学ぶ
Red Bull RampageをチェックすればMTBライドの真の魅力を知ることができる。2001年から続くビッグマウンテン・フリーライドイベントがスペシャルな理由を紹介しよう。
Written by Ric McLaughlin and Hanna Jonsson
読み終わるまで:12分Published on
選ばれし世界最高のMTBライダーたちが【Red Bull Rampage】のドロップへ向かう “運命の瞬間” が刻一刻と迫っている。
1年の最重要イベントである【Red Bull Rampage】は、あらゆるMTBプロライダーたちが参戦を熱望し、すべてのMTBファンが固唾を呑んで見守るコンペだ。
今回は “最恐MTBフリーライドイベント” との呼び声も高い【Red Bull Rampage】の概要やコンペの仕組みを紹介するとともに、2023年10月13日(日本時間:10月14日)に開催されるこのスペシャルイベントの基本情報をまとめた。
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【Red Bull Rampage】とは?

簡単に説明すると、【Red Bull Rampage】はMTBライダーたちがラインを各自で選択し、切り立った岩だらけのマウンテンサイドを無傷で駆け下りようとするイベントだ。
1分【Red Bull Rampage】基本情報
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【Red Bull Rampage】はレースではないが、スタート / フィニッシュラインが存在する。【Red Bull Rampage】に参戦する各ライダーはライン造成を手伝うクルー2名の帯同が認められており、数日をかけてスタートラインとフィニッシュラインを結ぶクリエイティブでスリリングなラインを造成する。
44分Red Bull RampageGet a shot of adrenaline as you look back at the very best moments of Red Bull Rampage through the years.
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ファイナルでは、ライン攻略のために2本のランを行うチャンスが各ライダーに与えられる。
現在の【Red Bull Rampage】は初期に比べて格段の進歩を遂げており、ライダーたちがラインを駆け下りながらバックフリップなどの高難度トリックをメイクするシーンも確認できる。
ライダーたちのライディングがどれだけクリエイティブなのかを審査するのはMTBプロライダーたちで構成されたジャッジパネルで、スコアを受け取ったライダーたちは最高のライディングができたと信じながら最終結果を待つ。端的に言って、【Red Bull Rampage】は世界のアクションスポーツの中で最もスリリングなイベントだ。
11分Every winning run, everTake a look back at every outrageous winning run in Red Bull Rampage history.
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【Red Bull Rampage】が画期的な理由

【Red Bull Rampage】は、1990年代後半に誕生した先進的なMTBフリーライド・ムーブメントの最前線に立つイベントとして2001年に誕生した。
フリーライドで重要なのはコースを駆け抜けるスピードやタイムではない。重要なのは、一見するとライディング不可能にも見えるトレイルをライディングしながらジャンプやドロップの限界を押し上げ、それまでよりもさらにビッグなギャップを飛び越えることなのだ。
『New World Disorder』など画期的な映像作品シリーズも後押しとなり、ライダーたちのイマジネーションはさらに広がっていった。
【Red Bull Rampage】が目指していたのは、フリーライドを森や高山ではない場所へ持ち出して世間の認知度を向上させることだった。そしてこのイベントはフリーライドの可能性を証明し、様々な世代のライダーたちに既存の枠に囚われない発想を促し、より遠くへ飛び、ライディングの限界を押し上げるためのインスピレーションを授けてきた。今年が17回目の開催になる。
2分The evolution of Red Bull RampageDarren "Bearclaw" Berrecloth breaks down mountain biking's most prestigious competition: Rampage.
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【Red Bull Rampage】トリビア
第1回【Red Bull Rampage】のウィナーは?
第1回【Red Bull Rampage】は2001年に開催され、カナダ出身でフリーライドの先駆者であるウェイド・シモンズが優勝した。
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MTBファン以外も楽しめるイベント

【Red Bull Rampage】はハードコアなMTBファン専用ではなく、スポーツジャンルの垣根を越えたイベントだ。
【Red Bull Rampage】は究極のアクションスポーツイベントで、あらゆる観客のアドレナリンを刺激する。世界トップレベルのライダーたちが曲がりくねったリスキーな地形を駆け下りながら、これまで見たこともないようなビッグトリックをメイクするのだ。
現地に詰めかけた熱いファンたち
現地に詰めかけた熱いファンたち© Christian Pondella/Red Bull Content Pool
モトクロス、スキー、スケートボード、サッカーを問わず、私たちはトリックを見るのが好きだ。一般人が想像さえできないようなことをアスリートたちがやってのけるのを目にすれば、そこにスリルが生まれる。アスリートたちのパフォーマンスを目の当たりにすれば、私たちは興奮を覚え、思わず身を前に乗り出してしまう。
【Red Bull Rampage】に最も近いスポーツイベントを挙げるとするなら、スノースポーツのFreeride World Tourだろう。
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【Red Bull Rampage】とスロープスタイルイベントの違い

木製のジャンプ台や巨大ドロップなどの人工フィーチャーを満載した専用コースでライダーたちがトリックを披露するMTBイベントを見たことがある人は多いかもしれない。このような形式はスロープスタイルと呼ばれている。
MTBに詳しくない人にはスロープスタイルとフリーライドは非常に似ているように見えるが、実はこの2つのカテゴリーは大いに異なる。
スロープスタイルではフリーライドのような危険な自然地形はあまり使用されない。木製のジャンプ台やビッグドロップなどは巨大で難易度が高いが、地形はスムーズでライディングしやすい。
また、スロープスタイルではかなり小型のMTBが使用されており、サスペンションも少なく、一部のライダーはリアサスペンションがないハードテイルバイクを使用しているほどだ。
スロープスタイル用MTBはエアでスピンやキックをメイクしやすくするために軽量性が重視されており、優れた回転とパンク防止のために高い空気圧のスリックタイヤが備えられている。
【Red Bull Rampage】でもスロープスタイルと似たトリックが確認されるが、それらは世界最高難度の地形でメイクされている。【Red Bull Rampage】は岩が多い過酷な砂漠地帯を舞台に選んでおり、マウンテンサイドは崖だらけで露出度が高く(隠れている部分が少ない地形)、ほぼ垂直に近いシュート(崖の間を抜ける細いライン)となっている。さらに地面もルーズグリップは極めて低い
スムーズで人工的なスロープスタイルのコース
スムーズで人工的なスロープスタイルのコース© Scott Serfas/Red Bull Content Pool
自然そのものの荒々しい地形を利用した【Red Bull Rampage】のベニュー
自然そのものの荒々しい地形を利用した【Red Bull Rampage】のベニュー© Peter Morning/Red Bull Content Pool
ライダーたちはこのような地形でレースをする代わりに、自分だけのラインを選択・造成する。ライダー同士で協力し合う機会もあるが、彼らのラインはどれも個性豊かだ。使用されるバイクは頑丈で、サスペンショングリップ力に優れた大型タイヤを備えている。
過去の【Red Bull Rampage】では、オーガナイザーたちが人工フィーチャー(巨大なキャニオンジャンプなど)をある程度用意していたことが、近年はフリーライドのルーツに原点回帰しており、自然の地形を活かしたライン造成が重要視されている。
【Red Bull Rampage】トリビア
【Red Bull Rampage】で4回の優勝を記録したライダーはひとりだけ
ブランドン・セメナックは2008年 / 2016年 / 2019年 / 2021年に優勝。【Red Bull Rampage】史上初の2連覇を達成したライダーでもある。
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開催地

【Red Bull Rampage】のオーガナイザーはこのイベントを常にフレッシュに保とうとしている。そのため、このイベントはユタ州ヴァージンにある複数のマウンテンサイドで開催されてきた。
ユタ州ヴァージンはMTBフリーライドのメッカ
ユタ州ヴァージンはMTBフリーライドのメッカ© Garth Milan/Red Bull Content Pool
前回の2022年は、2008年から2013年まで使用されていたロケーションに戻って開催された。2023年も2008年、2010年、2012年、2013年、そして2022年に使用されたこのロケーションが引き続き使用される予定だ。
【Red Bull Rampage 2022】のプラクティスでラインを駆け下りるシモン・ゴジェックのライディングをチェック!
2分Red Bull Rampage 2022:コースプレビュー世界最恐MTBイベント【Red Bull Rampage 2022】のシモン・ゴジェックのラインをチェック!
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ライン造成チームが必要な理由

ライン造成作業に精を出すエミール・ヨハンソン© Hanna Jonsson/Red Bull Content Pool
冒頭でも述べた通り、参加ライダーたちは自ら選定・造成したラインをライディングしなければならない。ライン造成は過酷で時間を要する作業だ。そのため、ライダー1名につきライン造成クルー2名を帯同させることが認められている。彼らは一丸となって岩を移動させたり土を盛ったりしながらMTBシーンで最もワイルドなラインを作り上げていく。
ライダーとライン造成クルーにはライン造成と掘削作業用に4日間が与えられている。そのあとに全員に休息日が与えられる。休息日が終わると、各ライダーはラインの練習走行用に4日間が与えられるが、その4日間で造成作業を続けることも許可されている。
時間を節約して特定のフィーチャーを大きくするために複数のライダーと造成チームが協力する場合もある。
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ラインの場所と内容

所定のエリア内ならライダーと造成クルーはどのようなものでも作ることができる。ただし、彼らが使用できるのはショベルやつるはしなどの手工具のみで、重機の使用は認められていない。また、外部から持ち込んだ材料の使用も認められていない。
各ライダーは支給されるサンドバッグ(土嚢)75個と自然地形だけを用いて自分だけのラインを作り上げていく。木製のフィーチャーは現在認められていない。
【Red Bull Rampage 2022】でライン造成に取り組むライダーとクルーたちの舞台裏をチェック!
2分Red Bull Rampage:ライン造成【Red Bull Rampage】のラインはどのように造成されているのだろうか? ライダーと造成チームの作業プロセスと舞台裏をチェック!(英語音声)
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ジャッジ

先に説明した通り、ファイナルではスタート / フィニッシュラインが設けられる。ライダーたちはスタートからフィニッシュまでの間を自由にライディングできるが、スタート地点を離れてから3分以内にランを完了しなければならない。そのためスピードもひとつのファクターになり得る。
ファイナルでは各ライダー2本ずつランを行い、ベストスコアによって順位が決定する。基本的にライダーたちは以下の4項目の審査基準に基づいて1〜100ポイントの間でジャッジされる。
  1. ラインの難易度:より急峻でチャレンジングで難易度が高いラインほど、より多くのポイントが与えられる。
  2. トリック&スタイル:トリック、スタイルの追加、着地の成功もポイントの対象になる。
  3. 滑らかさとコントロール:よりスムーズでスピードが高く、よりアグレッシブであるほどポイントが多くなる。
  4. 大きさ:エアの滞空時間。エアの大きさと活用方法がポイントの対象になる。
5分Risk, Reward & Rampage: Elements of StyleRisk, Reward & Rampage: Elements of Style.
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ファイナルはRed Bull TVがライブ配信

ファイナルは毎年Red Bull TVがライブ配信を行なっている。2022年からはESPN / ESPN+がブロードキャストパートナーに加わり、米国限定でESPN+が独占配信しているが、日本を含むその他の国では従来通りRed Bull TVがライブ配信する。
【Red Bull Rampage 2022】のフルリプレイをRed Bull TVでチェック!
決勝戦2022年、Red Bull Rampageが戻ってきた!ユタ州南西部の険しく過酷な地形で、激しい戦いが繰り広げられる。
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ライダーたちの現地入りからファイナルまではRed Bull TVとRedBull.comに加えてRed Bull Bikeのチャンネル(YouTube / Facebook / Instagram / TikTok)でも現地直送の映像コンテンツを配信する予定だ。これらのプラットフォームをフォローして、【Red Bull Rampage 2023】の最新情報をチェック!
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歴史に刻まれてきた名場面

実際のところ、名場面は多すぎるのでリストアップは不可能だ。ほとんどすべてのランが名場面として扱われてもおかしくない魅力を備えているのが、2001年から2018年までのハイライトをまとめた記事があるので、チェックしてもらいたい。
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参加ライダー

【Red Bull Rampage 2023】では、選ばれし招待ライダーたちがライン造成とライディングに挑むことになる。2023年に関して、オーガナイザーは招待ライダーの人数を18名までに限定している。うち4名のライダーは前年2022年で上位フィニッシュを果たしたため自動的に出場権を獲得している。
残り14名は【Red Bull Rampage】での参戦経験を持つライダーたちやプロアスリートをはじめジャッジ、MTB業界のエキスパートなどで構成される運営委員会が選出したワイルドカードとなる。
また、出場権自動獲得ライダーやワイルドカードライダーが出場を辞退したときに代替出場するスタンドバイライダーも用意されている。
現在、【Red Bull Rampage 2023】への参加が決定している18名のライダーズリストは以下の通り:

出場権自動獲得ライダー

ワイルドカード

  • アドルフ・シルバ(スペイン)
  • アレックス・ヴォロコフ(カナダ)
  • ビエンヴェニード・アグアド・アルバ(スペイン)
  • ブレンダン・フェアクロー(英国)
  • キャメロン・ジンク(米国)
  • クレメンス・カウデラ(オーストリア)
  • DJ・ブラント(米国)
  • エミール・ヨハンソン(スウェーデン)
  • ジャクソン・リドル(米国)
  • カート・ソルジ(カナダ)
  • カイル・ストレート(米国)
  • タラス・ターク(米国)
  • トム・ヴァン・スティーンバーゲン(米国)

スタンドバイ

  • ジョニー・サリド(メキシコ)
  • ヘイデン・ザブロトニー(カナダ)
  • ライアン・マクナルティ(米国)
  • ディラン・スターク(米国)
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【Red Bull Rampage 2022】ハイライト

16回目の開催となった【Red Bull Rampage 2022】は期待を裏切らない内容だった。ファイナルに登場したライダー16名はクリエイティビティとスキルを見せつけるライディングで魅了し、急峻で荒々しい地形で勇気を示した。
強風のために各ライダー1本ずつのランで終わったが、ブレット・リーダーが90.66ポイントを記録して優勝した。86.33をマークしたシモン・ゴジェックが2位に続き、表彰台最後の一角となる3位はブランドン・セメナックが獲得した。
5分Red Bull Rampage 2022:トップ3
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9 シーズン · エピソード71
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