WRC
【WRC 勝田貴元】2021年フル参戦デビューから2026年の初優勝&連勝までの軌跡
日本人34年ぶりのWRC総合優勝、そしてクロアチアでの2戦連続優勝。勝田貴元が“勝てるドライバー”へ進化するまでの過程を振り返る。
01
2021年 -フル参戦初年度-
表彰台獲得で未来への手応え
2021年は、トップカテゴリーでの本格フル参戦元年だった。シーズンランキングは7位。それでも、この年の価値は数字だけでは測れない。未知のラリーを走りながら、勝田はWRCで戦うための土台を築いていった。
なかでもサファリ・ラリー・ケニアでは総合2位を獲得。自身初のトップカテゴリー表彰台であり、日本人ドライバーとしては27年ぶりのWRC表彰台となった。
Q. 2021年の感想は?
振り返れば、このケニアでの表彰台獲得は、のちに同じ舞台でWRC初優勝を遂げる勝田の未来を予感させる一戦だったのかもしれない。
02
2022年 -冷静な前進-
経験値で適応力を示した1年
2022年は、新規定Rally1ハイブリッドの初年度だった。WRCが大きな転換期を迎えるなか、勝田はケニアで2年連続の表彰台を獲得。さらに、12年ぶりに復活したラリー・ジャパンでも総合3位に入り、母国開催の舞台で表彰台に立った。
シーズンを通して安定してポイントを重ね、最終ランキングは5位。フル参戦2年目の勝田にとって、世界のトップカテゴリーで確かな存在感を示した一年だった。
Q. 2022年の感想は?
03
2023年 -速さの証明-
勝利に近づくほど見えた課題
2023年、勝田はTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT) のワークスドライバーに昇格。自身の成績だけでなく、チームのマニュファクチャラーズポイント獲得も担う立場へとステップアップした。
求められたのは単なる速さだけのみならず、ポイントを持ち帰る安定感。そんなシーズンで、勝田はラリー・フィンランドで総合3位を獲得するなど、トップタイムを刻む場面も増え、速さそのものは明らかに一段上へと進化していた。
一方で、その速さを週末全体の結果につなげ切る難しさにも直面。上位を争う力を証明しながら、勝利を狙うための次なる課題も見えた一年だった。
Q. 2023年の感想は?
04
2024年 -苦闘のシーズン-
実力と結果がすれ違う日々
2024年は、数字だけでは語れないシーズンだった。ケニアでは再び総合2位に入り、表彰台を獲得。一方、スウェーデンでは首位争いの最中にリタイア、フィンランドでも木へのヒットでデイリタイアを喫し、9月のラリー・チリは、チーム判断により欠場。
スピードはあるものの、なかなか結果につながらないラウンドが続いた。
それでも終盤、勝田は巻き返す。復帰戦となったセントラル・ヨーロピアン・ラリーでは総合4位に入り、スーパーサンデーとパワーステージをともに制して最大12点を獲得。ラリージャパンでも総合4位に入り、苦しい流れの中でも速さが消えていないことを示した。
Q. 2024年の感想は?
05
2025年 -勝てる位置へ-
攻め方をコントロールする走り方
2025年は、勝田のラリーが明確に変わった年といえる。ラリー・スウェーデンでは終盤まで優勝争いを繰り広げ、わずか3.8秒差の総合2位。さらにラリー・フィンランドでも総合2位に入り、TGR-WRT勢による1-2-3-4-5独占の一角を担う。
表彰台の数だけでなく、シーズンを通して上位争いに絡む安定感が増した一年だった。単発のトップタイムではなく、ラリーの最後まで勝負圏内に残る走り。攻めるだけではなく、リスクを管理しながら結果を持ち帰る走りへ。
勝田はこの年、WRCで勝利を争うために必要な“速さの使い方”を、より確かなものにしていった。
Q. 2025年の感想は?
06
2026年 -悲願の景色-
初優勝と連勝を記録し、歴史を動かす
2026年、勝田はついに勝った。舞台は、キャリア初表彰台を獲得したケニア。トップカテゴリー初優勝は、本人にとっての節目であると同時に、1992年の篠塚建次郎以来34年ぶりとなる日本人ドライバーのWRCトップカテゴリー優勝でもあった。
さらに、その価値を決定づけたのが次戦クロアチアだった。勝田はケニアでの勢いを一過性のものにせず、続く一戦でも勝利。勝田は単に“初優勝を果たしたドライバー”ではない。勝利を一度の歓喜で終わらせず、次のラリーでも結果を示した実力派ドライバーだ。
Q. ケニアとクロアチアで2連勝を記録した感想はいかがですか?
今年は、もちろんプッシュはしていますが、本当にうまくコントロールできているなと思います。トップタイムの数でいうと、去年や一昨年の同じ時期の方が多いんです。でも、トップ3に入るタイムの数でいうと、今年の方が多い。
つまり、トップタイムではなくても、トップと遜色ないタイムで走り続ける。それを安定させることで、最終的に上位に残り、トップを狙える位置につけられる。今はそういう戦い方をしている感覚かもしれないですね。
以前は“プッシュできそうなタイミング”なら構わずスピードを出していましたが、今年は全体の流れを見ながら、“プッシュしなければいけないタイミング”を慎重に見極めている。そこが大きく変わった部分かなと思います。
2つの勝利は、決して偶然ではない。2021年から積み上げてきた経験、苦しみ、速さ、そして勝つためのコントロール。そのすべてが結びついた結果だった。
モータースポーツは、ドライバーの力だけでは勝てない。天候、路面、マシン、タイヤ、チーム戦略。あらゆる環境が結果を左右する。その世界で、勝田貴元は6年をかけて、世界の舞台で勝つことの難しさを知り、それを乗り越えてみせた。
苦節6年目で手にした勝利。そして、続く一戦で証明した再現性。勝田貴元は今、日本のWRC史に確かな足跡を刻み、世界で勝利を争うドライバーのひとりとして、新たな章を走り始めている。