HYROXって一体なに!? 筋トレ好きライター目線の入門編

いま話題の新感覚フィットネスレース、HYROX(ハイロックス)って知ってる? 誰でも挑戦できるらしいが、一体どんなスポーツで、なぜこんなに注目を集めているのか。トレーニーならではの視点も交え、その魅力と奥深さに迫る。
Written by alex shu nissen Edit by Hisanori Kato
読み終わるまで:8分Published on
© Jake Turney / Red Bull Content Pool
▼書き手:ニッセン・アレクザンダー・シュウ
フリーランス編集者 / ライター。コロナ禍にランニングにハマり、一時期は月間300〜400kmを走る。知人が開いたパーソナルジムにて筋トレに目覚め、30歳からメンズフィジーク競技に出場。大会での入賞経験も多数。
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プロローグ

ある日、友人から突然メッセージが飛んできた。
「今度、一緒にHYROX出てみない?」
どうやら海外を中心に大ブームになっている、ラン×ワークアウトのフィットネスレースがあるらしい。確かに最近SNSでよく見かけるし、日本でも盛り上がっているような気がする。
自分はメンズフィジークの大会で入賞経験もある現役トレーニーで、ランニング好きでもあるから、楽しそうだし「出たい!」とすぐに返事をした。
そして、出場にあたり、頭に思い浮かんだ自分なりの裏テーマがある。筋トレあるあるで、トレーニーにつきまとう、あの議論。“使えない筋肉”というワードだ。
「その筋肉って使えないよね?」
「見た目だけで実用性なさそう」
……いやいや。そもそも“見た目の美しさ”を評価する競技なんだから、その発言自体がナンセンス。とは思いつつも、なんだか悔しい気持ちになってしまう。
競技者じゃなくても、せっかくジムに入会して最近頑張っているのに、「なんの為にそんなに鍛えてるの?」なんて冷笑されてモヤモヤすることありませんか?
どんな運動でも習慣として継続できる人は素晴らしい!そして何より、日々鍛え上げている我々の筋肉が使えないはずがない!?
というわけで、今回のHYROX挑戦でフィジーカーのポテンシャルを世界へ見せつけ、“使えない筋肉論争”に終止符を打てせてもらおうじゃないか。
そして、忙しい合間を縫って自己研鑽に励む、全てのフィットネス社会人たちに勇気を与えられたらいいなと思ってます!
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SNSで話題沸騰中のHYROXとは?

[その1]ラン×筋トレ×心肺の総合格闘技

HYROXは1kmラン×8本 + 8つのステーションで構成された“世界最大のフィットネスレース”。ランニングの合間に、スレッド、ローイング、ランジ、ウォールボールなど全身を酷使する種目が襲いかかる。
海外で人気に火がつき、近年は日本でもエントリーが即完売。TikTokやInstagramにも「これ絶対次の日動けないやつ」といった動画をよく見かけるようになった。
簡単にいうと、「走って追い込まれ、止まってもっと追い込まれる」そんな新時代のフィットネスレースだ。

[その2]意外と誰でも参加できるスポーツらしい

見た目はハードだが、実は“参加のハードルは低い”。過去2回の世界王者であるHYROXコーチのジェイク・ディアデンによると、
「エントリーレベルは非常に低いです。 その理由は、他のスポーツと比較して求められるスキルレベルが低いから。 ジムに通っている人でも、本気で取り組む人でも、HYROXは誰でも参加できます」
これまでのクロスフィット競技で指定されるワークアウトには、逆立ち歩行など、人によってはそもそも一回もできないような難易度や強度の高い動作が含まれることがあった。その点、HYROXは、“押す・引く・走る・持つ”の4つができればOK。高度な技術やパワーは必要ない。
だからこそ参加者層も広く、初心者、ランナー、筋トレ勢、アスリートまで一緒に同じコースを走れるのがお祭りのようで面白そうだ。レッドブルでエネルギーをチャージして、テンションをマックスに高め、思いっきり楽しみたい。

[その3]各ステーションをざっくり説明します

レースは1kmラン → ステーション → 1kmラン → ステーションの繰り返し。ひたすら心拍を上げながら全身を使う。
① スキーエルゴ(1km)
→ ケーブルを縦に引き下ろし続ける、全身カーディオ(有酸素)。
スキーエルゴ

スキーエルゴ

© Philipp Carl Riedl / Red Bull Content Pool

② スレッドプッシュ(50m)
→ 重いソリを前へ押す“脚と体幹の総力戦”。
スレッドプッシュ

スレッドプッシュ

© Christian Pondella / Red Bull Content Pool

③ スレッドプル(50m)
→ ロープを手繰り寄せてソリを引く“握力×背中×脚”の複合種目。
スレッドプル

スレッドプル

© Brian Ching See Wing / Red Bull Content Pool

④ バーピー・ブロードジャンプ(80m)
→ バーピーしながら前方へ跳び続ける“全身跳躍サーキット”。
HYROX バーピーブロードジャンプ

HYROX バーピーブロードジャンプ

© Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

⑤ ローイング(1km)
→ ローイングマシンで全身を使って1km漕ぎ切る、心拍調整の勝負所。
ローイング

ローイング

© Tyrone Bradley / Red Bull Content Pool

⑥ ファーマーズキャリー(200m)
→ ケトルベルを左右に持ち歩く、“握力耐久レース”。
ファーマーズキャリー

ファーマーズキャリー

© Phil Pham / Red Bull Content Pool

⑦ サンドバッグランジ(100m)
→ サンドバッグを担ぎながらランジ前進する脚トレ。
サンドバッグランジ

サンドバッグランジ

© Christian Pondella / Red Bull Content Pool

⑧ ウォールボール(100回)
→ スクワットからボールをターゲットへ投げ続ける最終試練。
ウォールボール

ウォールボール

© Brian Ching See Wing / Red Bull Content Pool

[その4]4つのカテゴリーで初心者にも優しい

  • Open(初心者向け):重量が軽い。参加しやすい。
  • Pro(上級者):重量が重く、ガチ勢向け。
  • Doubles(2人):交互にステーションを担当。
  • Relay(4人):チームで分担するパーティ版。
もし初出場で不安なら、まずは仲間と協力できるダブルスやリレーに出てみるのも楽しそう!
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筋トレ好きライターが考察してみた

果たしてHYROXはトレーニーに有利なのか?トレーニーならではの視点も交えながら資料と動画をリサーチしてみると、HYROXは、一般的なトレーニングとは真逆の考え方で臨まないといけないようだ。

[その1] “効かせる”は悪。パンプは敵

トレーニーは“パンプ”を求めて日々ダンベルを握っている。
“パンプ”とは何かというと、トレーニングによって、筋肉に血流が集まり、一時的にサイズが膨らんで張り出す現象のこと。これが成長のシグナルであり、ご褒美でもある。
鏡の前で肩が膨らんでいたら嬉しいし、腕が太くなっていればテンションも自己肯定感も上がる。だからこそ、狙った筋肉をどれだけ使い切れるか、いかに”効かせる”かの勝負をしている。
しかしHYROXでは、その習性が完全に裏目に出てしまう。
パンプはその名の通り、筋肉がパンパンに膨れ上がっている状態。だから効かせた瞬間、終わり。血液が滞留して酸素供給が落ち、疲労物質が抜けず、パフォーマンスが落ちてスタミナを奪われる。
つまりHYROXは、“いかにパンプさせないか”こそが重要。動作は全部、“逃がす”。負荷は全身に散らす。省エネこそ正義。いつも丁寧に効かせるフォームを磨いてきた真面目な人ほど、この競技では逆に地獄を見るのかもしれない。

[その2]脚が重要。上半身の筋肉だけでは乗り切れない

Don’t skip leg day(脚トレをサボるな)という合言葉がある。
上半身さえ鍛えておけば見栄えはいいが、いちばんキツい脚のトレーニングから逃げていては、強くはなれないという思想。そんな脚トレの成果がHYROXでも役立つかもしれない。
なぜなら、上半身の種目に見える動作も、実は脚が削られそうだからだ。
  • スキー:脚の反動が出力の6~7割
  • ローイング:“背中”の力よりも“脚の蹴り”
  • ファーマー:脚が疲れると姿勢が崩れて重さを支えられない
  • スレッド:脚が終わった瞬間にソリが動かなくなる
(※ あくまでも個人的な感想)
そして、全ステーションの間には合計8kmのラン。
脚を使う → ランで追い込み → また脚を使う → またランという脚トレサーキットが最後まで続く。
もしかしたら、HYROXは、“脚トレから逃げてきた人を容赦なく炙り出す”為に誕生したスポーツなのかもしれない。(違います)
とにかく、これまでしっかり脚トレしてきた人間には、アドバンテージがあるはず。

[その3]結局はラン!? 心肺機能がすべて

ここで残酷な真実。
トレーニーは「ステーションで差をつけよう」と考えるだろうが、タイムを短縮したいなら、おそらくはランが最重要。
各ワークアウトの強度が低い分、心肺の強さがパフォーマンスを左右する。そして、“疲労の中で動き続ける能力”が必要。つまり、ランが速い人ほど全ステーションも楽になる。
そして何より全体の半分はランなのだ。ステーションでの動きよりも、ランの結果で大きな差がつくだろう。ぶっちゃけ、タイムを縮めたければランを伸ばすしかない。
筋肉だけでは絶対に勝てない。だけど、だからこそ面白い。
筋トレ勢にとっては、これこそがHYROXの残酷さであり、同時に伸びしろと醍醐味でもある。
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まとめ

HYROXは筋肉だけでは勝てない“総合フィジカル競技”

事前のリサーチで方針は見えてきた。残念ながら、おそらく重要なのはラン。ハードな筋トレのバックボーンはさほど有利に働かない。
しかし、私たち社会人トレーニーは、日々の習慣で身体だけではなくメンタルも鍛えている。本番ではきっと、限界を越える粘りを見せられはずだ。
最後は精神論という、いかにも脳筋な結論になってしまったが、次回は、実際にジムでHYROX式トレーニングをしてみた感想をレポートしてみます!