© Ryo Tateoka

HYROX初心者向け! 本番当日の流れを体験レポートで解説

次回、HYROX(ハイロックス)に初参戦予定でワクワクしつつ、ちょっと不安な人へ。筋トレ好きライターが体験した当日の流れを、リアルな失敗談込みでまとめた。読めば本番のイメージがぐっと具体的になるはず。
Written by alex shu nissen Edit by Hisanori Kato
読み終わるまで:8分Published on
▼書き手:ニッセン・シュウ
フリーランス編集者 / ライター。コロナ禍にランニングにハマり、一時期は月間300〜400kmを走る。知人が開いたパーソナルジムにて筋トレに目覚め、30歳からメンズフィジーク競技に出場。大会での入賞経験も多数。
《執筆》
01

初出場でいきなり洗礼。スタート直後の落とし穴

筋トレ好きライターのHYROX体験レポート、ついに本番を迎えた。作戦は以前の記事の通り。
  1. 走り込みに全振りして、過去の心肺機能を取り戻す。
  2. Red Bull Road to HYROXにも数回参加し、各ワークアウト動作の最適化を進める。
  3. ひたすらランニングを続け、準備してきた。
日本で2回目の開催となったHYROX。会場のインテックス大阪に到着すると、凄まじい熱気が押し寄せる。爆音のDJプレイとオーディエンスの歓声が響き渡っている。3日間で、なんと約8,000人のアスリートが参加したそうだ。
こんなにも過酷な競技にもかかわらず、海外からの参加者も多い。HYROXコミュニティが世界規模で広がっていることを肌で感じた。参加した者にしか分からない、この競技ならではの魅力が確実にある。
豊富な出場カテゴリーが用意されているため、朝から晩までレースはノンストップ。筋トレ好きライターの自分は男子シングル・オープン30–34歳の部。数分おきに次の組がスタートしていく形式だ。
30分前にはワークアウトステーションが設置されたウォーミングアップゾーンに入れる。直前に動きを確認できるのはありがたい。レッドブルを飲んで気合いを入れ、いざ出陣。
 

© Ryo Tateoka

いよいよスタート。直前にハイテンションなコース説明があり、レッドブルのアーチの下に整列。
アーチの内側は少し暗く、カウントダウンとともにスモークが焚かれる。クールな映像と英語のナレーションが流れる。興奮で内容はほとんど頭に入ってこなかったが、きっと「時は来た」的なことを言っていた気がする。
程よい緊張と高揚感を引き上げる演出。
プロのアスリートもこんな気持ちなのか、と少しだけその世界を体感できて嬉しい。

3, 2, 1, GOーーーー!

合図とともに一斉に走り出す。大きな声援に包まれ、アドレナリンが大爆発。
「絶対に最初から飛ばしたらダメですよ」
前日にレッドブルチームのレース経験者たち6人にも話を聞いたが、あんなにも皆が口を揃え、教えてくれた鉄則は、スタートと同時に全て頭から吹き飛んだ!!
先頭集団を率いて、快調にぶっ飛ばしていく。
 

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02

「今何周目?」本番で起きた軽いパニック

まずはラン。
気をつけなければならないのは、周回数が種目ごとに変わること。
  • Run 1: 「Inアーチ」を3回目に見たタイミングでROXZONEへ
  • Run 2~7: 「Inアーチ」を4回目に見たタイミングでROXZONEへ
  • Run 8: 「ウォールボールアーチ」を4回目に見たタイミングでワークステーション8へ
※ ROXZONE:ランニングコースとワークアウトステーションをつなぐトランジションエリア
文字にすれば難しくない。しかし会場の熱狂の中では、不思議と「あれ?いま何周目だっけ?」と混乱する。
周回数が足りないままROXZONEに入ると、3~5分のタイムペナルティ。足元に装着された計測チップで管理されているとはいえ、基本は自己責任。確実にカウントしたい。
(ちなみに会場の大画面に名前と周回数が表示される。アルファベット表記が多いので、カタカナでエントリーすると見つけやすいかもしれない。)
冷静さを欠いていた自分は、ペナルティを恐れすぎた結果、Run1から1周多く走ってしまった。しかも同時進行で別の組も走っているため、なかなか気づけない。その後も同様のミスを何度か繰り返した気がする。
 

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とにかく落ち着いてください。皆さんはこうならないように!
03

想像よりキツい。8種類ワークアウトの現実

ワークアウト①スキーエルゴ(1km)
ここでようやく平静を取り戻す。焦らず、ペースを守る。
ちなみにスキーエルゴの自分の写真はない。これは、自分が入ったレーンが撮影エリアから離れていたため。HYROXでは仲間に挑戦の様子を撮ってもらうのも楽しみのひとつだが、各種目の位置は当日の順位によって決まるため、必ずしも撮影しやすい場所になるとは限らないので注意!
少し本題からずれたが、問題は②スレッドプッシュ(50m)
 

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「あれ?全然進まない」
練習とは明らかに感触が違う。おそらく床の素材が新品で、滑りにくくなっているのだろう。楽なパートだと思っていた分、軽くパニックになる。
ソリの後ろを少し浮かせて進むという練習で習ったコツを思い出し、なんとか完遂。想像以上に体力を削られた。
得意だと思っていた③スレッドプル(50m)も、呼吸が乱れてうまくできない。外から見れば「あとちょっとなんだから一気に行けよ!」という地点で身体が止まってしまう。練習との違いを痛感。
 

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本番は審判の目も厳しい。
④バーピー・ブロードジャンプ(80m)では、胸が地面につかなければノーレップ。誤魔化しは一切通用しない。

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「これでまだ半分……?」
 

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もうお家に帰りたくなって来たが、なんとか気持ちを奮い立たせる。つくづく持久力・筋力・精神力、すべてを試される極限の競技だ。
この段階で事前に設定していたペースからは大幅に遅延。
目標タイムよりも「歩かず完走する」ことへ切り替えた。すると不思議なことに、焦りが消え、ランも安定してきた。
心を無にして、淡々とランとワークステーションをこなす。
⑤ローイング(1km)では初めて、椅子に座れて嬉しいという気持ちになった。

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⑥ファーマーズキャリー(200m)は握力との戦い。用意されている滑り止めの粉をふんだんに使わせていただく。
 

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メンタルを立て直したのも束の間、⑦サンドバッグランジ(100m)にて、脳内が「早く温かいお布団で眠りたい」で埋め尽くされる。
 

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だが現実は、容赦ないジャッジが真横にぴったりマーク。膝が床についているか常に厳しくチェックされ、憎しみの念が湧きそうなものだが、「いけるよ! GO GO GO!」と声をかけてくれた。
お布団よりも温かい、その応援に何度も救われた。
8kmラン+7種目を終え、ついに最終関門⑧ウォールボール(100回)。意識は朦朧。身体の悲鳴だけが聞こえてくる。
脚は「もう無理」と言い、肺は「ちょっと待って」と泣き、筋肉は退職願を書いていた。
ここにスマホさえあれば、タクシーを配車して帰っていたことだろう。
「ハザード焚いて、ROXZONEの横につけてください」と。
だが、筋トレ好きライターとして挑んだ本企画。
HYROXの洗礼を浴びてコテンパンにやられながらも、アーノルド・シュワルツェネッガーのお言葉が脳内にこだまする。

「筋肉がNoと叫んだら、私はYesと答える」

ひとり、雄叫びを上げ、最後の力を振り絞った。
ウォールボールは観客席が近い。応援がダイレクトに届く。あれほど帰りたかったのに、終わるのが少し寂しくなってきた。
そして、ついに、100レップ完遂。
 

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やり切った達成感は、想像以上だった。
今回は余裕がなかったが、次はRed Bull 100 Challengeに挑みたい。ウォールボール100回をアンブロークン(ボールを落とさず一気に100回)で達成すると、Red Bull 100 と大きく記された円形の限定ワッペンがもらえるらしい。
このフィニッシャーパッチを持っている人は、どんな偉人よりも本気でリスペクトします。
04

HYROX完走レビュー。初出場で見えた本当の価値

HYROXは、ただのフィットネスレースではなかった。
会場の演出、爆音のDJ、絶え間ない声援、そして同じ苦しみを共有するアスリートたち。あの空間には、数字では測れない一体感があった。
持久力も、筋力も、精神力も、全部まとめて試される。ごまかしも、近道もない。だからこそ、ゴールした瞬間の達成感は異常なほど濃い。
 

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限界だと思ったその先に、まだ一歩進める自分がいる。その感覚を知ってしまうと、また挑みたくなる。HYROXはクセになると言われる理由が、ようやく分かった。
難しいことに挑み、最後までやり切る。その積み重ねが、きっと人生を強く、面白くしてくれる。
そしてフィニッシュ後、震える手で開けた一本。
キンと冷えたレッドブルを流し込む。

……くぅーーー。

 

© Ryo Tateoka

今までで一番うまい!

自分の裏テーマは、“使えない筋肉論争に終止符を打つ”だったが……、今回は引き分けということにしてやろう!? 結着は次回に持ち越しだ!
次は、もっと強くなって帰ってきます!