オランダ人スピードスケーターのキエルド・ナウシュがノルウェーのサヴァレン湖の天然氷で時速103kmを記録し、自身が持っていたスピードスケート世界最速記録を10km/hも更新することに成功した。
全長3kmの天然氷のアイスリンク、ダカール・ラリー用マシン、そしてナウシュを風から防ぐ “ウィンドキャッチャー” — ナウシュの人類初の時速100km突破に向けて、サヴァレン湖にはパーフェクトな環境が用意された。
氷の上を飛んでいました。これはスピードスケートの限界です
ナウシュは挑戦成功後、次のようにコメントした。
「氷の上を飛んでいました。すべてのバンプが大きな段差に感じられましたし、氷から浮いているような感覚が得られるときもありました。あそこまで高速でのスケーティングは技術的に難しく、精度が求められます」
「また、各アテンプトで2km超をスケーティングする必要がありました。大会でこの距離のスケーティングを繰り返すことはありません。ですので、今回の挑戦では、できる限り “ウィンドキャッチャー” の中に留まり、時速92kmから100km超までの加速に必要なエナジーを残しておくというプランを用意しました。肉体的にかなり厳しかったですね。これはスピードスケートの限界です」
ナウシュは4年前にスウェーデンでスピードスケート世界最速記録93km/hを樹立していたが、このスタースケーターはもっと速く滑れることが分かっており、自身が持つ記録の更新を狙っていた。
「時速100kmの壁が立ちはだかっていました。ですので、前回のオリンピック後の記録樹立からちょうど4年後に更新できたのは最高ですね。今回はかなり調子が良かったので、時速100km突破はマストでした」
コーチのエルベン・ベンネマルスは、ナウシュとドライバー、風防を上手く合わせることが非常に難しかったと振り返り、次のように続ける。
「4年前の挑戦のあと、私たちはどこまで速く滑れるのかについて考えるようになりました。それで、時速100kmが狙えそうだという話になったのですが、成功を約束するデータは何もありませんでした。氷、準備、そしてコミュニケーションによって成功できたのです」
「ですが、時速100kmは本当に難しいのです。実際にこのスピードで滑っている姿を見ると、不思議な気持ちになりますよ。エキサイティングな挑戦でしたが、あれよりも速く滑ることは不可能でした」
今回の挑戦でナウシュが頼りにしていたのは自分の肉体だけだったが、ラリーマシンに連結された風防 “ウィンドキャッチャー” によって風から身を守ることができていた。このラリーマシンをドライブしていたのが、ダカール・ラリー1回におけるステージ優勝最多記録を所持する米国人ドライバー、セス・キンテロだった。
まだティーンエイジャーながら素晴らしい実績を誇るキンテロは、ダカール・ラリーの砂漠と同じくらい氷上のドライビングにも長けていた。キンテロは次のように振り返っている。
「僕にとって最大のチャレンジになったのは、加速する方向を間違えないことでした。低速であそこまでの張力(テンション)を感じたのは今回が初めてでした。ドライブ中は、あそこまでのスピードを人力で達成できる人なんていないだろうと思っていました」
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