German triathlete Mika Noodt runs around the Postalm in Austria and trains there for the upcoming season.
© Nikolas Tusl/Red Bull Content Pool
ランニング

ランニングで使用する筋肉の種類とそのトレーニング方法

ランニングではどの筋肉が使われているのだろうか? それらの筋肉はどのように鍛えれば良いのだろうか? ランナーのための筋肉学を専門家のトレーニングアドバイスと合わせて学ぼう!
Written by Magdalena Bryś
読み終わるまで:9分Published on
ランニングではどの筋肉が実際に使われているのだろうか? 走る動作には上腕二頭筋や大腿四頭筋、腹筋やハムストリングなど、いくつもの筋肉が使用される。ランニングをすると身体のどこに強く刺激が入るのかを理解できれば、ランニングそのものをより深く理解できるようになる上に、ストレングストレーニング(筋トレ)で補強することもできるようになる。
ランニングの主要筋群をストレングストレーニングで強化すれば、ランニングのテクニックとパフォーマンスが向上し、怪我のリスクが低下する。言い換えれば、ランニングの効率が向上し、全身が強化され、より高い負荷に耐えられるようになるのだ。
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ランニングは脚力がすべてではない

初心者ランナーの多くは、脚力がすべてというアイディアに囚われて、脚部の強化のみにフォーカスしがちだが、これは正しくない。ランニングはつま先から肩までを動かす全身運動だ。すべての筋肉を動かしてパワーを生み出し、身体を前進させていくのだ。

ランニングで使用する脚部の主要筋肉

とはいえ、ランニングで主な推進力を生み出すのは脚部で、ここがランニングのダイナミクスを生み出す。脚部の主要筋肉群を紹介しよう:
  • 大腿四頭筋:足裏の着地時の衝撃を吸収する役割と膝関節を安定させる役割を担う
  • 大腿二頭筋および太腿裏側の筋肉:膝の屈曲、臀部の伸長、ストライドの加速を担う
  • 下腿三頭筋:足裏の着地〜蹴り出しで機能し、滞空時に緩まる
  • 臀筋:滞空時に動作し、登坂や後ろ向きでの走行中により強く動作する
  • 足筋:身体を安定させて衝撃を吸収する役割を担う。ヒラメ筋が最大限まで収縮してパワーを発生する踏み切り直前で最大限動作する
トレッドミル、トレイルを問わず、テクニックがすべて

トレッドミル、トレイルを問わず、テクニックがすべて

© Naim Chidiac/Red Bull Content Pool

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ランニングで使用する腹筋と体幹

体幹および腹筋もランニングでは重要な役割を担う。ランニングをしていると、上半身が左右にひねられる(回転する)ため、腹斜筋に刺激が入る。また、強靭な体幹があれば、上半身が安定し、正しい姿勢を維持できるようになるので、ランニングエコノミーが改善され、骨盤がブレなくなる。強化しておきたい主要な腹筋は以下の通り:
  • 腹直筋:ランニング中に直立・安定した姿勢を取れるようになる
  • 腹斜筋:骨盤を安定させ、臀部と腰部の筋肉に刺激を入れて、上半身を左右に回転させる。ランニング時の全身を安定させる
  • 深層筋:脊髄を安定させ、バランスを向上させる
腹筋が強くなれば走力が高まる

腹筋が強くなれば走力が高まる

© Markus Berger/Red Bull Content Pool

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ランニングで使用する腕部・上半身筋群

ハードワークを担うのは脚部と体幹だけではない。ランニングでは両腕もハードワークを担う。上腕二頭筋上腕三頭筋肩筋胸筋もリズミカルに機能して、ランの推進力を生み出している。
多くのランナーが忘れてしまいがちだが、正しく腕を振ればバランスとテクニックが安定し、ランニングエコノミーも向上する。ランニング中に使用する上半身の筋肉群は以下の通り:
  • 上腕二頭筋・三頭筋:リズミカルに連動してバランスと推進力をサポートする
  • 肩・胸筋:正しい姿勢を保ち、ランニングダイナミクスをサポートする
  • 背筋(広背筋・脊柱起立筋など):上半身を安定させ、腕の振りをサポートする
ランニングは腕も重要

ランニングは腕も重要

© Leo Rosas/Red Bull Content Pool

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ランニングで使用するその他の筋肉群

ランニング中は下半身の深層筋安定筋も重要な役割を担う。これらの筋群は脚の動きをスムーズにしつつ、関節を過度な負荷から守ってくれる。特に意識したいのは以下の筋肉群だ:
  • 腸骨筋・腸腰筋:脚と骨盤の動きを調整する
  • 関節安定筋:膝と足首、臀部への衝撃を吸収する
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ランニングにストレングストレーニングを取り入れる理由

ストレングストレーニングはフォームの改善に加えて怪我の予防にも効果的

ストレングストレーニングはフォームの改善に加えて怪我の予防にも効果的

© Markus Berger/Red Bull Content Pool

筋力強化 = 走力強化

普段の10kmランの自己ベストを更新したい、レースの記録や結果を向上させたいなど目的を問わず、ランニングのトレーニングにストレングストレーニングを取り入れる価値は十分にある。ランナーにとってのストレングストレーニングの目標は、安定性・推進力・フォームに関連する筋群の強化だ。このような筋群が強化できれば、スピードとランニングエコノミーが向上し、怪我のリスクが低下する。
理学療法士 / 整体師 / マウンテンランナーとして活躍するポーランド人ドミニク・タボールは次のように説明している。
「ストレングストレーニングはもはやランニングに “追加するもの” ではありません。ランニングの重要な基礎です。ランニングは目的がひとつだけのスポーツで、一歩一歩を安定させて十分な推進力を生み出す必要があります。この一歩、つまり “頑強な基礎” がなければ、オーバーロード(負荷が大きすぎる状態)がより頻繁に発生し、ランニングエコノミーが低下するでしょう」
「最重要視すべき筋肉は臀部とふくらはぎの筋群大臀筋中臀筋、そして身体を過剰に回転させないようにする腰および体幹の安定筋群です。これらは骨盤を安定させるため、効率良く地面を蹴れるようになります。つまりは、より少ないエネルギーでより速く走れるようになるのです」
「ストレングストレーニングは、ビギナーからエリートまでのすべてのランナーのトレーニングルーティンに組み込まれるべきですが、最初から重いウエイトや複雑なジムマシンを使用する必要はありません。スローペースで行える自重系エクササイズから始めて、難度を徐々に上げていきましょう。ただし、常に筋肉へ十分な刺激が入っているようにしてください」
ドミニク・タボール

ドミニク・タボール

© Dominika Rakszewska

「基本エクササイズは、スプリットスクワットスクワットシングルレッグ・デッドリフトヒップスラスト各種プランクといったシンプルなムーブメントになります。カギになるのは “定期的に行う” です。たった週1回でも怪我のリスクが低下し、ランニングエコノミーが向上するので、ランニングがさらに楽しくなります」
「ストレングストレーニングは、舗装路・山岳を問わず、あらゆるタイプのランナーの準備において非常に重要です。運動能力全体の向上と筋骨格の維持のためにはただ走るだけでは不十分です。筋力はスピード、持久力、テクニックを向上させるための基礎になります」
「膝、臀部、脊椎のような身体を安定させる役割を担う筋肉の強化は、怪我のリスクを大きく低下させながら、ランニングエコノミーを向上させます。パワーが増加し、ストライドのダイナミクスが改善されれば、スピードが高まります。また、骨盤が安定し、体幹が強くなれば、ランニングのテクニックが安定し、身体がブレにくくなります」
ランニングにストレングス、ストレッチ、ローリングエクササイズを組み合わせた包括的アプローチを採用しているランニング専門ウォームアップコーチのピョートル・コモロヴィッチは、次のように続けている。
「ストレングストレーニングの恩恵を受けたランナーは、身体がオーバーロード状態にならずにより多くのトレーニングを消化できるようになります。また、微細損傷をしやすい腱や深部組織を強化できる他、上り・下りの走力もアップします」
ピョートル・コモロヴィッチ

ピョートル・コモロヴィッチ

© Aleksandra Szmigiel

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ランニングを強化するストレングストレーニング

以下に紹介しているのは実証済みのランナー用ストレングストレーニングだ。ドミニクがまとめた「スーパーシリーズ」と、ピョートルがまとめた「シーズンを通じて取り組む年間トレーニングプラン」に分かれている。
どのレベルのランナーでもストレングストレーニングを通常のトレーニングに組み込み、身体のポテンシャルを最大限まで引き出せるようになるので、是非とも取り組んでもらいたい。

ドミニクのストレングストレーニング

ここでは2種類のエクササイズを “スーパーシリーズ” としてまとめてある。各スーパーシリーズはレップ8〜12 x 3セットで行われ、スーパーシリーズ間の休息は30秒〜1分に設定されている。このトレーニングは、より短時間で多くのワークアウトを行うことで、効果を最大限高めるために考案された。
スーパーシリーズ1:ブルガリアンスクワット + プッシュアップ(脚・臀部・上半身の強化と体幹の安定を狙う)
スーパーシリーズ2:ヒップスラスト + ロシアンツイスト(臀部と腹筋を強化して、骨盤を安定させつつランニング中の体幹をサポートできるようにする)
スーパーシリーズ3:ドロップジャンプ + バンド付きモンスターウォーク(脚部のダイナミクスおよび爆発力、側腹筋を強化して臀部を安定させる)
スーパーシリーズ4:トゥークライム + サイドプランク・クラムシェル(ふくらはぎ・足首安定筋・体幹側部を強化する)
スーパーシリーズ5:ルーマニアン・デッドリフト + ポゴジャンプ(後脛骨筋・爆発力・筋協調性を強化する)
ウォームアップにストレッチを取り入れて身体に刺激を入れよう

ウォームアップにストレッチを取り入れて身体に刺激を入れよう

© Markus Berger/Red Bull Content Pool

ピョートルのストレングストレーニング年間プラン

1年を通じて取り組むストレングストレーニングを策定するときは、ランナーのニーズが変化することを考慮するべきだ。
まず、ストレングスの基礎を作るシーズンイン(初夏〜盛夏)は、ウエイトを重くしてレップを少なくしたストレングストレーニングを週2〜3回行って全身の筋力を高めていく。次にレースシーズン前(盛夏〜初秋)は週1〜2回に減らし、ダイナミックストレングス、プライオメトリクス、スピード系エクササイズに取り組んでいく。
レースシーズン(晩秋〜春)は、軽い負荷で機動性と怪我の予防にフォーカスしたジムワークを週1回行えば十分だ。そしてオフシーズン(春〜初夏)はリカバリーにフォーカスして、可動性エクササイズやコレクティブエクササイズを優先しつつ全身の筋肉バランスを整えて、次のシーズンに向かう。
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まとめ

ランニングは全身ワークアウトだ。もちろん、脚部と臀部の負担は大きいが、安定した上半身や腕の振りがなければ一歩一歩の効率が下がり、怪我のリスクが高まる。だからこそ、ランナーが各筋肉の役割を学び、どの筋肉が安定性や推進力を担っているのかを把握しておくことが非常に重要なのだ。
ランナーのトレーニングは走り込みがすべてではない。全身の筋骨格を継続的に強化することが重要だ。全身を強化すれば、ペースとテクニックが向上し、一歩一歩がダイナミックかつ安全になる!
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