持久系スポーツの中でウルトラランニングは究極の試練として位置づけられている。通常のマラソンよりはるか遠くまで走るこのスポーツでは、根性・戦略・心肺が高いレベルで求められる。
ウルトラランナーのディラン・ボウマンにとって、このスポーツを始めたきっかけは「160kmを完走したい」という思いではなく、ラクロスを長年プレーしていたあとも身体をフィットさせておきたかったからだ。「特に目標はありませんでした。健康維持のために走り始めたのです」と本人は振り返っている。
私たちの多くは、筋力・持久力・心身の健康を維持する手段としてランニングに取り組んでいる。しかし、長距離走・ロングランは “シューズを履いて走る” よりも複雑だ。事前にしっかり考えて準備をし、正しいトレーニングを積まなければ、自分のポテンシャルを引き出すことはできない。ロングランに適したワークアウトが、本番の助けになるのだ。
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長距離走の基本を学ぶ
長距離走・ロングランは持久力向上に最適なスポーツだ。酸素を使いながらパワーを生み出す遅筋繊維を使用するため、より長く走れるようになる(有酸素運動)。
しかし、長距離走・ロングランで問われるのは速さと持久力だけではない。スプリントや休息、栄養補給、ウエイトトレーニングのような “走らないエクササイズ” も、自己ベスト更新に大きな影響を与える。
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持久力強化用おすすめトレーニング
持久力は、ランナーのトレーニングの中で最も重要なエリアのひとつだ。持久力はランニングのような長時間のパフォーマンスが求められる運動に不可欠だ。ランの距離を延ばし、ペースを上げながら、以下の3種類のワークアウトをトレーニングルーティンに組み込みたい。
ウォームアップ
いきなり始めるのは身体に毒だ。ショートジョグで身体を温め、筋肉を緩め、心拍数を上げておけば、怪我のリスクが低くなる。5分間のジョグにハイニーやウォーキングランジのようなドリルを組み合わせよう。各ドリルでは正しいフォームを意識したい。
ロングラン
走る距離が延びるほど、有酸素能力、つまりは運動中の酸素の消費効率が高まる。そこでロングランそのものに積極的に取り組んでいこう。突き詰めれば、ランニングは “習うより慣れろ” なのだ。
高強度インターバルトレーニング(HIIT)
インターバルトレーニングは、体内のVO2 Max(最大酸素摂取量)、つまり運動中に身体が取り込める酸素量の増加に役立つ。高強度インターバルトレーニングでは「限界レベルのエクササイズを約30秒続けたあと、身体を動かしながら休憩する」というセットを繰り返していく。ランニングでは以下のようなトレーニングが考えられる。
- 30秒間スプリントしたあと、ウォーキングでリカバリーする
- 坂道や丘をランニングで上ったあと、ウォーキングで下る
持久力とスタミナの違い
持久力とスタミナは同義語として扱われるときもあるが、厳密には異なる言葉だ。持久力は「どれだけ長く走れるか」を意味し、スタミナは「高強度・短時間の運動をどれだけ続けられるか」を意味する。どちらも長距離走に取り組むランナーには重要だが、どちらかと言えば持久力の方が重要だ。
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スピード強化用おすすめトレーニング
長距離ランナーとして台頭するために世界最速のスピードを得る必要はないが、ロングランでもスピードが重要な要素であることに変わりはない。
テンポラン
テンポランは一定時間ペースを維持できるようにするためのトレーニングだ。42kmに渡って安定した走りを続ける必要があるマラソンに向けたトレーニングには不可欠だ。
テンポランでは、乳酸閾値、つまりは「パワーを発生させる過程で生み出される副産物である乳酸を身体がどのくらい溜められるのかを表す数値」を向上させていく。テンポランは1週間のトレーニングルーティンに組み入れたい。
ラダーワークアウト
ラダーワークアウトは、ランニング中にペース変化を加えるトレーニングだ。各インターバルは1〜5分で設定し、1分間の休憩を挟みながら、異なるペースで走っていく。
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ストレングストレーニング
ストレングストレーニング(筋トレ)は関節の保護、安定性の向上、筋持久力の構築に不可欠だ。走らない日をストレングストレーニングに充てれば、長距離ランの能力を高めることができる。以下のメニューから始めてみよう。
下半身強化用おすすめトレーニング
スクワットとランジはバランスを改善して可動域を広げてくれるが、同時に脚部、臀部、関節も強化できる。ストレングストレーニングに取り組む日に数セットずつ行おう。
ランジのやり方:
- 肩と腰、膝と足首が垂直に並ぶように直立する。
- 左脚または右脚(好きな方で良い)のどちらかを大きく後ろに一歩下げながら、前脚を曲げていく。バランスを崩さないように後ろ脚の膝を床に向かってできる限り沈めていく。前脚のかかとを床に押しつけて、元の直立姿勢へ戻る。
- 前後を入れ替えて繰り返す。入れ替えるときにバランスを意識する。ジャンプして入れ替えればバランスを取るのが難しくなるので効果が高まる。
スクワットのやり方:
- 腰幅に開いて立つ。膝と足首を直線上に並べる。
- 背筋を伸ばし、臀部を引いた姿勢を取り、イスに座るイメージで両膝を曲げていく。このときにつま先は前向きで固定する。
- 両膝を曲げた姿勢をできる限りキープする。かかとを床へ押しつけて元の直立姿勢へ戻っていく。
- スクワット初心者なら壁を使ってやってみよう。負荷を高めたいなら、両手にウエイトを持とう。
プランク
全身のストレングス強化に役立つこのエクササイズは、体幹・臀部・両腕・両肩・背中・斜筋に刺激を入れられる。複数のバリエーションが存在し、バリエーションごとに異なる部位に刺激を入れられるので、トレーニングメニューにも複数のバリエーションを組み込むようにしよう。
- クラシックプランクは全筋肉群に刺激を入れる。
- ワンアーム・プランクは体幹と腕に追加で刺激を入れる。
- あお向けになるリバースプランクは肩を強化できる。
- サイドプランクは斜筋と臀部に追加で刺激を入れる。
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ランナー用おすすめリカバリー
休息はトレーニングと同じくらい重要だ。以下の運動を活用したアクティブリカバリーに取り組んで、怪我や疲労なしで強化していこう。
イージーラン
「休息なのに走るの?」と思う人もいるかもしれないが、ランニングもランニングトレーニングのリカバリーの一部だ。
イージーランはハードなトレーニングからのリカバリーに適している。ペースを落とす、距離を短くする、またはペースを落として距離も短くするを問わず、リカバリー用イージーランはランニングフォーム、血流、全体のパフォーマンスの向上に繋がる。
ストレッチ
柔軟な筋肉は身体を守り、怪我を予防する。ストレッチは筋肉の血流を改善するため、遅発性筋肉痛、いわゆる “筋肉痛” を防いでくれる。
身体を動かしながら行うダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)と、座った姿勢は動かない姿勢で行うスタティックストレッチ(静的ストレッチ)の両方を取り入れれば、長時間固まらない筋肉が手に入る。
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自分に最適なトレーニングプランを用意する方法
2人として同じランナーはいないので、自分の目標と現在の能力に最適なトレーニングを用意する必要がある。長距離ラン・ロングランを始めたい理由、自己ベストを更新したい理由を自覚しておくことに加えて、以下の質問の回答を用意しておくことも、最適なトレーニングプランの構築に役立つ。
- 主観的運動強度・自覚的運動強度(RPE)は?
- 今の持久力レベルは? 目標レベルは?
- 自分のベーススピード(平均速度)は?
- 自分の乳酸閾値(VO2 MAX)は?
- ランニングフォームなどの基本から学ぶ必要があるか?
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まとめ
長距離走・ロングランの初心者、ベテランを問わず、正しいトレーニングプランを用意して取り組むことが持久力・スピード・ストレングス向上のカギになる。
距離を延ばすための持久力、タイムを縮めるためのスピード、そして身体を怪我からまもるためのストレングス、さらには継続と成長を促すリカバリーという4本柱を軸にトレーニングを積んでいこう。
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