Mann Sharma during his burpee broad jump marathon attempt in Delhi, India on October 14, 2025.
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フィットネス

【世界新記録】バーピーブロードジャンプでフルマラソンを完走!

HYROXのワークアウトステーションに含まれている過酷なエクササイズで42.195kmを完走したインド人アスリートが、トレーニング方法をはじめとするその偉業のすべてを明かしてくれた。
Written by Shail Desai
読み終わるまで:7分Published on
バーピーに対する一般人のイメージは、ワークアウトで取り組むタフで疲労度が高い反復運動だ。しかし、ひとりのアスリート、インド出身のマン・シャーマがこのエクササイズを完全に新しいレベル “バーピーブロードジャンプマラソン” へ引き上げた。
フルマラソンの距離42.195kmバーピーブロードジャンプで完走するというこの世界初のチャレンジには数ヶ月間の慎重な準備と持久力トレーニング、メンタルタフネスが必要になった。
しかし、このチャレンジを特別にしているのは距離だけではない(直前の世界記録はわずか5.1km)。HYROX最難関と言われるバーピーブロードジャンプに対する彼のトレーニングアプローチもユニークだった。そこで本記事では、超過酷なエクササイズを世界記録マラソンにしてしまったアスリート本人からのアドバイスとともに、バーピーブロードジャンプのトレーニング方法を解説していく。
01

アイディアの源泉

シャワーを浴びているときにアイディアを思いついたシャーマ

シャワーを浴びているときにアイディアを思いついたシャーマ

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シャワーを浴びながらふと思いついたことがシャーマ最大のチャレンジへと繋がった。それは未知の領域でのよく知っているチャレンジで、バーピーブロードジャンプをフィーチャーしたものだった。
このエクササイズは退屈さと過酷さで恐れられているが、HYROXレースにおける重要なワークアウトステーションのひとつだ。また、そのシンプルさと効果の高さから多くの人のワークアウトルーティンに組み込まれている。
シャーマのアイディアを理解するのは簡単ではない。何しろ、このバーピーブロードジャンプでマラソンをする、つまり、この過酷なエクササイズで42.195kmを一気に完走しようというのだ。
誰もやっていない偉業をやる必要がありました
マン・シャーマ
シャーマがこのアイディアを思いついたとき、呑気なことに、本人は準備と実行においてどれだけの努力が必要になるのかについて理解できていなかった。当時の世界記録は5.1kmだったが、シャーマはその約8倍を狙っていた。
そして2025年10月14日、22歳のシャーマはスタートから197時間後に泣きながらゴールを迎えた。彼のフィジカルは酷使され、メンタルはそれまで経験したことがないレベルで試された。
「このアイディアを思いつくことと、やることはまったくの別物です。最初の頃は、このアイディアを理解してくれる人や私が完了できることを信じてくれる人はほとんどいませんでした。ですが、私は誰もやっていない偉業をやる必要がありました」とマンは振り返っている。
02

強力な基盤からの上乗せ

バーピーブロードジャンプはHYROXの重要なワークアウトステーションのひとつ

バーピーブロードジャンプはHYROXの重要なワークアウトステーションのひとつ

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ヨーロッパでプロサッカー選手のトレーニングを10年間積んでいたシャーマには、強力な基盤が備わっていた。地元ニューデリーに戻ったあとはフィットネスが彼の日常生活の重要な一部となっており、自分の持久力の限界を試す方法を模索していた。
その後、数年をかけてシャーマはフィットネスチャレンジのマインドセットを築き上げていき、2021年にプッシュアップ2,021回2022年にハンドスタンドプッシュアップ2,022回2023年にプルアップ2,023回そして2024年2月29日には友人7人と29時間バーピーリレーを達成した。
このように自分のコンフォートゾーンを飛び出して肉体の限界を試してきた彼は、2025年もインド首都で100kmを走ってスタートさせていた。
まさに苦行でした。思い出しただけで身体が痛みます
マン・シャーマ
これらのプロジェクトは彼の最新チャレンジの基盤となったが、彼がそのチャレンジの本質を理解したのは、テストランを完了したときだった(バーピーブロードジャンプで5kmを完走したこのテストランも偉業と言える)。
「まさに苦行でした。思い出しただけで身体が痛みます。あのようなチャレンジは初めてでした。あれはメンタルが耐えられるかを確認するためのテストでした」
03

バーピーブロードジャンプマラソン用トレーニング

トレーニングの終盤はストレングス系にフォーカスした

トレーニングの終盤はストレングス系にフォーカスした

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バーピーブロードジャンプマラソンに向ける準備として、シャーマはバーピージャンプ1時間を週2日用意し、その時間を徐々に延ばしていった。
最初は映画を繰り返し視聴してその単調さから気を紛らわせたシャーマは、5時間続けられるようになった。そしてそのあとは、ジムでストレングストレーニングと体幹強化に数時間費やしながら、週1日をヨガやロッククライミング、スイミングなどのアクティブリカバリーに充てた。
呼吸と心拍数のコントロールにも取り組んだ

呼吸と心拍数のコントロールにも取り組んだ

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チャレンジを完遂できる強固な基盤を作ることが目的でした
マン・シャーマ
シャーマは次のように説明している。
「距離的には短いトレーニングでしたが、チャレンジを完遂できる強固な基盤を作ることが目的でした。臀部ハムストリングを強化しつつ、すねの前側にある脛骨筋も鍛えました。また着地をコントロールするためにつま先も強化しました。さらに、呼吸と心拍数のコントロールにもフォーカスして、長時間エフォートを維持できるようにしました」
チャレンジ本番の約40日前、シャーマは別のテストを行い、自分に最適な栄養摂取方法摂取のタイミングと量、そしてリカバリーを最適化する休息と睡眠のパターンを見極めた。そこからはしばらくバーピーから離れ、身体の強化をさらに進めていった。
「このようなチャレンジに向けて万全な準備をすることは不可能です。ある程度まで準備をしたらあとはやるしかありません」
04

リラックス・再補給・休息・再開

8日間と5時間をかけてバーピーブロードジャンプで42.195kmを完走

8日間と5時間をかけてバーピーブロードジャンプで42.195kmを完走

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2025年10月6日、シャーマはデリーのジャワハーラール・ネイルー・スタジアムでチャレンジをスタートさせた。彼はバーピーブロードジャンプマラソンを8日間で完了する予定だったが、1日単位の目標は定めていなかった。ストラテジーは「1kmずつ消化していく」だった。
バーピーブロードジャンプで1kmを走破するためには約2時間が必要で、バーピーはそのあとに休息を入れて再開するという方法を採用し、このルーティンを完走するまで続けた。
「ある時点から、1kmをどれだけ早く終えて休息をしっかり取れるかというメンタルの戦いになりました」
休息時間はバーピーブロードジャンプをしている時間と同じくらい重要だった。シャーマはさっとシャワーを浴びたあと、チキン、ライス、パスタ、またはサラダで構成されている軽食を摂ると、理学療法士によるマッサージで筋肉をほぐしてから40分間仮眠をとった。そして目覚めたあとは軽めのウォームアップをしてから大記録へ向けてまた一歩ずつ前進を続けていった。
時間が経過していくと、スーフィー(インドの伝統的な宗教音楽)が鳴り響くスタジアムに観客が出入りするようになった。そのため、シャーマはゾーンに入って集中を維持した。痛みや疲労が蓄積していったが、チャレンジを断念しようという思いが彼の脳裏をよぎることはなかった。
今、私は不可能を完全に信じることができています。また、あの苦痛を二度と味わう必要がないことも知っています
マン・シャーマ
「 “君は頑張ったよ” という言葉を素直に聞ける状態ではありませんでした。本当に限界が試されましたし、すべてを出し切っていたので話せないときもありました。血糖値が下がりきり、6日目には水分過多で肝臓に激しい痛みが生じました。とにかく自分が直面している問題に力を割かないように意識しました」
ゴール前100mで、シャーマは周囲の人たちにゴールまで並ぶように頼み込んだ。目の前に彼を応援する人たちの頭の海が広がり、その数秒後にすべてが終了した。8日と5時間を要した全力のチャレンジが完結し、ギネス世界記録に認定された。
「最後は落ち着いていて充足感に満ちていました。今、私は不可能を完全に信じることができています。また、あの苦痛を二度と味わう必要がないことも知っています」
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