HYROX:栄養士とアスリートが教えるレース前中後の食事・補給方法
HYROXのレース前や後には何をどのくらい摂取すべきなのだろうか? 第一線で活躍するプロアスリートと栄養士たちが食事・栄養補給に関するアドバイスを送ってくれた。
アレクサンダー・ロンチェヴィッチ、ルーシー・プロクター、ジョアンナ・ヴィトリックを含むすべてのHYROXトップアスリートは、ワークアウトでの栄養補給がレース本番でのパフォーマンスと同じくらい重要であることを知っている。
栄養補給を正しく行えば、ベストパフォーマンスを発揮するために必要なすべてを体内に用意できるようになると同時に、レース中に辛くなってきたときに「自分ならできる」と言い聞かせることもできるようになる。
「HYROXに関する大きな誤解のひとつが、“HYROXはストレングス(筋力)を競うイベントなので、クリーンな食事をしていれば十分” というものです」と語るのは、オーストリアに置かれているレッドブル・アスリート・パフォーマンス・センターの栄養士、ナタリー・エクセターだ。「残念ながら、この考えでは燃料不足に陥ってしまい、パフォーマンスとリカバリー両方に悪影響を及ぼします」
HYROXに関する大きな誤解のひとつが、“HYROXはストレングスを競うイベントで、そのためのクリーンな食事をしていれば十分” というものです
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ステーションではなくエフォートに合わせて補給
一部のフィットネスレースはストレングスにフィーカスしており、また別のフィットネスレースは持久力にフォーカスしているが、HYROXはストレングスと持久力の両方にフォーカスしている。つまり、ランニングとファンクショナルワークアウトステーションに耐えられるように補給する必要があることを理解しておくことが優秀な補給プランのカギになる。
エクセターは次のように続ける。「HYROXは高強度の持久力が問われるイベントに反復ストレングスワークを加えたものです。スレッドプッシュ、バーピーブロードジャンプ、ウォールボールなどを完了できるかどうかは、自分にどれだけのエナジーが残っているかによって大きく左右されます」
言い換えれば、エナジーがすべてなのだ。「ランまたはスレッドプル・プッシュを問わず、身体はエナジーを頼りにします」と語るのは、ハリー・ケインやジャック・グリーリッシュのようなプロサッカー選手やコナー・ベンのようなプロボクサーのために仕事をした経験を持つアスリート専門料理人 / 栄養士のダン・サージェントだ。彼は次のように続ける。
「HYROXの特徴は、リカバリーする時間がほとんどない中で、持久力・ストレングス・パワーがコンスタントに切り替わっていくところにあります」
エクセターがさらに続ける。「ですので、カロリーも重要になってきますが、HYROXの補給に関しては、カロリー摂取量と消費量の関係以上を見ていく必要があります」
HYROXで求められることは非常にユニークだ。なぜなら、HYROXアスリートはランニングと筋持久力系ワークアウトを交互に進めていく必要があるからだ。この組み合わせでは、筋グリコーゲン、つまりは体内に貯蔵されている糖質(炭水化物)がかなり重要になる。
しかし、糖質を体内に貯蔵する作業、いわゆるカーボローディングはレース当日の朝からでは遅い。エクセターはレース当日の2〜3日前から始める必要があるとし、次のように説明する。「アスリートは筋グリコーゲンの量を維持するために、糖質を毎日適量摂取しつつ、筋肉の修復と適応をサポートするためにプロテインも定期的に摂取していく必要があります」
この摂取量には個人差があるので、レース当日に不足状態に陥らないようにトレーニングで色々と試しておくことが重要だ。
02
女子と男子の違い
ジェンダーを問わずHYROXレースの基本は同じだが、エクセターは「女子アスリートは燃料不足に陥る確率が男子よりも高いです。ダイエット的な身体組成の目標も設定している場合はその確率がさらに高まります」と語っている。また、彼女は慢性的にエナジーが不足していると、リカバリーや適応、パフォーマンスだけではなく、月経機能にも悪影響があると続けている。
「女性は鉄分の摂取量や月経周期から来る食欲の変化、糖質量などにより注意する必要があるかもしれません。これらはどれもトレーニングの質、リカバリー、そして長期的なパフォーマンスに影響を与える可能性があります」
サージェントは、自分のジェンダーやレベルに関係なく、栄養補給面に加えられる最大の変更は「プロアスリートのように考えて、食事をすることです」としている。
これは、プロテインを摂取してリカバリーを促進し、トレーニングに合わせて糖質量を調整することを意味する。ここには、高質な脂質を摂取し、水分を十分に摂取し、休息を取ることも含まれる。これらはトレーニングにフォーカスすることと同じくらい重要だ。
03
HYROXトレーニング中の食事
トレーニングは、栄養補給プランを調整し、水分補給プランをまとめ、自分に合った食品を見つけていく時間でもある。
エクセターは、60〜90分以上続くトレーニングセッションでは、スポーツドリンクやエナジージェルなどから1時間あたり30〜60gの糖質を摂取してエナジーレベルを保ち、疲労を遅らせ、トレーニングの質を高めることを推奨しており、次のようにアドバイスを送っている。
「より短時間のストレングス系セッションでは、水分補給の心配はまずありませんが、長時間のハイブリッド系セッションでは糖質と電解質ドリンクの補給が有用です」
「私の場合は、栄養補給プランはレースの2日前から始まります」と語るのは、男子史上初の53分切りを達成したことで知られるヒッデ・ウィールスマだ。「何よりも重要なのは、レースの何日も前からしっかりと糖質を補給しておくことです。HYROXは超高強度ですので、大量の糖質を消費します」
これができていれば、自信が生まれ、レース中に燃料切れになってしまうのではないかという不安を取り除いてレースに挑めるようになる。
04
レース当日の朝食
エクセターは、基本的なガイドラインとして、HYROXレース当日の朝食は多くの糖質と適量のプロテイン、少ない脂質のバランスが取れているべきとしている。「レースの3〜4時間前、アスリートは体重1kgあたり1〜4gの糖質を補給しておくべきです。時間に余裕があるなら多め、ギリギリなら少なめでOKです」
エリート15に参戦しているルーシー・プロクターは、ポリッジ、ベーグル、ジャムを朝食にしている。「朝食では、食べやすくて消化しやすいものから糖質400gを摂取するようにしています。プロテインは特に意識していません。脂質は少なく抑えていますね。いわゆるカーボローディングとは異なります。多くの人がカーボローディングに取り組んでいますが、私はメリットを見出せていません」
ヒッデはやや異なる。「一番重要な食事はウォームアップの3時間前に食べるようにしています。食べるのはケチャップライスのみですが、糖分・塩分・炭水化物を同時に摂取できるのでパーフェクトな食事です。レースで必要になるのはこれだけですからね。あとはレース1時間前にハチミツを塗ったベーグルか、ハチミツをかけたバナナを食べています」
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レース前は繊維質を控える
ヒッデはレースの48時間前から脂質と繊維質を抑える(ゼロにはしない)ようにしている。「食物繊維は水分と強く関係しているので、レース前に繊維質を控えるようにすれば、体内の水分量を少し抑えて軽量化が狙えます。レースを軽量で迎えられるのはアドバンテージになります」
サージェントも同意しており、次のように続けている。「レースの24〜48時間前から繊維質を控えると、腸の負担が少なくなり、レース中に胃腸の不具合を感じる確率が低くなります」
これは “胃腸が消化しなければならないものを減らす” ことが目的だ。レース系プロアスリートの多くが取り組んでいる。スリムになることよりも、快適にレースを進めることが何よりも重要なのだ。
サージェントがさらに続ける。「とはいえ、繊維質をゼロにはしません。繊維質は健康的な食事に不可欠です。急激な変更ではなく、小さな調整を加えていくことが大切です」
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レース後のリカバリー
HYROXでは大量の筋グリコーゲンが消費されるため、レース終了直後に糖質を補給してエナジーレベルを戻しつつ、次のパフォーマンスを低下させないようにリカバリーしておくことが重要だ。「筋肉の修復にはプロテインが重要ですが、プロテインだけではなく糖質も摂取すれば最高のリカバリーになります」とエクセターは説明している。
サージェントが続ける。「リカバリーの優先順位はシンプルです。まず、筋グリコーゲン量を元に戻し、次に筋肉に高質なプロテインを与えて修復を促し、最後に汗で失った水分と電解質を補給します」
エクセターは、高質なプロテイン20〜40gと大量の糖質、そして水分と電解質がリカバリーに必要としている。たとえば、①リカバリーシェイクとフルーツ、②チキンと米・野菜、③サーモンとポテト、④グラノーラとベリー類を加えたギリシャヨーグルトがメニューとして考えられる。
何を食べるかは個人の自由であり、自分に合ったものを食べることが重要だ。また、楽しめることも意識したい。レース後の食事はリカバリーのためだが、同時に自分へのご褒美でもあるので、“食べたい!” と思うものを軸に考えて良いだろう。
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トレーニングでの栄養補給
エクセターは、一般的なHYROXトレーニングにおける栄養補給の基本プランは「ワークアウトに必要な分を摂取する」になるとしている。
つまりこれは、その日のトレーニングの内容に沿ったエナジーと糖質を摂取することを意味する。たとえば、ロングランやレースシミュレーション、または長時間のワークアウトセッションではより多くのエナジーと糖質を摂取し、軽めの調整やリカバリーではより少ないエナジーと糖質を摂取する。
突き詰めれば、トレーニングで何を摂取すべきかに関する万能な回答は存在しないということだ。しかし、もし悩んでいるなら、以下をガイドとして活用しても良いだろう。
朝食
オーツ、ギリシャヨーグルト、ベリー類、シード類、ハチミツ少量を加えたビルヒャー・ミューズリー
昼食
モロッカンチキンまたは豆腐(クスクスとミックスサラダ添え)
夕食
タイ風チキンまたは豆腐カレー(野菜とジャスミンライス添え)
覚えておきたいのは、パフォーマンスやトレーニング用の食事のすべてが無味乾燥なものである必要はないということだ。食事は楽しめるものであるべきだ。なぜなら、楽しめていればそれだけ続けられるようになるからだ。
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