全長20.832kmのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェは、世界最長・最恐のサーキットだ。そしてドイツ・アイフェル地方に位置するこの世界的に有名なサーキットの1周には、最大勾配18%・最大傾斜11度の75コーナーが含まれている。
5月14日から17日までこのサーキットで開催されるニュルブルクリンク24時間レースに初出場するマックス・フェルスタッペンが走行するこのコースの中から、特に有名な10セクション / コーナーを紹介しよう。
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ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェとは?
- 所在地:ドイツ・ニュルブルク
- 全長:20.832km
- コーナー数:73
- 最大勾配:18%
- ファステストラップ:5分19秒546(ティモ・ベルンハルト / ポルシェ919ハイブリッドEVO / 2018年)
レジェンドF1ドライバーのサー・ジャッキー・スチュワートによって “グリーン・ヘル / 緑の地獄” というニックネームが付けられているノルドシュライフェ(北コースの意味)は、滑らかな舗装路・低い縁石・広いランオフエリアを要する通常のサーキットと比較すると非常に高難度だ。
見通しの悪いクレスト(上りの頂点)、変化する路面、そして最終端でようやく開けてくるコーナーを備えているこのサーキットは周囲を深い森と高い生け垣に囲まれていることも特徴で、ドライバーたちは唯一無二のドライビングエクスペリエンスを得ることになる。
レッドブル・チームABTのランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO2のようなSP9クラスの車両はニュルブルクリンク24時間の1周に8分以上費やす。実はこのレースではノルドシュライフェとグランプリサーキットのショートバージョンを加えたコースを使用するため、1周の全長が25.378kmとノルドシュライフェよりもわずかに長いのだ。
今回は、ノルドシュライフェにフォーカスして、名物セクション・コーナーのベスト10を紹介しよう。
02
ザビーネ・シュミッツ・カーブ(1km地点)
最初の重要セクションはニュルブルクリンク・ノルドシュライフェの最序盤に位置する。ザビーネ・シュミッツ・カーブはドライバーたちに “緩やかなスタート” を与えない。このサーキットの難度を高らかに宣言するコーナーだ。
2021年、ザビーネ・シュミッツ逝去を受けて、このセクションに彼女の名前が冠された。レーシングドライバーのシュミッツは “グリーン・ヘル” を代表するドライバーで、このサーキットを熟知していた。
コーナーはやや高速・ブラインドとなっており、不注意なドライビングをしていればすぐにその代償を払うことになる予測不可能性も備えている。アプローチを間違えば、次のコーナーまで修正できないだろう。
元F1ドライバーのセバスチャン・ベッテルとデビッド・クルサードがRB7とRB7でノルドシュライフェを攻めた動画をチェック!
03
ハッツェンバッハ(2km地点)
ザビーネ・シュミッツ・カーブの直後、ドライバーたちはノルドシュライフェが休む暇を一切与えない非情なサーキットであることを学ぶ。ハッツェンバッハは、オーバーテイクがほぼ不可能、テクニックがすべてのセクションだ。ここではドライバーたちが短時間で急速にステアリングを操作する必要がある。
全長が1km未満ながら左・右・左・右とタイトに変化するここでライン取りを誤れば、セクション全体のリズムを失うことになる。ハッツェンバッハの理想的なライン取りは、このサーキットを走り込んできたベテランドライバーのみに許される。
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シュヴェーデンクロイツ(4〜5km地点)
歴史とスピードが交わるセクションがシュヴェーデンクロイツだ。1638年、三十年戦争中だった1638年、ケルベルク市長ならびにアーデナウの徴税官だったハンス・フリードリッヒ・ダーテンベルクがスウェーデン人兵士に殺害された。
そのダーテンベルクを弔う石の十字架がサーキット右側に今も立っており、シュヴェーデンクロイツ(ドイツ語で “スウェーデンの十字架”)というセクション名はここから取られた。
このセクションを定義づける高速左コーナーは、ノルドシュライフェ最高難度コーナーのひとつに数えられており、進入が早すぎればアンダーステアが出過ぎてしまい、進入が遅ければオーバーステアが出過ぎてしまう。そのため、ウェット時は特に危険になる。
ここをクリーンに抜けられれば、ノルドシュライフェを支配できた感覚が一瞬得られるが、“グリーン・ヘル” はまだ始まったばかりだ。
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フックスローレ(5〜6km地点)
このセクションの傾斜約11度はノルドシュライフェ最大だ。また、Gフォースも高く、ドライバーたちはブレーキング時にシートへ激しく押しつけられることになる。この直後にはアデナウアー・フォレストの上りが待っている。
マシンは下りながらほぼ自動で加速していくため、ノーマルブレーキなら限界を迎えることになる。特に注意したいのは急傾斜で長いダウンヒルセクションで、高速走行から一気にブレーキングするとブレーキがオーバーヒート状態に陥ってしまう。
フックスローレ(ドイツ語で “キツネトンネル”)という名称は、ノルドシュライフェ建造中にキツネがここの排水管に入り込んでしまったことから取られている。左右から覆い被さる森はトンネルのようで、ドライバーたちは木々が自分たちに向かって倒れてくるような感覚を得るとしている。
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アデナウアー・フォレスト(6〜7km地点)
フックスローレのあとはひと息つくスペースがほとんどない。勾配が大きいこのセクションのシケインは最後の最後まで見えてこない。アデナウ市の森を抜けるこのセクションは、連続コーナーを擁する難所として知られている。
このようなアデナウアー・フォレストは、不慣れなドライバーがアプローチを間違えることが少なくないため、観戦スポットとしても有名だ。観客にはエンターテインメント性の高いセクションだが、ドライバーたちにとってはそうでもない。初心者なら特に注意が必要だ。
07
ベルクヴェルク(10km地点)
ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェにおいて、ベルクヴェルクほど歴史的なセクションはないだろう。
1976年、ニキ・ラウダがF1ヨーロッパグランプリを走行中にこのセクションの高速左コーナーでフェラーリをクラッシュさせ、一命を取り留めたものの大怪我を負ってしまう。しかし、ラウダはその後懸命のリハビリで現役復帰すると、さらに2回のワールドチャンピオンを手にした。
ベルクヴェルクという名称は、1900年頃まで稼働していた巨大な鉛・銀鉱山に由来する。コーナーは長くて視認性が悪く、マシンのセットアップに自信がなければ攻略できない。
また、ウェットのベルクヴェルクはコースで最も危険なセクションになる。路面温度が他のセクションよりも遅く下がり、パドルが消えるまでの時間も長いからだ。無謀なドライビングをすれば必ずその代償を払うことになるだろう。
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カラチオラ・カルーセル(13km地点)
どのアイコニックなサーキットにもそこを代表するコーナーが存在する。スパならオー・ルージュ、鈴鹿なら130R、ラグナ・セカならコークスクリューがそうだ。そして、ノルドシュライフェならこのカラチオラ・カルーセルになる。世界的に有名なこの210度コーナーはファンの間で人気が高く、1932年には急角度のコンクリート壁が追加された。
ルドルフ・カラチオラは(メカニック2人の助言を受けて)、この “カルーセル” のイン側を攻めるドライビングを初めて試したドライバーで、その偉業を称えて2006年に彼の名前が付けられた。
アウト側をドライブすればタイムを失ってしまうため、ドライバーたちはイン側のコンクリートの走行を試みるわけだが、イン側はマシン全体が激しく振動する。その振動の激しさは数キロ先でも身体から消えないほどだ。
09
プフランツガルテン(16〜17km地点)
プフランツガルテンは、多くの車両が一時的に “コースから浮く” ことで有名で、2つの連続ジャンプ(プフランツガルテン1とプフランツガルテン2)を擁する。このセクション名はかつてこの周辺に存在したニュルブルク伯所有の庭園に由来する。
このセクションでは、ブレーキングが早すぎると、クレストでトラクションが失われ、逆にブレーキングが遅すぎればコースから浮いてしまう。プフランツガルテンのバンプは、ノルドシュライフェの動画やレポート、クラッシュなどを調べたことがある人なら誰もが知っている。
10
ステファン・ベロフS字コーナー(17〜18km地点)
平均時速200km超でノルドシュライフェを周回した世界初のドライバー、ステファン・ベロフに敬意を表して名付けられたこのセクションは、歴史に残るだろう。
1983年5月28日、1000kmレースに向けてポルシェ956でこのコースでトレーニングに励んでいたベロフは平均時速200kmオーバーを記録した。ベロフはF1グランプリ優勝経験がないものの、今もドイツ史上最速ドライバーのひとりに数えられている。
ベロフはこの記録を樹立してから2年後にスパ・フランコルシャンで不慮の事故に遭い落命したが、2013年からノルドシュライフェのS字セクションに彼の名前が冠された。ハイレベルなテクニックが求められるこの高速セクションではミスが許されない。クリーンなドライビングができれば、一時的にトップドライバーの仲間入りができる。
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シュヴァーベンシュワンツ(18〜19km地点)
シュヴァーベンシュワンツまで到達できたドライバーはニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ周回をほぼ完了したと言えるが、もちろん、まだ終わりではない。上空から眺めるとツバメの尾のような形をしていることに由来するシュヴァーベンシュワンツ(ドイツ語で “ツバメの尾”)は、ガルゲンコプフへ続く小さ目の急勾配カーブを擁する。
プフランツガルテンとステファン・ベロフS字コーナーのあとドッティンガー・ホーエに到達したドライバーは現実に戻ることができる。シュヴァーベンシュワンツはタイトで予測不可能な急勾配カーブで、ロングストレート直前の最後の試練だ。ここでミスをすればタイムだけではなくマシンも失う可能性もある。
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ボーナス:ドッティンガー・ホーエ(19〜20km)
小さなヘアピンとガルゲンコプフのあと、ノルドシュライフェは徐々にドライバーたちを解放していく。ドッティンガー・ホーエはヨーロッパ最長の全開セクションのひとつだ。シュヴァーベンシュワンツを抜けたあと、ドライバーたちは “地獄” から解放され、誰もがアクセルを踏み込むことになる。
ここでスリップストリームとトップスピードを活かせるかどうかが、レース結果を左右する。また、このフィニッシュ前のロングストレートに入って初めて、ドライバーは “ニュルを攻略した” 感覚を得ることができる。
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