Gachikun, Daigo and Bonchan test Street Fighter 6 for Red Bull Levels: Street Fighter 6 - Capcom at the Red Bull Gaming Sphere in Tokyo, Japan on January 25, 2023.
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eスポーツ

『ストリートファイター6』:モダンとクラシックの違いは?

『スト6』には新たな操作方法《モダン》が追加されたが、この操作方法はプレイヤーやキャラクターを問わず便利なのだろうか? 《モダン》と《クラシック》を比較してみよう!
Written by Luke Wakeham
読み終わるまで:9分Published on
『ストリートファイター6』には《モダン》《クラシック》という2種類の操作方法があるが、どちらが優れているのだろうか? 《モダン》は新規プレイヤーの増加に貢献するのだろうか? それともプレイヤーレベルを低下させるのだろうか?
『ストリートファイター6』が2023年6月2日にリリースされると、今作からより簡単かつ楽しく格闘ゲームをプレイしてもらうために新たに用意された操作方法《モダン》が議論の的になった。この操作方法の採用によって『ストリートファイター』シリーズは難しいと思い込んでいた多くのプレイヤーが、突如として興味を持つようになった。
今作には『ストリートファイター』シリーズ伝統の操作方法《クラシック》として残されているが、経験豊かなプレイヤーたちは、《モダン》によって同レベルのプレイヤー層が薄くなるのではないかと危惧することになった。
では、実際は《モダン》と《クラシック》のどちらが優れているのだろうか? この疑問に回答する前に、まず《モダン》とは何かを理解しておく必要がある。
基本中の基本 “波動拳”

基本中の基本 “波動拳”

© Capcom

『ストリートファイター』シリーズは6ボタンを使用する格闘ゲームで、この6ボタンは弱中強パンチ弱中強キックに振り分けられてきた。《クラシック》はこのボタン配置での操作方法を指すが、《モダン》はボタン数が4個に減っており、弱中強攻撃用ボタン3個と必殺技用ボタン1個に振り分けられている。また、必殺技を出すために必要なスティック(方向キー)の操作も省略されている。
たとえば、《クラシック》でリュウ“波動拳” を出す場合、プレイヤーはスティックを6時方向から45度回転させて、いずれかのパンチボタンを押す必要があるが、《モダン》では必殺技ボタンを押すだけで出せるのだ。
カプコンは『ストリートファイター6』に新規プレイヤーを呼び込むためにこの《モダン》を用意した。格闘ゲームの新規プレイヤーが直面する大きな問題のひとつが操作方法の複雑さで、これが理由で格闘ゲームをプレイしなくなるプレイヤーは少なくない。
“波動拳” や “昇龍拳” を出し合って気楽に対戦を楽しみたいだけなのに、技を出せるようになるためには練習をある程度重ねてマッスルメモリに記憶しなければならないと言われれば、気が引けてしまう。
《モダン》はこの問題を解消して、プレイヤーたちにすぐに楽しくプレイしてもらうために開発された。カプコンはビジュアルとプレイを磨き上げるためにかなりの時間と労力を注いできた『ストリートファイター6』を、なるべく多くの人にプレイしてもらいたいと考えているのだ。
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モダンの良い点・悪い点

《モダン》には良い点と悪い点がある。良い点は、『ストリートファイター6』がより幅広い層へアピールできるところだ。
《モダン》を選択すれば、ちょっと興味があるだけのプレイヤーも対戦を楽しむことができる。また、《モダン》は『ストリートファイター』やその他の格闘ゲームのプレイを真剣に学びたいプレイヤーにとっての入り口としても機能する。
『ストリートファイター』シリーズには入力が複雑な技が存在する

『ストリートファイター』シリーズには入力が複雑な技が存在する

© Jason Halayko/Red Bull Content Pool

格闘ゲームが難しいとされる理由は必殺技の入力だけではない。“昇龍拳” を出せるようになるのは確かに重要だが、技を出すタイミングを知っておく必要もある。 “昇龍拳” をノンストップで出せるようになればオンライン対戦で連勝できると思っている人は、すぐに敗者側へ回ることになるだろう。
このようなビギナープレイヤーが学ぶべきことは “昇龍拳” を出すタイミング、つまり対戦相手がジャンプして自分へ向かってくる瞬間だ。“昇龍拳” は格闘ゲームの世界では “対空技” として知られており、飛びかかってくる対戦相手を撃ち落とすのに有効だ。
このように技を出すタイミングが重要という理由から、《モダン》では、前・下・斜め前のスティック操作とパンチボタンを矢継ぎ早に入力できるようになる練習をしなくても、シンプルにスティックを前に入れて必殺技ボタンを押すだけで “昇龍拳” が出せるようになっている。
このような簡略化された操作を “逃げ” に思う人もいるかもしれない。しかし、格闘ゲームは非常に高速なため、攻撃・防御のタイミングを理解するのが非常に難しく感じる新規プレイヤーがいることを思い出す必要がある。
ガイルの “サマーソルトキック” は優秀な対空技

ガイルの “サマーソルトキック” は優秀な対空技

© Capcom

《モダン》では、「技の出し方」に関する障壁が取り払われている一方、より重要とされる「技を出すタイミング」は依然として学ばなければならない。つまり、新規プレイヤーは「操作方法の学習に飽きてしまう」前に、優秀な『ストリートファイター6』プレイヤーになるために必要な基礎を習得できるのだ。
また、《モダン》にはアシストボタンが用意されており、アシストボタンを押しながら攻撃ボタンを連打するだけで自動でコンボを出せるようになっている。一方、《クラシック》ではコンボを出すためにはかなり複雑な連続入力が必要になる。
今作ではコンボにも技と同じ原則が採用されており、適当に攻撃ボタンを連打するだけで簡単にコンボを出せるようにすることで、“効果的な” コンボを理解できるようになる。
しかし、《モダン》は勝利を約束してくれるわけではない。必殺技ボタンと簡単な入力の犠牲として、各キャラクターは特定の技が出せなくなっている。上述した通り、『ストリートファイター』シリーズは6ボタンの格闘ゲームで、弱中強のパンチとキックで構成されている。これを3ボタンにするということは、単純にプレイヤーの攻撃の選択肢が半分に減らされるということを意味する。
《モダン》のプレイヤーは必殺技を余裕を持って出せるようになるので、この犠牲はさほど重要ではないように思えるかもしれない。しかし、攻撃の選択肢が失われるということは、そこから派生できるコンボの選択肢が失われることを意味する。
格闘ゲームのコンボはプレイヤーに爽快感を与えるためだけのものではない。成功させることができれば、連続で大きなダメージを与えることができる。また、攻撃を連続で仕掛けることで、対戦相手は攻撃を出せなくなる。言い換えれば、《モダン》は攻撃の選択肢が少ない分、攻撃で押し込む(プレッシャーをかける)のが難しいのだ。
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モダンに向いている / いないキャラクター

『ストリートファイター6』には《モダン》で大きなアドバンテージを得られるキャラクターが存在する。たとえば、エドモンド本田マノンのようなコマンド投げのキャラクターは、スティックを半周させる投げ技を備えているが、このような技はプレッシャーを受けながら出すのが非常に難しい。
《モダン》ではこれがボタン1個とスティックを倒すだけで出せるので、プレッシャーを受けながらでも出すことができる。しかも、その効果や使い方も手早く理解できる。
スティック1回転の入力が必要で出すのが難しい(空中でしか出せないものも含まれている)投げ技を2種類備えているザンギエフも同じで、これらの投げ技を簡単に出せるようになる。
ザンギエフの投げは強力だが入力やタイミングが難しい

ザンギエフの投げは強力だが入力やタイミングが難しい

© Capcom

一方、《モダン》では多くを失ってしまうキャラクターもいる。ブランカ春麗のような “溜め技を持つキャラクター” は特にそうだ。
択攻めを得意とするブランカは豊富に揃っている上段 / 下段技を組み合わせて対戦相手に揺さぶりをかけていくのが基本の立ち回りだが、《モダン》でのブランカは相手のしゃがみガードを突破できる中段攻撃ができないため、性能が大きく制限されてしまう。
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クラシックの特徴

ここまで《モダン》のメリットを書いてきたが、《クラシック》が取って代わられたわけではない。《クラシック》は依然として人気の操作方法で、1987年にリリースされた『ストリートファイター』第1作から同じ入力の技もある。
先述した通り、《クラシック》は『ストリートファイター』シリーズ伝統の6ボタンレイアウトを採用しており、弱中強のパンチとキックが用意されている。つまり、《クラシック》では、各キャラクターに用意されているすべての技を出せるのだ。
記念すべき第1作『ストリートファイター』

記念すべき第1作『ストリートファイター』

© Capcom

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クラシックの良い点・悪い点

《クラシック》では、各キャラクターに備わっているすべてのコンボや対抗技を選択できるため、それぞれのポテンシャルをフルに引き出せる。しかし、《クラシック》でプレイするためにはより高いスキルレベルが必要になる。
そのようなスキルレベルを手にしている『ストリートファイター』シリーズのプロプレイヤーたちは、当然ながら《クラシック》を選択してすべての選択肢を使えるようにしている。
【Red Bull Kumite 2023】を制したAdel “Big Bird” Anouche

【Red Bull Kumite 2023】を制したAdel “Big Bird” Anouche

© Tyrone Bradley/Red Bull Content Pool

《クラシック》と《モダン》の違いは自動車のマニュアルとオートマの違いに置き換えられる。オートマ車はドライバーからギア操作の難しさとそこから来るストレスを取り除いてくれるが、エンジンをコントロールできない。勝手にギアが切り替わるオートマ車で急坂を登るときに、ギアを任意に下げてパワーを得られないことに不満を感じる人もいるだろう。
このような特性を持つ《モダン》に対して、《クラシック》は操作は複雑かもしれないがあらゆる状況に対して適切な行動を取れる
《クラシック》の悪い点は、とにかく慣れるまでに時間がかかるということだろう。プレイヤーが覚えなければならない技の数は非常に多く、中には非常に難しいものも存在する。
たとえば、キャミィのスーパーアーツ “デルタレッドアサルト” はスティック1/4回転を2回繰り返しつつパンチを入力する必要がある。この技を相手に悟られることなく正しいタイミングで入力できるようになるのは簡単ではない。新規プレイヤーが最強技を出すためには複雑な入力が必要なことを知って気落ちしてしまうのは驚きではないのだ。
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モダンとクラシックのどちらが良いのか?

《モダン》と《クラシック》を比較しても絶対的な答えは出ない。結局のところ、どちらが “今の自分” に適しているのかという話だ。
《モダン》ではこれまでにない形で格闘ゲームを学ぶことができる。技の入力を学ぶ代わりに、状況ごとにどのような立ち回りをするのが良いのかを先に学べるのだ。そして、立ち回りの基礎を学んだあとで《クラシック》へ切り替えて、自分のメインキャラクターのすべての技を学んでいくことができる。
《モダン》は、『ストリートファイター』シリーズに新規プレイヤーを呼び寄せ、彼らに楽しんでもらうためのカプコンの施策だが、《クラシック》では真剣に格闘ゲームに取り組んで、競技としての格闘ゲームを学べる。
結局のところ、《モダン》と《クラシック》の比較における “勝者” は私たちプレイヤーだ。それぞれがプレイヤーにこのゲームの違った側面と選択肢を教えてくれるので、レベルを問わずすべてのプレイヤーが一緒に対戦を楽しむことができる
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