Isack Hadjar of France driving the (6) Oracle Red Bull Racing RB22 Red Bull Ford leaves the garage during day three of F1 Testing at Bahrain International Circuit on February 20, 2026 in Bahrain.
© Getty Images/Red Bull Content Pool
F1

レッドブル&フォード:F1パワーユニットの先へ向かう新パートナーシップ

大規模なレギュレーション変更が行われるF1 2026シーズンからレッドブルの2チームにフォードと共同開発中の新パワーユニットが導入されるが、両社のパートナーシップはそのさらに先を見据えている。
Written by Paul Keith
読み終わるまで:12分Published on
F1 2026シーズンは大規模なレギュレーション変更が行われ、エンジンパワーに重点が置かれることになるが、オラクル・レッドブル・レーシングにとって、特に大きなチャレンジになる。なぜなら、これまで彼らが得意としてきたのは最大限のダウンフォースとグリップが得られる空力性能を備えたシャシーの開発だったからだ。
オラクル・レッドブル・レーシングのF1マシンが誇ってきた高速コーナーリング性能により、マックス・フェルスタッペンセバスチャン・ベッテルダニエル・リカルドは自分たちのマシンよりもエンジンパワーが大きなマシンたちを向こうに回して勝利できていた。
テスト中のマックス・フェルスタッペンとポール・モナガン(ヘッド・オブ・カーエンジニアリング)

テスト中のマックス・フェルスタッペンとポール・モナガン(ヘッド・オブ・カーエンジニアリング)

© Getty Images/Red Bull Content Pool

とはいえ、ミルトン・キーンズに拠点を置くこのチームにとって、これまでの道のりは決して楽ではなかった。2014シーズンに採用された新レギュレーションによって圧倒的な強さを誇ってきた彼らの空力性能は無力化された。そしてこの頃の彼らのF1マシンに積まれていたルノー製パワーユニットはパワー不足だった。

オリジナル缶

レッドブル エナジードリンク

Red Bull Energy Drink
この結果、そこから数シーズンに渡り、レッドブル・レーシングは度々勝利を挙げたものの、タイトルに挑むことはできなかった。この流れが変わったのが2021シーズンと2022シーズンで、グラウンドエフェクトの復活によりオラクル・レッドブル・レーシングは記録更新の素晴らしい2シーズンを送ることができた。
オラクル・レッドブル・レーシングが同時期にパワーユニットの内製を決定したのは偶然ではない。上記のような経緯から、チームはサードパーティのエンジンサプライヤーに自分たちの命運を握らせるのはもう勘弁と思っていたのだ。
01

パワーユニット内製化の背景

2021年まで、レッドブル・レーシングとファエンツァのシスターチームフェラーリコスワースルノーホンダが提供するパワーユニットを自分たちのシャシーに載せていた。
しかし、これには問題があった。このようなサードパーティのマニュファクチャラーはライバルチームや自分たちのワークスチームにもパワーユニットを提供できたからだ。一方、エンジンも内製するフルワークスチームなら、自分たちで設計したエンジンをベースにシャシーをデザインできるメリットが得られる。
リアム・ローソンに先行するマックス・フェルスタッペン

リアム・ローソンに先行するマックス・フェルスタッペン

© Getty Images / Red Bull Content Pool

そこで2022年、レッドブルはレッドブル・パワートレインズを設立した。彼らは10年間に渡りレッドブル・レーシングとレーシング・ブルズにパワーユニットを供給してきたホンダ製のデザインをベースにして独自のパワーユニットのデザインをスタートさせたが、FIAがエンジン開発の凍結を決定したため、より強力なパワーユニットの製造方法を模索する時間が得られなかった。
しかし、2023年、レッドブル・パワートレインズはフォードと新たにパートナーシップ契約を結び、レッドブル・レーシングとレーシング・ブルズを上位へ引き上げる新世代パワーユニットの共同開発に乗り出すことを決定。この結果、2026シーズンにレッドブルはシャシーデザインからパワーユニット開発までも手がけるようになったF1史上初のチームになる。
02

フォードとF1の関係

オラクル・レッドブル・レーシングと同じく、フォードもF1で素晴らしい歴史を積み上げてきた。
伝説のオッフェンハウザー・エンジン(オッフィー)と同じく、フォード・コスワース・DFVエンジンはモータースポーツ史に独自の足跡を残しており、1967シーズンから1985シーズンまで名だたるF1ドライバーたちに計155勝をもたらした。パワフルで安定しており、低価格だったDFVエンジンはその導入のしやすさから、世代をまたいでF1チームたちに愛された。
また、フォードは1990年代にF1チームのスチュワート・グランプリも創設している。このチームはジャガー・レーシングの前身であり、つまりは2005シーズンのレッドブル・レーシング誕生の起源とも言える。
このような歴史を持つフォードが2026シーズンからF1に復帰し、よりクリーンで環境に優しいF1マシンにパワーを与える役目を担う。
長いテストの1日で走行を重ねるマックス・フェルスタッペン

長いテストの1日で走行を重ねるマックス・フェルスタッペン

© Mark Thompson/Getty Images/Red Bull Content Pool

03

新世代パワーユニットの詳細

これまでのパワーユニットと同じように、新型のターボチャージャー搭載ハイブリッドパワーユニットも伝統的な内燃機関とブレーキをはじめとするエネルギー再生システムから出力を得る。しかし、今回はかなり厳しく規定されており、より少ない燃料で1,000馬力以上を出力しなければならず、全出力の50%(この割合は現行の約3倍)が電気モーターで賄われなければならない。
また、100%持続可能な燃料(e-fuel)が採用されるため、化石燃料は一切使用されない。F1はゼロカーボンとなり、燃料使用量も2013シーズンから半減される。さらには耐久性の改善も必要で、各チームはシーズンを通してF1マシン1台あたり3基しか使用できない。規定数を超越した場合はグリッド降格ペナルティを受けてしまう。
このような変更から、各チームにはより経済的で持続可能性も高く、より強力なパワーユニットを開発しなければならないという大きなプレッシャーにさらされている。
04

新世代パワーユニットの背景

F1はテクノロジーと二人三脚のスポーツだ。
最新ハイブリッドエンジンの開発は世界中の自動車メーカーの最優先事項であり、F1に持ち込まれるそのようなハイブリッドエンジンから得られる知見が未来の自動車業界に転用される。スポーツとしてのF1の人気拡大やドキュメンタリーシリーズの配信、映画の公開はその開発に必要な資金を増やすための施策だ。
「F1の技術的なレギュレーションを確認した私たちは、自分たちとの共通点が多いことに気付きました。イノベーションと技術移転における貢献と学習のチャンスが得られると思ったのです」と語るのはフォードのモータースポーツ部門責任者マーク・ラッシュブルック氏だ。「また、スポーツとしての健全性や世界的な人気、観客の多様性における貢献と学習のチャンスも得られるとも思いました」
ピットウォールからテストを見守るリチャード・ウォルバーソンとローラン・メキース

ピットウォールからテストを見守るリチャード・ウォルバーソンとローラン・メキース

© Getty Images/Red Bull Content Pool

2026シーズンからはフォードだけではなくアウディもメルセデス、フェラーリ、ホンダと並んでパワーユニットを供給する。また、2030シーズンまでにキャデラックも内製パワーユニットの使用を始める予定だ。
しかし、パワーユニット開発は非常に難しく、ルノーはF1からの撤退を決定した。彼らが抱えるアルピーヌは2026シーズンからメルセデス製パワーユニットを採用する。
05

レッドブル・パワートレインズとは?

レッドブルはF1チームとして成功を収めてきたが、自社パワーユニットの設計においてはライバルチームのような技術的アドバンテージや知見を備えていなかった。そこで、彼らはベン・ホジキンソンをレッドブル・パワートレインズのテクニカルディレクター(技術責任者)に据えた。
また、スティーブ・ブレウェット(プロダクションディレクター)、オミッド・モスタギーミ(チーフエンジニア / 電子系・エネルギー回生)、ピック・クロード(エネルギー回生メカニカルデザイン責任者)、アントン・マヨ(内燃機関デザイン責任者)、スティーブ・ブロディ(内燃機関オペレーション責任者)の5名も製造ラインに追加している。
ミルトン・キーンズのレッドブル・パワートレインズ施設

ミルトン・キーンズのレッドブル・パワートレインズ施設

© Getty Images/Red Bull Content Pool

レッドブル・パワートレインズの拠点は、レッドブル・レーシング敷地内にある面積465㎡の専用施設だ。レーシング・ブルズは、近隣のビスターの施設が手狭になったことから、ファエンツァのファクトリーと同キャンパス内の施設で業務を進めている。
これらすべての施設にフォードからのエキスパートが加わる予定で、彼らや内燃機関の開発バッテリー電気モーターテクノロジーパワーユニットのコントロールソフトウェアおよび分析などの分野における技術面の知見を提供する。
レッドブルとフォードが組んだ結果、現在、レーシングにおける膨大な知見がバッキンガムシャーの一部に集結しつつあり、レッドブル・レーシングとレーシング・ブルズは2026シーズンの成功に向けて日々努力を重ねている。
06

プレシーズンテストで順調な走行を重ねる

新たなテクノロジーに習熟する走行機会を各チームに与えるべく、バルセロナ(スペイン)でのシェイクダウンテストに続いてバーレーンでのプレシーズンテストが2回行われた。バルセロナでは、ニューマシンRB22と幅広の特徴的なエアインテークを備えたVCARB03がヴェールを脱いだ。
バルセロナでのシェイクダウンを終え、レッドブル・レーシングを率いるローラン・メキースは慎重ながら楽観的な様子で次のようにコメントした。
「今週は多くの収穫を得ることができ、マックス(フェルスタッペン)の経験とエンジニアリングに関するきめ細やかさは、私たちがバーレーンとそれに続くシーズンに向けた準備を整える手助けとなるはずです」
「私が言えるのは、このパワーユニットを実現してくれたファクトリーの全員を大変誇りに思っているということです。もちろん、まだ始まったばかりですし、完ぺきなものはありません。ですが、私たちはすでにこのパワーユニットについて学び始めています」
プレシーズンテストでVCARB03をドライブするリアム・ローソン

プレシーズンテストでVCARB03をドライブするリアム・ローソン

© Getty Images/Red Bull Content Pool

バーレーンではオラクル・レッドブル・レーシング、そしてビザ・キャッシュアップ・レーシング・ブルズ共に、それぞれの新型シャーシとエンジンへの理解を深めるために重要なマイレージを多く重ねることができた。プレシーズンテストで重ねてきた全ての周回は、レッドブル・パワートレインズ及びフォードが新たなパワーユニットを微調整していくにあたり、重要なデータをもたらす。
VCARBのチーフテクニカルオフィサーを務めるティム・ゴスは次のようにコメントした。
「プレシーズンテストは大成功でした。テストは、コースに出てマイレージを稼ぐことが目標ですが、その目標を達成できました」
「レッドブル・フォード・パワートレインズは本当に驚異的な仕事をしてくれています。ニューカマーとしてF1に参加し、初日に200周近くを走行しました。このレベルの信頼性は当然のものとして受け取られがちですが、彼らの成果を過小評価してはいけません」
07

2回のプレシーズンを終えて最速のマシン / ドライバーは?

実際のところは誰にも分からない。バーレーンテスト最終日のトップタイムをマークしたのはシャルル・ルクレールだったため、当然ながらフェラーリが当面の目標だ。
フェラーリ以外では、メルセデスのジョージ・ラッセルキミ・アントネッリがセッション序盤の高温コンディションで楽々と最速タイムをマークしていた。一方、その前日にはランド・ノリス&オスカー・ピアストリのマクラーレン勢が他を圧倒するタイムを記録していた。そして、バーレーンテスト1週目にタイムシートのトップに立ったのはマックス・フェルスタッペンだった。
昨シーズンのワールドチャンピオンであるマクラーレンのチームプリンシパル、アンドレア・ステラは次のように語っている。
「今回のテストで明らかになったのは、フェラーリとメルセデスが倒すべきチームであるということです。マクラーレンとレッドブルは非常に近い位置にいるでしょう」
これがバーレーンテストを終えての各チーム首脳陣の共通認識であるようだ。
RB22のペースを確認するマックス・フェルスタッペン

RB22のペースを確認するマックス・フェルスタッペン

© Getty Images / Red Bull Content Pool

実のところ、マシンの燃料搭載量、エンジンセッティング、ランの距離、使用タイヤ、路面温度など、重要な要素を分かっていないまま、テストでのタイムを深読みし過ぎてしまうのは安易だ。
誰が一番速いのか、3月7日メルボルンでの予選がスタートするまでは分からない。さらに言えば、異なるキャラクターのサーキットで行われる序盤数戦を見てみなければ実際には何も分からないだろう。今のところ分かっているのは、RB22とVCARB03が順調に仕上がりつつあり、両チーム首脳がパワーユニットのパフォーマンスに対して大いに満足しているということだ。
ローラン・メキースは楽観主義と現実的な慎重さを均衡させつつ、次のように語る。
「3年前まで、レッドブル・パワートレインズのファクトリーがある場所には何も建っていなかったことを忘れてはなりません。彼らを大変誇りに思います。ですが、私たちが現状に満足しているのかと言えば、そうではありません。私たちは競争の厳しさを嫌というほど知っています」
「非常に良いスタートを切れましたが、これからいくつも難しい局面にぶつかることは覚悟しています。このような難局は不可避ですが、私たちは立ち向かっていきます。上位勢が示したパフォーマンスは桁外れで、シャシーとパワーユニットは激しい開発競争が起きるでしょう。ですが、このような競争こそ私たちが愛してやまないものです」
08

モータースポーツを進化させるパートナーシップ

レッドブルとフォードのパートナーシップはF1 2026シーズンに留まるものではない。
レッドブル・モータースポーツとフォードはダカール・ラリーやタイムトライアルなどの様々な方向へ進出していく予定で、そこにはパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムを制したフォードSuperVan 4.2WRCMスポーツ・プーマ・ハイブリッドRally1などのマシン開発や、ル・マン24時間NASCARなどのレース活動が含まれる。
また、レッドブル・フォード・アカデミーも新たに設立された。このアカデミーはF1アカデミーのクロエ・チェンバースをサポートしつつ、彼女にIMSAマスタング・チャレンジでスキルを試すチャンスも提供している。
「フォードは非常にエキサイティングな新章を迎えています」とフォードのジム・ファーリーCEOは語っている。「過去20年に渡り、レッドブルはF1シーンに革新をもたらしてきましたが、その背景には他とは異なるアプローチを取っていくという彼らの強い意志がありました。そしてこの意志はレッドブルとフォードのパートナーシップとレッドブル・フォード・アカデミーにも持ち込まれています」
▶︎RedBull.comでは世界から発信される記事を毎週更新中! トップページからチェック!